I love N.Y.
ニューヨークという街は、どうも好きになれない。
より正確に言えば、マンハッタン島――世界に名だたる大都市だが――俺はそこが、大嫌いだった。
特に、クリスマスから新年にかけての時期は最悪だ。周辺の州はもちろん、全米から大勢の人々が全長十数キロ程度の小島に殺到する。その人口密度は、もはや殺人的だ。そんな所に行くくらいなら、真冬の五大湖に飛び込んだ方がマシである。
――そう信じて疑わない俺は、現在、年末のマンハッタン島を歩いていた。
カレンダーの日付は十二月二五日。クリスマス当日である。当然、マンハッタンの街は人で溢れ返っており、歩くのもままならない状態だ。
俺がここに来ているのは、もちろん、自分の意思ではない。とある理由により、行かざるを得ない状況に追い込まれたわけなのだが……やはり、気は乗らない。自然と、足を動かすスピードも遅くなる。
交差点に達した所で、俺は歩道の脇に寄って息を整える。実の所、俺がこの街を嫌うのは人混みが苦手だからだ。今日も、あまりの混み具合に何度か吐き気を覚えている。酔い止めを忘れたのが運の尽きだった。
人の流れから目指す方向の信号が青になった事を知り、俺は俯かせていた顔を上げる。そのまま足を踏み出そうとした時、ふと目につくものがあった。
四車線ある車道の外側。歩道に近いレーンの車が、信号が変わったにも関わらず動かない。先頭のタクシーが流れを止めているのだ。
タクシーは、お馴染みのイエローキャブではない。いわゆる「もぐり」というやつだ。よく見ると、運転手がウィンドウを開けて、道端の人に声をかけていた。
話しかけられているのは、東洋系の少女だった。十四、五歳といったところだろうか。明らかに場慣れしていない様子で、お上りさんである事が丸分かりだ。恐らく、運転手もそれを知って声をかけたに違いない。
「まずいな……」
その光景を見た俺は、思わず呟く。
ニューヨーク市公認のタクシー、通称「イエローキャブ」は、運転手の管理が徹底しているため、不祥事が起こる事は滅多にない。市民からの信用も厚く、移動時の便利な足として活躍している。
それに対し、ジプシー――非公認のタクシーの評価は真逆だ。意図的な遠回りは日常茶飯事。料金の吊り上げも平気で行い、場合によっては全く違う場所に連れて行かれる事もある。その乗客が少女だった場合――あまり、考えたくない事態も起こり得る。
無論、非公認のタクシー全てがそうであるとは限らない。しかし、用心するに越した事はないのも事実だ。俺は信号を素早く渡ると、少女の傍に駆け寄った。
「そこにいたのか!」
「えっ?」
少女が驚いた様子で振り返り、俺を見る。無理もない。見知らぬ相手がいきなり親しげに声をかけてきたのだから。
「まったく、急にいなくなったと思えば……。探したんだぞ?」
「えっと、あの……」
困惑気味の少女が何かを言う前に、俺は彼女の肩を抱いて車から遠ざける。
「すみませんね、運転手さん。俺の連れが迷惑をかけました」
爽やかな笑みを残し、足早にその場を立ち去る。二、三本、通りを渡ってから、俺はようやく足を止めた。
「ふう……救出成功、っと。大丈夫だったか?」
肩に回した手を離しつつ、少女に話しかける。少女は僅かに赤らめた顔を隠すようにして軽く頭を下げた。
「その……ありがとうございます。助けて頂いて」
「気にしなくていいさ。君、マンハッタンは初めてなんだろ?」
「どうして、それを?」
心の底から驚いた表情をする彼女に、俺は苦笑を漏らす。
「君の様子を見れば、誰だって分かるさ。少しでもこの街を知っている奴なら、ジプシーに捕まったりはしないからな」
「ジプシー……?」
「さっきのタクシーだよ。イエローキャブじゃない、もぐりの奴らをそう呼ぶんだ」
俺の説明を聞いた少女は、先ほどの事を思い出しているのか、通りに目をやりながら言った。
「信号を待っていたら、いきなり声をかけられたんです。行きたい所があるなら乗っていかないか、と。断ったんですけど、しつこくて……困っていた所を、あなたに助けてもらいました」
「ジプシーには気をつけた方がいい。法外な値段をふっかけられる事もしばしばだからね。親しげに話しかけてきても、無視するのが一番だ」
「はい。でも、どうやって見分ければ……」
「そんなの簡単さ」
俺は少女にも分かるように、通りを走る車の一台を指さした。
「あの黄色い車が見えるかい? あれがイエローキャブだ。キャブのドライバーはニューヨーク市公認だから、問題が起こる事はほとんどない。逆に言うと、それ以外のタクシーは乗ったらダメだ」
「分かりました」
頷いた少女は「あの……」と、窺うような目で俺を見た。
