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「いや、具体的な方法を聞いたのだけれど……」
「隣の部屋の女が入れてくれたぞ。」
隣の部屋……僕の部屋は二階の角部屋で201号室だから、隣の部屋は202号室になる。そしてそこに住んでいる女の人はこのアパートの大家さんだ。
すこし内気だが、気遣いのできるとてもいい子だ。
「あぁあの子か。その子にぼくの部屋に入れてくれと頼んだのかい?」
「いや、頼んではいないぞ。お前の部屋の扉の前に座っていたら入れてくれたのだ。あの女は良い奴だな。秋刀魚までくれたぞ。」
僕のペットだと思ったのだろうか。だけどこのアパートはペットを飼うのは禁止だったはずだが、それでも入れてくれたのだろうか。
「そうなんだ。あとで謝りに行かなきゃ。」
「ほう、あの子のところへ行くのか。なら私も連れて行け。」
「秋刀魚がお目当て?」
「当たり前だ。」
ふてぶてしく座りながらその翡翠色の目をこちらに向ける。
たぶんあの子のことは、餌をくれる彼にはとっていい人。そんな風に思っていそうだ。