出会いの章3
遂に一人目の主人公アンド一つ目の大罪登場
マリーは困惑した。
こんな美しい風景にもそうだが、何よりも木に縛られている少年にだ。
黒い髪が逆立っており、顔はかなり整っている様に思える
しかし、閉じているそのツリ目であろう、その目からは、恐怖に似た何かを感じてしまう。
「え~と大丈夫でしょうか?」
聞こえるかも判らないが、マリーはその眠っているその少年へと近づいていく
勿論眠っている少年は答えない。
それでもマリーは少年へと近ずく、まるで光に吸い寄せられる虫の様に近づいていくが
「う~ん、誰だてめぇ?」
「えっ!」
すると今まで、身じろぎ一つしなかった少年だが、マリーが少年に目と目が見つめ合える距離にまで近づいた所で、少年が急に目を開けたのだ。
「えっ、は、はい、私は、マリー・ロッドと申します。そ、その、どうして貴方様はそんな事になっているのですか?」
「お!これはこれは、ご丁寧にどうも。これは・・・・・・まぁ、昔いろいろあってな」
怯むマリーとは対照的に、その少年は気楽に答えるが、その状態の事を聞かれた時には、少し答えに詰まる
その事からマリーは言いたくない事なんであろうと思えた。
「それはそうと、どうやって此処に来れたんだ?普通は来れないはずなんだけどよぉ?」
「え?私はあそこの穴から来ましたが?」
そう言って、自分が落ちてきた穴を指さそうとするが
「あれ?ない!」
「ねぇなぁ~」
そうないのだ。マリーが落ちてきたはずの穴が最初から無かった様に消えているのだ。
「どうして?」
「お前さん、ハーフか何かい?」
「え?私は純血の人間族ですが?それがどうかしましたか?」
「いや、なんでもねぇよ。」
(ありえねぇ、ここに来れること自体異常な事だが、俺が起きる事自体もっとありえないはずなんだが)
少年は、自分の起きている状況を考えている
しかし、何の力も持たないであろう少女が自分を目覚めさしたとは、まったく考えにくい。そんな思考の渦の中にいた少年にマリーの声が響く
「あ、あの、すいませんが私はそろそろここを、去ろうと思います。
此処に私がいると、貴方様に迷惑がかかると思えるので、すいませんが失礼します」
「おい、ちょっとま・・」
少年がマリーを止めようとしたその時
ドガァァァァと、とてつもない轟音とともに壁が破壊されそこから
「ようやく、見つけましたぞ。マリー様」
「・・・・・ゴエル」
「ここの結界のせいで、発見が遅れましたがもう逃げ場はありませんぞ
さぁ、吾輩と共に王国へお帰りください」
「いやです」
「そんな事は言わずに・・・・・・うん?そこにいる少年は?」
「か、彼は関係ありません」
二人のやり取りがおこなっているさなか、ゴエルが木に縛られている少年に目を向ける。マリーは彼に被害が及ばないように庇う体制に入る。
そんなやり取りがおこなわれている中、その少年は
(やべぇなぁ、あいつの魔力は、聖騎士レベルだ。どうすっかなぁ~)
とかなり気楽な考えをしていた。
そんな中でも、二人のやり取りは続く
「ふむ、まぁ然したる脅威は感じない。無視して、問題ないでしょう。
それよりも、これ以上ダダをこねると言うならば、吾輩もそろそろ本腰を入れさせてもらいますぞ」
「っ!」
そう言うと、ゴエルからは圧倒的な威圧感が放たれる。
そのあまりの圧力に、意識を失いそうとなり、今まで気丈に振る舞っていた精神が折られそうになる。
そんな絶望の中
「おい、マリーは捕まりたくねぇのかぁ?」
そんな場違いな迄な、気楽な声がマリーの声が届く
「えっ?は、はい。そうなんですが・・」
「ふぅ~ん」
「うん?なんだ少年。吾輩の邪魔をするのかするならば、容赦はせんぞ。
いや、そもそもそんな状態では邪魔も何も出来はせんか」