「教えてもらったついでに、もう一つ聞いてもいいですか? 実は私、道に迷ってしまって……」
「もちろん。どこに行こうとしてたんだ?」
「イントレピッドです」
「イントレピッド?」
少女が返した答えに、俺は首を傾げる。これまでも嫌々ながらマンハッタンを訪れた事はあるが、そんな場所は聞いた事がなかった。
「聞いた事ないな……。どんな建物なんだ?」
「建物、じゃないんですけど……海軍の軍艦を改造した博物館です。場所は確か――」
少女は肩に下げたポシェットからパンフレットと思われる縦長の紙を取り出し、所在地を読み上げた。
「十二番街(12th Avenue)の、四六丁目(West 46th Street)です」
「ふむ……」
呟きつつ、俺は街角の標識に目を向ける。現在地は、九番街の三十丁目――ちょうど、中央郵便局がある辺りだ。歩いて行けない距離ではないが、また道に迷ったり、怪しい奴に絡まれる可能性も考えると、良い方法ではない。
「それなら、キャブを使った方が早いな。ヘイ、タクシー!!」
大声を上げて手を振り、キャブを呼ぶ。十秒と経たずに、手持ち無沙汰な様子で流していた一台が俺達の前に止まった。
「この子を十二番街、四六丁目まで。金はこれで足りるよな」
財布から取り出した紙幣を数枚、運転手に手渡す。彼が頷くのを確認してから、俺は歩道に立つ少女を促した。
「ほら、乗って」
「でも……」
「お金のことは気にしなくて大丈夫。さあ、乗った乗った」
躊躇う少女の背中を押して、キャブの後部座席に乗り込ませる。一応、何かあった場合は運転手の登録番号を控えて苦情を述べるように言っておく。
「それじゃ、気をつけてな。良い一日を」
ドアを閉じると同時に、キャブが発進する。黄色い車体は車の群に呑まれ、すぐに見えなくなった。
「……寒いな」
ビル風が吹き、俺は首元のマフラーを巻き直す。
コンクリートで覆われた無機質な街は、冬の寒さを助長する。やっぱりこの街は嫌いだ。その思いを新たにしながら、俺は雑踏の中に身を紛らせた。
翌日。俺は再び、マンハッタンの街を訪れていた。
俺がいるのは、イントレピッド博物館――昨日の少女が言っていた場所だ。
ひどく嫌っているはずの街へ、なぜ自分から足を運んだのか、俺にも分からない。ただ、何となく彼女の口にした場所が気になったのだ。
博物館は、一見すると分からない、しかし、話を聞いていれば一目でそれと分かる形をしていた。
キャブを降りて最初に博物館の姿を目にした時、俺は驚くと同時に呆れ返った。なぜなら、本当に船が博物館になっていたからだ。
博物館……というよりも巨大な船は、舳先を陸に向けて停泊している。灰色の船体は二階建てビルほどの高さがあり、さながら鋼鉄の城といった風情である。
桟橋にある券売所で入館料を払って館内へ入ると、俺はまたしても圧倒された。
船内は、兵器の陳列場だった。船の中を全長に渡ってくり貫いた空間に、模型や飛行機が所狭しと並べられている。俺にはそれらがどんな意味を持つか全く分からないが、きっとこの船に関係がある品々なのだろう。
券売所で貰ったパンフレットによると、イントレピッドというのはこの船の名前らしい。太平洋戦争の最中から活躍していたというから、かなり年季が入った船のようだ。
順路に従い、ガラスケースに飾られた模型を眺めた俺は、次に一機の飛行機の前に立った。
それは、濃い青色をしたプロペラ機だった。見るからに頑丈そうな図太い胴体を持ち、両手を挙げるようにして大きな翼を折り畳んでいる。装備品だろうか、胴体の下には、後部にスクリューのついた細長い鉄製の棒が台車に載せられて展示されていた。
「凄いな……」
青色の機体を見上げ、俺は感嘆の息をこぼす。本物の迫力というやつだろうか、何がどう凄いかは分からないが、とにかく凄いと感じた。
説明板には、機体の名前と簡単な説明が書かれている。だが、専門用語ばかりで俺はそれが何を意味するのか、皆目見当がつかなかった。
「うーん……?」
意味不明の説明板を前に、俺は首を捻る。そのまま首が一回転するのではと思った時、不意に背中から声が聞こえた。
「その機体はアベンジャー雷撃機といって、魚雷で敵の船を攻撃する飛行機ですよ」
「え?」
唐突に声をかけられ、俺は反射的に振り返る。そして、そこに立つ相手を見て声を上げた。
「君は!」
「また会いましたね」
そこにいたのは、黒い長髪を流した東洋系の少女。昨日、俺が助けた相手だった。
「昨日は、どうもありがとうございました。えっと……」
続きを言おうとして、少女が口ごもる。そこでようやく、俺はお互いにまだ名乗っていない事に気がついた。
