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冒險の相棒 ~世界最弱最強の魔物~  作者: ゅぇ
粘液騎乗師vs鷲馬騎乗師
6/16

冒險六話 勝敗の差は最初の一撃

 【目潰しドラン】…ドラン=ガルダードの二つ名である。

ただこれは彼のまぶしいハゲ頭を指すわけではない…相棒パートナーであるヒポグリフのカムールが得意とする奇襲から付けられた名である。


 カムールは他のヒポグリフに比べて体が大きすぎる…本来ヒポグリフは小柄な体を生かして敵に忍び寄り奇襲をかける事が得意とされる魔物モンスターなのだが、カムールは巨体すぎるゆえに羽音も大きく見つかりやすい…奇襲がまったく出来なかったのである。

カムールは前の騎乗師ライダーに捨てられて殺処分されようとしていた…


 そんなカムールをあえてドランは相棒パートナーとして選ぶ。

ドランには確信があった…どんなヒポグリフよりも強くなる潜在能力を秘めていると信じて疑わなかったのだ。

体が大きいおかげでスタミナやパワーは他のヒポグリフの比ではない、おかげでどのヒポグリフよりも素早く空に昇る事ができた。

そして、体が大きいおかげでどんなヒポグリフよりもはるかに体が頑丈だった。


 ドランは考える…羽音が聞こえない程に高く空に舞い上がり、太陽の光に隠れて頭上から奇襲すればどうなるだろうか?

普通のヒポグリフなら激突の衝撃に耐えれない…だがカムールは違った!

空高く舞い上がり太陽を背に敵の目をくらました隙に、ありえない程のスピードで急直下して地面を吹き飛ばす威力をもった一撃を放つ…彗星輝撃コメットストライク

カムールは役立たずなヒポグリフではない…最強のヒポグリフだと証明してみせたのだ。


 本来ならば魔物モンスターランクがDであるヒポグリフだが、ドランとカムールは次々と功績をあげてギルドランクをAランクまで上り詰めた。

まさに王道な実力派の鷲馬騎乗師ヒポグリフライダーなのだ!


 そんな相手に、ルール付きとはいえ勝利をおさめたティアとラムネは有望であり…未知数でもある…



「すげぇーぞ!」

「お嬢さーん!俺と結婚してくれーっ!」

「ドランも凄かったぞ!」

「あぁ、カムールよくやったな!」

「スライム最高ーっ!」

「こっち向いてくれーっ!」

「好きだぁーっ!」


 様々な声援が飛ぶ中、勝負を終えたドランとカムールにラムネを右肩に乗せたティアが歩いてくる。


「ったく…うるさい奴らだな。」


「賑やかでいいんじゃないですか?」


「そういってもらえると助かる…しかし見事だった。負けたはずなのにすがすがしさを感じるよ。」

(悔しくないと言えば嘘になるがな…)


「いえ、カムールちゃんが右の前足を痛めてなければ最後の一撃で負けていたのは私達だったかもしれませんから…」


「…!?」


 ドランは立ち止まりカムールの右足を触る。


「ギャッ!」


(腫れている…戦う前か?違うな…)

「…最初の一撃が弾かれた時に反動が残ってしまっていたんだな。俺も鷲馬騎乗師ヒポグリフライダーとしてまだまだって事か…よく分かったな。」


「本当に凄かったです。空高くまで昇ったかと思うと一瞬にして消えて…次の瞬間には太陽の光に隠れて頭上だなんて驚きました!前足の怪我がなければ最後の瞬間も減速せずにきてたはずです…そうなっていたら…」

(きっと手加減だってされてたはず…素直には喜べないよね。)


「ティアっ!」


「はいっ!」


「自信を持て!俺は全力でぶつかった!勝負は結果がすべて…お前は一人前の騎乗師ライダーだ。」

(度胸、冷静さ、そして怪我までも見抜く眼力があるか…完敗だな。)


「ありがとうございます!!」


 ティアはドランにお礼を言いながら抱き着くと、顔がみるみる赤くなる。



「あーっ!ドランさんいいですねぇーっ!」

(顔が真っ赤になっちゃって…こりゃゆでダコですか。)


 いつのまにかポールが傍まで来ていた。


「ポールさん!」


「ティアちゃんおめでとうございます。そこの怖ーいオジサンに虐められてないか心配で見に来ましたよ。」


「大丈夫です。騎乗師ライダーとして認めてもらえました。」


(さすがはドランさんだな。)

「ドランさんがてっきりごねると思いましたが…」


「バカやろう!俺もあそこまでされたら認めるしかないだろ?なんせ、いまだに分からない事が二つもあるからな。」

(攻撃寸前にティアを見失った…消えたように見えた…そして気が付かないうちに袋まで奪われていた…)


「んーっ、確かに…彗星輝撃コメットストライクを受けた瞬間に一瞬でティアちゃんが消えたように見えましたが…魔法か何か使ったんですか?」

(さて、教えてもらえるかどうか…)


 ティアは右肩に乗ったラムネを手に乗せ、足元に連れていった。


足強化ジャンピング!」


 声と共にティアが一瞬で消えてしまう…正確には目で認識出来ないスピードで飛び上がっていた。


ビョンッ


 少し離れた場所にティアが着地した。

グルグルとコイル状のバネのようになったラムネがティアの両足先を覆っているようだ。


「…こうやって避けました。ギリギリでしたけど。」


 ポールもドランも驚きを隠せずにいた。


「ポール、目で追えたか?」

「ドランさんでも無理なら僕も無理ですよ…」

「ティア、それはどうやったんだ?」


「えっと…弾性エネルギーを蓄積して復元するとかなんちゃらって、実は私のお兄ちゃんが教えてくれた技なんですよ。すっごく早く動きたい時に使うんです。」

(チキューとかキカイとか分けわからない事ばっかり言ってたっけ…)


「つまりティアちゃんはその技を使えば瞬発力が高まるって考えたらいいのかな?」


「はい!」


「ならその動きで俺から袋を取ったのか?」


「違います…出ておいで。」


 ティアの声を聞くなりドランが持っていた袋から小さなスライムが現れた。


「最初のカムールちゃんの攻撃の時に、ラムネを増殖分裂マイトーシスしてカムールちゃんにチビラムネをくっつけておきました。」


「「チビラムネっ!?」」


 チビラムネはポヨポヨンっと飛び跳ねた。

それとは別に、ティアの足元にはプヨプヨとラムネが揺れている。


「後は隙をみて袋を持ってきてもらうだけだったんです。」


「「…。」」


(あれ?…卑怯すぎて勝負のやりなおしとか!?)


「「ぷっ、くっくっく…あーっはっはっはっ!!」」


 ポールもドランも笑うしかなかった。

勝負がはじまった最初の一撃…その数秒間で勝敗は決まっていたのである。

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