(まぁ、そうなんだけどよぉ。この嬢ちゃんが気に入ったしぃなぁ~。おいおいと渡すのはいやだなぁ~)
そんな考えが少年の頭の中に過るさなか
「ゴエル!この少年は関係ございません。だから手を出さないでください」
「ほ~、ならばこの少年の身の安全を保障する代わりに吾輩と来てもらいましょうか?」
「な!!」
「どういたしますかな?」
「・・・・・わかりました」
「それはよろしい、賢明な判断でございます」
「おいおい、いいのかよ。お前捕まりたくねぇ~んだろ?それを俺なんかの為によぉ」
少年の意見はもっともだ。
マリーは捕まりたくないがために、逃げてきたのだ。
それをついさっきに出会った少年の為に捨てるなんてあまりにも理解不明だ。
少なくとも、少年には理解できない。赤の他人の為に自分の欲を捨てた事に
「良いんです。私の為に誰かを犠牲にしたくないんです」
「っっ!!」
マリーはそう言いながら、誰もが見入る様な美しい笑みを浮かべる。
周りの風景と相まってとても幻想的だ。
そしてその笑みを、見た少年は深い衝撃にかられる。
それは、マリーが美しかったわけではなく、似ていたのだ、自分が知る人物にあまりにも似ていたのだ。
だからこそ
(ますます、渡したくないねぇなぁ~。あいつに似すぎてやがる)
だが今の少年には、彼女を助けるすべがない
しかしそれは彼のポリシーにあまりにも反す
そんな中、彼の頭の中にある言葉が蘇る
(この結界は決して壊れない。けど、もしあなたが目覚める事があるならばそれは血の目覚めのせい。だからもし貴方が望むなら結界は解く事が出来るわ。そうならない事を望むしそれは、貴方が自分の生き方をやめる位の可能性なの)
その言葉を思い出し少年は、賭けに出ることにした
(良いぜぇ賭けてやるよ)
「おい、マリー今すぐ俺を縛っている木にお前の血をたらせ」
「え?」
「いいから早くしろ。助かりてぇんだろうが!!」
「あ、はい!」
その少年の余りにも鬼気迫る物言いに、マリーは従ってしまう
しかしマリーの血が木かかるのとほぼ同じタイミングで
「妙なマネはさせんぞ!!」
バゴォォォォォンという轟音をたて少年を殴っているゴエルがいた
「い、いやぁーーーーーーーー」
「ふん、妙な事をして、マリー様に害が出ては困るなのでな」
少年が死んだと思い絶叫するマリー
殴った体制のまま少年に毒を吐くゴエル
しかしすぐに、違和感を感じ出すゴエル
(む?なぜ腕が動かん)
そう、少年を殴ったはずの腕が全く動かないのだ、まるで何かとてつもない力に捕らえられている様に
しかし、その疑問はすぐに解消されることになる
「よう、わりぃけどマリーは渡さねぇよ。もう俺の所有物だ」
「な、何ぃ!?」
「よ、良かったぁ~」
驚愕するゴエル
安堵の涙を流すマリー
全く異なる感情でありながらも、二人が思った事は一つ
(なぜ生きている)
(生きていてくれた)
ゴエルの腕をつかみながら、完全に木から分離した状態でその少年が立っているのだから
「そういえばまだだったな」
「なに?」
「おい、おっさんあんたの名は?」
「吾輩はシルン王国の聖騎士ゴエル・ダリーである!!」
腕をつかまれた状態ながらも、少年の問いに答えるあたり自分が聖騎士であることに、本当に誇りを持っているんだろ
少なくとも、マリーにはそう思える意思がその言葉にはあった
それを聞いていた少年が再び言葉を紡ぐ
「そうかい、じゃあこっちも名のらねぇとなぁ、マリーにもまだ教えてねぇし」
そう言いながら少年はつかんでいたゴエル腕を離す
少年は、その赤い燃えるような瞳でゴエルをマリーを見ながら
誰もが畏怖し聞き入る様な声でこう名乗った
「俺の名は<七つの大罪>が一つ<強欲の罪>のジルフォンス!!」
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