「サミュエルだ。サミュエル・コープランド」
「よろしくお願いします、サミュエルさん。私は、吉谷那智です」
「ナチだって!?」
「あ、えっと。そうじゃなくて」
忌まわしい鉤十字を連想して身構える俺に、少女は慌てて説明する。
「那智っていうのは、山の名前なんです。日本の山の名前。これが写真です」
そう言って、彼女は携帯電話の画面を見せる。
映っているのは、鮮やかな紅葉に彩られた山の写真だった。山中には、落差三百フィートはあろうかという大きな滝が流れ、色づく木々と絶妙なコントラストを演出していた。
「綺麗だ……」
思わず、感嘆の息が漏れる。それと同時に、俺は自分の勘違いをとても恥ずかしく感じた。
「悪い。早とちりして……」
「いえ。気にしないで下さい。確かに、発音は同じですからね」
謝る俺に、少女――那智は、微笑しながら首を横に振った。
「私の祖父が、日本海軍の軍人だったんです。私は初孫だったから、嬉しかったんでしょうね。孫の名前に、自分が昔乗っていた艦の名前をつけてほしいと言ったそうです」
「ちょっと待ってくれ。那智っていうのは、山の名前なんだろ? それが戦艦の名前って、どういう事だ?」
「日本の軍艦は、地名を名前につけるものが多いんです。『那智』は重巡洋艦という種類の軍艦で、この種類の艦には山の名前をつける規則があります。だから、私の名前は軍艦の名前であると同時に、山の名前でもあるわけです」
「何だか、ややこしいな……」
「そうですね。でも私は、祖父がくれたこの名前をとても気に入っています」
「ああ。俺も、いい名前だと思う」
真摯な声音で言う那智に、俺も思ったままを口にする。それは純粋な感想に過ぎなかったが、那智が照れた様子で頬を赤らめたため、こっちまで気恥ずかしくなってしまった。
そのまま暫し、互いにきまりの悪い時間が流れる。それを振り払うように、那智が明るい声を出した。
「それよりも、せっかくまた会えたんです。何か、お礼をさせて下さい」
「お礼?」
「はい」
「そう言われてもな……別に、大した事はしてないし、気持ちだけで十分さ」
「でも……」
那智は納得できない様子で口ごもる。何かお礼をしないと、気が済まないようだった。
「それなら、この船を案内してくれないか? さっきの説明を聞く限り、君はこういうのに詳しそうだから」
「それで良いんですか?」
意外そうな表情で、那智が聞く。
「ガイドなら、音声案内が貸し出されていますよ? 有料ですけど、何なら、私がお金を払って……」
「いいんだよ。俺は、君に案内して欲しいんだ」
彼女の言葉を遮るようにして言うと、那智はようやく承知した様子を見せた。
「分かりました。サミュエルさんが、それで良いのなら……」
「よろしく頼むぜ。まずは、この飛行機の事から教えてくれないか?」
「いいですよ。さっきも言いましたが、この飛行機はアベンジャーという名前で――」
那智のガイドを受けながら、俺は艦内を見て回る。お爺さんが海軍にいたからか、那智は軍事に関して豊富な知識を持っていた。加えて、彼女の説明は要点が簡潔に纏められており、素人の俺にも分かりやすい内容だった。
「そういえば、那智は、日本からニューヨークに来たんだよな。観光か?」
狭い通路を縫うように歩きつつ、前を行く那智に尋ねる。彼女は軽く後ろを振り返ってその問いに答える。
「いいえ。父が海外転勤する事になって、家族でこっちに引っ越して来たんです。学校の編入手続も、もう済ませてあります」
「へぇ……。どこの中学校に通うんだ?」
「えっ?」
俺の言葉を聞いた那智が、不意に足を止める。つられて立ち止まった俺に、那智は怪訝そうな顔を向けた。
「サミュエルさん……今、中学校って言いましたか?」
「ああ……」
那智の問いに対し、俺はやや当惑しながら答える。俺としては何気なくした質問だったから、彼女がなぜこんな反応を返すのか、理由が分からなかった。
だがその疑問は、次の瞬間、彼女が口にした言葉によって氷解した。
「……私、高校生です」
「なっ……!?」
那智の発言に、俺は驚愕の色を浮かべる。
俺は昨日、最初に彼女を目にした時、その年齢を十四、五歳と見積もっていた。だから、彼女が高校生だなんて、夢にも思わなかった。
「失礼だけど、年齢は……?」
「十七歳です」
十七……俺と同い年か。それを、中学生と見間違えるなんて……大失態だ。
何とも気まずい空気の中、俺は「ごめん」と那智に謝った。
「そうか……那智も高校生だったのか……」
自分の失態を呪いながら、俺は呻くように呟く。すると、那智が小さな叫び声を上げた。
「サミュエルさんも……高校生なんですか?」
「ああ。高校二年生。那智と同じ年齢さ」
なぜだか目を丸くしている那智に、俺は首肯を返す。今度は、那智が驚く番だった。
「えっ!」と、那智は先ほどの俺にも劣らぬ驚きを見せ、それから申し訳なさそうに頭を下げた。
「……すみません。サミュエルさんの事、もっと年上だと思ってました。二十歳くらいだと……」
「ハハハ……」
彼女の言葉に、俺は苦笑する。実際は同い年なのに、こうも見事に互いの年齢を読み違えるとは……。歳を間違われた事に対するショックが無いわけではないが、こうなったら、もはや笑うしかない。
「まあ、今回はお互い様って事で。な?」
那智の肩を叩いて言うと、彼女も苦笑を浮かべて「そうですね」と頷いた。
「……しかし、同級生に丁寧な話し方をされるのは落ち着かないな。なぁ、那智。同い年なわけだし、もっとくだけた感じにしてみないか? 呼び方もサムでいい」
「賛成です。私も、これだと少しよそよそしい感じがすると思ってたので……」
俺の提案に賛同した那智は、にっこりと笑って右手を差し出した。
「それじゃあ、改めてよろしくね! サム」
「あ、ああ……」
屈託のない笑顔に一瞬目を奪われたのを悟られぬよう、平静を装って握手を交わす。那智は俺の心中には気づかなかったようで、再び俺を先導して歩き始めた。
座り心地の良さそうな椅子が並ぶ搭乗員待機室や、艦首の錨甲板を経て、俺達は飛行甲板に上がる。瞬間、明るい日差しに目が眩み――やがて、摩天楼の森を背景にして、大量のヘリコプターやジェット戦闘機が居並ぶ光景が現れた。
「わあぁっ!!」
初め、眩しげに目を細めた那智は、明るさに慣れた途端に歓声を上げた。
「凄い! F-4に、Mig-21、AV-8と……あ、F-14もいる!」
顔をあちこちに向けながら、那智は興奮した様子で機体の名前を並べ立てる。例えるならば、スイーツ好きの女の子が、ケーキ屋のショーウィンドウを眺めているようだ。
「昨日も来てたんじゃなかったのか?」
「実は、昨日は艦内を見るだけで時間を使っちゃって……だから、甲板の展示を見るのは今日が初めて」
苦笑気味に問う俺に、那智は恥ずかしげに頭を掻く。
「それにしても、やっぱりニューヨークって凄いね。高いビルがこんなにたくさんあるなんて」
「……俺は、あまり好きじゃないんだけどな」
「そうなの?」
溜息混じりの呟きに、那智は不思議そうに首を傾げる。
「それなら、昨日はどうして街に?」
「ああ、それは……」
俺は、昨日自分が街に行かざるを得なくなった理由を思い出し、苦い顔を作る。
「……姉貴に買い物を頼まれたんだ。チェルシー・マーケットって知ってるか? あそこに、『セサミ・ストリート』のキャラクターのカップケーキを売ってる店があるんだ。それを、全種類買って来いって言われたのさ」
「お姉さんのために買い物かぁ。優しいんだね」
「そんなんじゃない」
素直に感心した様子を見せる那智に、俺は首を横に振る。
「姉貴は日本の格闘技……確か、ジュードーとか言ったな……それが得意で、それを使って俺をよく脅すんだ。言う事を聞かないと投げ飛ばす、ってな。昨日も、それで行かされただけだ」
「そ、そうなんだ……」
浮かべた笑いを引き攣らせる那智は、ふと時計を見て「あっ!」と声を上げた。
「ごめん。私、そろそろ行かないと」
「何か用事でもあるのか?」
「荷物の整理が、まだ終わってないの。私も手伝わないといけなくて……」
那智は申し訳なさそうに言い、それから俺を窺うように見上げて問いかけた。
「良かったら、また明日案内の続きをするけど……サムは明日、時間ある?」
「えっ?」
思わぬ提案に、俺は少しばかり動揺する。
「いや、そこまで気を遣ってもらわなくても……」
「大丈夫。明日は一日中、予定が空いてるから。……あっ。でも、もし迷惑だったら今の話は忘れて」
正直、これ以上年末のマンハッタンを訪れたくはない。かと言って、彼女の好意を無碍にする事もできない。暫し逡巡した後、俺は提案を受け入れる事にした。
「そうだな……それなら、お言葉に甘えて、明日も案内してもらおうか」
俺が同意を表明すると、那智はどこかほっとしたような、嬉しそうな顔をして「うん!」と頷いた。
「そしたら、明日のお昼にまたここに来て。あそこの艦橋の下で待ってるから」
「ああ。分かった」
右舷艦首寄りに建つ艦橋を指した那智は、そのまま立ち去りかけて――こちらを振り返り、大きく手を振った。
「また明日、サム!」
屈託のない笑顔を残し、那智は「出口」の看板を掲げた階段を下りる。その背中を見送りながら、俺は溜息混じりに苦笑した。
「……結局、明日もまた来ることになっちまったな」
俺はこの街が嫌いだ。本当なら、明日もこの街を訪れるなんて冗談じゃないが、不思議と悪い気はしない。
まあ、それも今日だけの事だろう。明日が終われば、このような気の迷いを起こす事もなくなるはずだ。そんな事を考えながら、俺は呪わしい雑踏を縫って家路に就くべく、博物館をあとにした。
結果から言うと、俺の予想は見事に外れた。
一日限りと思った気の迷いが終わる事はなく、それどこか、一層悪化の体を見せていた。
あの日以来、俺のマンハッタン行きは半ば日課となっていた。クリスマスの当日――嫌々ながら足を運んだ街の中で一人の少女と出会ってから、俺の日常は変化した。
大勢の人で混み合う街へ毎日足を運ぶなど、以前の俺から見れば血迷ったとしか思えない行動だ。だが、最近の俺はそれを進んで行い、自分でもそれを楽しんでいた。
「おはよう、サム」
辿り着いた先――空母イントレピッドの艦上で、長い黒髪の少女が俺を迎えた。
「おはよう、那智。今日も元気そうだな」
「もちろん!」
AV-8を熱心に眺めていた少女――那智は、俺の言葉に笑顔で頷いた。
彼女が、俺の日常に変化をもたらした相手。俺がここに来ようと思う理由だ。
今日の日付は十二月三十日。大晦日の、前日である。
助けてもらったお礼をする――その事によって繋がれていた俺と那智の関係は、本来ならば、それを果たした三日前に消滅しているはずだった。しかし、両者を繋ぐ直接の接点が消えた後も、俺達は毎日欠かさず顔を合わせていた。どちらが言い出したわけでもない。ただ自然と、気づけばそのような流れになっていた。
「ハリアーか……。確かこれって、滑走路がいらないんだよな?」
「うん。ハリアーはV/STOL機だから、滑走しないで離着陸ができるの。その分、燃料の消費量は増えちゃうけどね」
甲板に展示されている機体を見ながら、俺と那智は言葉を交わす。親しげに会話する俺達の様子は、傍目にはデートをしているように映るだろう。
だが、当事者である俺達にそのような意識は存在しない。俺達は互い告白もしていないし、そういう素振りも見せてない。言うなれば、仲の良い友達といったところだ。
一方で、彼女と一緒にいて心地良く感じるのも事実だった。那智と話している時間は楽しいし、彼女の隣にいると何だか落ち着く。それは、偽らざる本心だった。
ここ数日間そうしているように、俺達は館内を回りながらあれこれと話をする。同じ展示を何日も見続けていると飽きそうなものだが、不思議とそのような事はない。むしろ、見るたびに新しい発見があって面白いくらいだ。俺はこれまで博物館なんて退屈な場所でしかないと考えていたが、今はそんな事は露ほども思わなかった。
それもきっと、那智のおかげだろう。彼女のおかげで、俺は新しい世界を知る事ができた。恥ずかしくて口にはしないものの、俺はそんな彼女に深く感謝していた。
そうこうしているうちに時間が過ぎ、博物館は閉館時刻を迎えた。アナウンスに急かされて艦を降りた俺達は、ハドソン川沿いを家路に就いた。
マンハッタンに限らず、冬の日暮れは早い。まだ六時にもなっていないが、見上げる空は藍色に染まり、気の早い星々が早速瞬きを始めていた。
「ううっ、寒い……」
隣を歩く那智が、コートの襟を閉め直しながら言う。
「家を出る時はまだ暖かかったのに。こんなに冷えるなんて、思わなかったよ……」
首元から冷気が入り込むのか、那智はコートの襟を握った手を離さない。その様子を見かねた俺は、自分のマフラーをほどいて彼女に差し出した。
「ほら。これ使えって」
「えっ、でも……」
「いいから。ちょっと立ち止まれ」
遠慮しようとする那智を制し、俺は彼女の首にマフラーをかける。手早くマフラーを巻いた俺は顔を上げ……その様子を見守っていた那智と、至近距離で目を合わせた。
「……っ!」
目の前にある那智の黒い瞳を見た瞬間、俺の心臓は大きく脈打った。俺は今更ながらに女の子と顔を寄せ合っている事に気づいて固まり……数秒後、那智の声を聞いて我に返った。
「サム……?」
「あ、あぁ……よし、これで大丈夫だ」
ややぎこちない動作で顔を離した俺は、誤魔化すように問いかけた。
「どうだ? 少しは暖かくなったか?」
「うん……」
頷いた那智は、寒さのためか赤くなった頬を隠すようにして、マフラーに顔を埋めた。
「とても、温かい……」
目を細めて言う那智の表情は本当に気持ち良さそうで、見ているこっちまで心が温かくなりそうだ。そんな彼女の様子を微笑ましい気持ちで見つめながら、俺は内心で自分の動揺を悟られなかった事にほっとしていた。
マフラーのかけ換えを終えた俺達は、止めていた足を再び動かし始める。ヘッドライトの明かりが道路に光の奔流を作る中、隣を歩く那智が不意に口を開いた。
「……ねぇ、サム」
言って、那智は言葉を詰まらす。訝しげな視線を向ける俺の前で、那智は踏ん切りがつかない様子で逡巡し……それから、一語一語、探るような調子で言葉を発した。
「……月が……綺麗、だね……」
「月……?」
その言葉を聞いた俺は、空を見上げて眉を寄せた。
「何言ってるんだ? ここからじゃ、月はビルに隠れて見えないぞ?」
そう。この時間帯、まだ月は東の低い位置にある。ハドソン川沿い……つまりマンハッタン島の西岸からでは、月は高層ビル群に遮られて見えないはずだった。
「あっ……、そうだよね。私、ビルの明かりを月と間違えたみたい。あはは……」
力無く笑いながら、那智は苦しい言い訳を返す。不可解な言動に俺が首を傾げていると、ぽつりと那智が言った。
「……やっぱり、英語じゃ通じないよね……」
「ん?」
呟くように紡がれた言葉は、しかし、日本語だったために俺には聞き取る事ができなかった。
「今、何か言ったか?」
「……ううん。何でもない」
首を振った那智は、信号を渡った先にある地下鉄の入口を指さした。
「私はあそこから地下鉄に乗るね。また来年、サム。よいお年を!」
「ああ、那智もな」
那智とは地下鉄の路線が違うため、ここでお別れとなる。大晦日は互いに家族と過ごす予定だから、年内に互いの顔を見るのはこれで最後だ。
信号が変わり、那智が横断歩道を渡り始める。その様子を横目に見ながら、俺もまた自分が乗るべき地下鉄の駅に向かって歩き出した。
「お帰り~」
家に帰った俺を最初に迎えたのは、姉貴の声だった。本人の姿は見えず、ダイニングの方から声だけが聞こえてくる。
「……父さんと母さんは?」
帰宅の挨拶をする代わりに、俺は姉貴に尋ねる。
「今日も仕事。遅くなるって、さっきメールが来てたわよ。届いてない?」
そう言われてポケットから携帯電話を取り出すと、確かに、両親からのメールが受信されていた。
「夕飯は適当にって事だったから、ピザ頼んでおいたわ。あんたの分もあるから、早く来て食べちゃいなさい」
姉貴の言葉に従い、俺は手を洗ってダイニングに入る。部屋では、一人の女性がリスのように頬を膨らませてピザを頬張っていた。
こいつが俺の姉貴。武力を背景にしばしば俺を脅して顎で使う、おっかない姉である。
「おかふぇりなふぁい」
「口に物入れたまま話すなよ……」
文句を言いつつも、俺は「ただいま」と挨拶を返す。そのまま姉貴の対面に座り、彼女が食べていない、もう一枚のピザに手をつけた。
「今日もマンハッタン? 好きねぇ」
「まあな」
姉貴の問いに、俺は適当な相槌を返す。口の中のピザをコーラで流し込んだ姉貴は、そんな俺の顔をまじまじと見つめた。
「しっかし、人間ってのは分からないものねぇ。あんなに人混みを嫌ってたあんたが、今じゃ毎日マンハッタン通い。一体、何があったのかしら?」
「……別にいいだろ、そんな事」
その件について姉貴に詮索されたくない俺は、ぶっきらぼうな返事で間接的にその意思を伝える。しかし、姉貴はそれに気づいた風もなく、それどころか、ニヤリと意地悪そうに笑うと、片手の小指を立てて言った。
「はは~ん……なるほど、これね」
「んなっ……!?」
「やっぱり! 図星なんだ」
俺の反応を見た姉貴は「ビンゴ!」と指を鳴らし、心底面白そうな表情を浮かべた。
「ねえねえ、相手はどんなコ? 顔は? 身長は? スタイルは?」
「そんなんじゃない」
俺は否定の言葉を口にするが、このままでは姉貴は納得しないだろう。俺は仕方なく、那智のことを姉貴に話した。
「……ふぅん。日本人の女の子ね」
事の経緯を聞いた姉貴は、そう言って間を置いた。
姉貴は日本に興味があり、大学では日本文学を専攻している。俺を脅すのに使う柔道の技も、元はと言えば日本への関心から習い始めたものだ。それだけに、日本人と聞いて興味を持ったのかも知れない。
「日本の文化は、アメリカとは色々と違って興味深いのよねぇ。何かを伝えようとする時も、直接言わないで遠回しに表現する所とか。日本人の女の子が相手なら、あんたもそういう経験してるんじゃない?」
「いや、別にそういう事は……」
そう言いかけて、俺は帰り道での会話を思い出す。
「そういえば。今日の帰りに、那智が変な事を言ってた」
「変な事?」
「まだ月も見えない時間なのに、急に『月が綺麗だね』なんて言い出したんだ。その言葉を言う時も変な様子だったし、本当に何だったんだろうな」
会話の流れの中で何の気なしに言った言葉。そこに特別な意図はなく、思い出したから口にしたに過ぎない。しかし、それを聞いた姉貴は、俺が驚くような真剣さでその言葉に食いついた。
「月が綺麗……その子は、本当にそう言ったのね。どうやっても、月が見えるはずのない時間に」
「あ、ああ。俺達がいたのはマンハッタンの西岸だから、あの時間だと月はまだビルに隠れたままだ」
姉貴の予想外の反応に戸惑いつつ、俺は彼女の問いに答える。俺の返答を聞いた姉貴は、数秒間、顎に手を当てて考えた後に言った。
「あんた。多分それ、違うよ」
「違うって、何が?」
俺の質問には答えず、姉貴は逆に俺に尋ねかける。
「……ねぇ。あんた、夏目漱石って日本人の作家、知ってる?」
日本人の作家。もちろん、俺は知るわけがない。首を横に振ると、姉貴は彼女には珍しい神妙な口調で語りだした。
「今から百年くらい前の人なんだけどね、日本ではかなり有名な作家よ。彼は英語の翻訳も手掛けたけれど、それが秀逸なの。ある時、彼は生徒に『I love you.』を日本語に翻訳せよ、という問題を出したわ。彼が用意した答えは、どんなものだったと思う?」
「……英語を日本語に直訳したんじゃないのか? 『I love you.』なんて、それ以外に言いようが無いだろ」
「違うのよね、それが。漱石は、『I love you.』を『月が綺麗ですね』って訳したのよ」
「……っ!!」
姉貴の言葉を聞いた瞬間、俺の背筋を電流が駆け抜けた。月が綺麗ですね――その言葉を、俺は今日聞いたばかりだった。
「漢詩では、月はとてもロマンチックなものらしいの。昔から中国と文化的な交流があった日本にも、その考えが根付いていてるのよ。もちろん、百年前の訳が現代も使われているかは分からないけれど」
姉貴の言う事はもっともだ。百年前の話でも、生徒達は漱石の用意した答えに辿り着けなかったというから、彼の訳が必ずしも日本人の共通認識であったわけではない。しかし、だとしたら、那智はどうしてあの場であんな事を言ったのだろうか。漱石という作家のエピソードは、出来過ぎなほどうまくその疑問を埋めていた。
俺はピザを口に運ぼうとしていた手を止めると、食べかけのピザを皿に置いて席を立った。
「ちょっと、サム! ピザは!?」
「今日はもういい! 姉貴が食って!」
背中から聞こえる姉の声に叫び返しながら、俺はダイニングを飛び出して階段を上がる。その勢いのまま、俺は二階にある自室のドアを開けた。
静かな部屋の中で、俺は携帯を操作する。大きく息を吸ってから、俺は画面に表示された番号に電話をかけた。
次の日、俺は再びマンハッタンの街中に立っていた。
場所は十二番街の四六丁目――お馴染みのイントレピッドの前だ。
腕時計を見ると、時刻は午後五時過ぎ。博物館は既に閉館し、艦上に人影は無い。静まり返った空母を背にして通りを眺めていると、小走りに近寄る足音が耳に入った。
「サム!」
この一週間で随分と聞き慣れた声。振り向いた先には、肩を軽く上下させながら俺を見る那智の姿があった。
「悪いな、那智。無理に呼び出したりして」
「ううん。気にしないで」
首を振った那智は、「でも、昨日サムが電話をかけてきた時は、少しびっくりしちゃった」とはにかんだ。
昨夜、夕食を途中で切り上げた俺は那智に電話をした。そして、彼女が出るや否や、明日、タイムズスクエアで開催されるカウントダウンイベントへ一緒に行こうと言ったのだ。
元々、大晦日は俺も那智も家族と共に過ごす予定でいた。それを覆す俺の誘いに、当然ながら那智は初め困惑をあらわにしたが、結果的に、戸惑いを見せながらも首を縦に振ってくれた。
少々強引になってしまった感はあるが、仕方がない。俺には、どうしても今日彼女を誘いたい理由があった。
「さて。それじゃ行くか」
「うん」
那智を連れ、俺は会場であるタイムズスクエアへと向かう。イントレピッドとタイムズスクエアは丁目が近いため、俺達はすぐに目的地に到着した。
イベントが始まる六時まで、まだ三十分ほどあったが、道路は既に大勢の観客で埋め尽くされていた。
タイムズスクエアは普段から人通りが激しいが、現在の状況はその比ではない。十万、百万……もしかしたら、それ以上いるかも知れなかった。
前後左右、どこを向いても見えるのは人の頭ばかり。当然、自由な身動きなどできず、人の波に呑まれないようにするだけで精一杯だ。
「きゃっ!?」
「那智、こっちだ」
人波に押されて明後日の方向へ進みかける那智を、俺は急いで引き戻す。
「大丈夫か?」
「なんとか……」
俺の問いに、那智は安堵の息をつきながら頷く。流れに従って前に進む中、俺は彼女の手を取った。
「サム……?」
「こうすれば、はぐれる心配は無いだろ?」
驚いた様子で見上げる那智に、俺は微笑を浮かべて答える。それを聞いた那智は、頬に微かな朱を灯し、こくりと頷いた。
「……うん」
ぎゅ、と那智が俺の手を握り返す。手の平から伝わる温かさが愛おしくて、俺は思わず彼女と繋ぐ手に力を込めた。
午後六時。ついにカウントダウンイベントが始まった。
華々しい開催宣言と共に開始したイベントは、最初から大きな盛り上がりを見せた。
有名バンドの演奏や、エンターテイナー達の目を見張るようなパフォーマンス。特設ステージの上で繰り広げられる催しの一つ一つに、集まった人々は歓声を上げ、拍手を送る。その度に会場の熱気は増し、それが更なる興奮を誘う。俺と那智も例外ではなく、時間の経過と共に感情を高ぶらせていった。
そして、十一時五十九分。カウントダウンイベントは、クライマックスの時を迎えた。
タイムズスクエアの中で最も有名なビルであるワン・タイムズスクエア。様々な企業の広告が掲げられるそのビルの最上部に位置する「TOSHIBAビジョン」に、直径四メートル弱のクリスタルボールが降下する「ボールドロップ」がイベントの大トリだ。
七色に光るボールは一分をかけて降下し、それが「TOSHIBAビジョン」の上に到達した瞬間、花火と共に年が明ける。ここにいる観客達は皆、この一分間のために集まったと言っても過言ではない。
「新年まで、残り一分!」
その言葉を合図に、広告上部のポールに取り付けられたボールが降下を開始する。人々のカウントダウンの声が響く中、俺は隣に立つ那智に向き直った。
「那智」
喧噪の中でも聞こえるよう、俺はいつもより大きな声で言う。呼ばれた那智は、振り向いて俺を見た。
「なに、サム?」
五十、四九……俺達の周りでは、カウントダウンが続く。皆の視線がボールに集まる中、俺達だけが互いに視線を交わしている。
「那智。昨日俺に言った言葉、覚えてるか? これから、俺はそれに答える」
「昨日……?」
俺の言葉に、那智は首を傾げる。そんな彼女に向けて、俺はその言葉を口にした。
「『月が綺麗ですね』……」
「……っ!!」
俺の口から発せられた台詞に、那智は目を見開く。俺は彼女のその仕草を可愛らしく思いながら、言葉を続けた。
「昨日の言葉の意味、分かったよ。一日遅れだけど、もし間に合うなら返事をさせてほしい」
柔らかい声音で言うと、那智は緊張した面持ちで頷いた。
十、九……カウントダウンは、ラストスパートに入っている。その声さえも掻き消すほどに高鳴る鼓動の中、俺は那智の耳元に口を寄せ――単刀直入に、自らの想いを伝えた。
その瞬間、ボールが完全に降下し、歓声と共に盛大な花火が打ち上げられた。俺の声は半ばそれに消される形になってしまったが、しかし……顔を離した俺は、那智が満面の笑みを浮かべて頷く姿を、しっかりとこの眼で捉えた。
耳元でとはいえ、普段だったら俺の声は周囲の人間にも聞こえ、俺は顔から火を出していただろう。だが、新年の喧噪は他人の耳にそれが伝わるのを防ぎ、彼女だけに俺の言葉が届くようにしてくれた。
俺はこの街が嫌いだ。だけど、こういう事があるんなら、この街の騒々しさも、新年の浮かれ具合も、悪くはないと思った。
今回は「なろう」で初めての艦魂小説以外の作品投稿です。
あらすじにある通り、本作品は私が大学の部誌に寄稿した作品の加筆修正版です。断る必要があるほど多くの人目に触れているわけではありませんが、一応念のため。
普段の艦魂作品なら細かな解説をしていくところですが、今回は解説事項がないので、作品誕生の裏話でも少し。
作品の構想を思いついたのは二年前の冬。部誌の新年号に寄稿する作品のアイデアを考えていた時に「新年……New Year……略したらN.Y.……これに複数の意味を持たせて作品を作ろう!」と風呂場で思いついたのが始まりです。
というわけで、本作の題名には三つの意味が込められています。そこも合わせて楽しんで頂けると幸いです。
この作品を書いたのは二年前のことなので、作中の街並みは現在と少し異なります。例えば、現在「イントレピッド」の飛行甲板後部にはスペースシャトルの「エンタープライズ」の展示館が設置されていますが、作中では存在しないなどです。
部誌に寄稿した時もいろいろと突っ込みをもらった作品なので、修正したとはいえまだ突っ込みどころは残っているかもしれません。
感想・意見などありましたら、どうぞお寄せ下さい。
次回の投稿がいつになるかは明言できませんが、投稿の予定が立ったら活動報告でまたお知らせします。次こそは、艦魂作品の新作をお届けできれば……と思います。
最後になりましたが、ここまで読んで下さった読者の皆さんに心からの感謝を。また次の作品でお会いできることを願っています。