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冒險の相棒 ~世界最弱最強の魔物~  作者: ゅぇ
粘液騎乗師vs鷲馬騎乗師
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冒險五話 ラムネとカムールの攻防

 【スライム】…粘液性のゼリーのような半透明な体をしていて、性別をもたずに細胞分裂で増殖できる魔物モンスターだ。

粘液性なのでいくら潰しても切り裂いても元に戻ってしまうのだが、体の中にある核を破壊されると形が保てず崩れ死んでしまう。

そして、体が半透明な為に核も丸見えなわけでアッサリ倒されてしまう最弱な魔物モンスターだとも言える。


 スライムは適応力が異常に高い為に、森林でも暑い火山でも寒い雪山でも毒の沼地でも砂漠でもどこにでも存在する事ができる為に、世界各地で見る事が出来る。

そして、なんでも溶解して吸収する為に食べ物にだって困らない。

だが、環境や食べ物により体の体質や性質が変化しやすく、森で草を吸収しているスライムは体が緑に変化していて火に弱いグリーンスライムと呼ばれ…

火山で火を吸収しているスライムは体が赤に変化していて水に弱いレッドスライムと呼ばれ…

世界各地の環境や食べ物により変化してしまう為に、その種類は何千とあると言われていてる。

まさに最も種類が多い魔物モンスターだとも言える。


 一度変化したスライムは体質や性質が固定されるので、他の環境に移したりすると死んでしまうもろさもあるのだが…

ごくまれに、変異種と呼ばれる固体が存在していて…その能力は詳しく知られていない…



「…あのスライム…変異種…凄い…」


 ぼそぼそとつぶやくように独り言を言っているのは、客席に交じって勝負を見学している小さな子供だった。

白いマントですっぽり体を羽織っていて、輝くような銀髪が目元をおおい隠している。


「坊や、今…変異種って言ったかい?」


 ポールは小さな子供の独り言を聞き逃さなかった。

詳しく聞こうとしゃがみ込むと、銀髪の隙間からこぼれ出た子供の瞳に驚いてしまう…


(瞳が赤い…魔族?嫌、まさか…)

「坊やは一人で来てるのかな?」


「…。」


「さっきあのスライムが凄いって言ってたよね?」


「…なんでもない…」


 小さな子供はそれ以上は何も語らなかった。


(多分この子の言う通りですね。ティアちゃんが連れているスライムは変異種。今までいろんな種類のスライムを見てきましたが…あのスライムはどのスライムとも違う…何が違うかは説明できませんが違う事だけは分かります!)


「おいポール!ドランが開始の合図をくれってさ!」

「あっ、はい!」


 ポールは立ち上がり客席の一番前まで出ると観衆を静める。

一瞬だけ赤い瞳の子供を目で探したがいなくなったようだ。


「では二人とも構えてください!」

(ドランさん、油断しないように願ってますよ。)


 ドランはカムールに飛び乗り、ティアはラムネに持ち上げられている姿を確認した。


「それでは勝負…開始っ!!」


 ポーンの合図とほぼ同時にドランとカムールが動いた。

下半身が馬でもあるヒポグリフは後ろ足で地面を蹴って移動する瞬発力がある…一瞬にしてティアとラムネに詰め寄ると、先制攻撃を放った。


(この一撃で終わりだ!)

「カムール!切り裂けっ!!」


 カムールの前足である鋭い鷲爪が巨体とは思えぬスピードで降り下ろされる。


攻撃吸収クッションボディっ!」


ブヨヨーンッ


 それはドランにとってはじめて聞く音だった…

カムールの前足はラムネを切り裂く事が出来ずに押し戻された音だからだ。

いつもの冷静なドランなら追撃する所だろう…だが、驚いていた。


(なんだアレは?アレがカムールの攻撃を止めた…嫌、弾いたのか!?)


ドランの目線の先には、ラムネが大きなコンニャクのような壁になりティアを守っている姿が映っていた。


(…威力が凄い、何度もは受け切れない!)

「ラムネっ!網変形ネットモード!」


 ティアの声に反応してラムネが細く網状に変化して、カムールとドランを覆いかぶさろうとする。


「ギュイッ!」

バサバサッ


 カムールは素早く下がり一瞬にして上空高く舞い上がる。


「そんな簡単には捕まらないか…」

(でも、この勝負頂きました…)


「すまない、カムール…よくやった。」

「ギュルルッ…」


(もしカムールが避けてなければ俺は…捕まっていた?あのスライムは一体なんなんだ?)


「ギュイッ!」

「あぁ、近づくのは危険だな…突風刃ガストカッター!」


ビュンッビュンッ


 カムールが大きく羽ばたくと、風がぶつかり合って刃となりラムネに降り注ぐ。


(そうくると思いました!)

魔法吸収スポンジボディ!」


ブヨンッブヨンッ


 ティアを守るように半円形のドーム状に変化したラムネは何事もなかったように揺れている。

だが周りの土はかなりの量が吹き飛ばされ、相当の威力があった事が分かる。


(こいつは…面白い!面白すぎるぞっ!間違いなく強い!本物だ!)

「カムール…全力でしかけるぞっ!」

「ギュィイーッ!」


ブァサッブァサッ


 カムールは羽ばたきを大きく、より強く早めながら凄いスピードで空に昇っていく。

ティアはその光景を見て、ドランとカムールが何かをしかけてくる事に気が付いたようだ。


「ラムネ…本気の一撃がくるよ!準備はいい?」


 ラムネはキュルンッと揺れる。


解除リリース!」


 ティアの声に反応してラムネの体はどんどんと縮んでゆき、肩に乗れる程だった元の大きさに戻ってしまう。

空高く昇りながらもティアの様子をうかがっていたドランは驚きを隠せなかった。


(バカな!?防御するのをやめたのか!?自殺行為だろ…嫌、きっと何か手があるのか…)

「いくぞカムール…彗星輝撃コメットストライク!!」


 空高く昇り続けたカムールが体をひるがえすと、翼を小さくたたみ横に回転しながら急降下してくる。


(まぶしい!?ドランさんの頭が…嫌、太陽を背にしてるんだ!)


 光に包まれ風をまといながら信じられないスピードでティアとラムネにぶつかろうとしている。


(さぁ、うけてみろ!これが俺とカムールの最強の一撃だ…何っ!?)


 誰もがぶつかると思っていた。

見ていた客席の人達は、間違いなくティアとラムネは瀕死になるであろうと確信していた…下手すれば死んでしまうのではないかと心配し同情する声もあがっている状況だった…だが、そうはならなかった。

ぶつかる寸前に一瞬にしてティアとラムネは消えてしまったのだ。


「カムーールッ!!!」

「ギュゥイィーッ!!!」


ドゴォォオンッ!!!


 クレーターのように地面はえぐれ土煙が巻き起こる…その衝撃の凄さはえぐれた地面の深さが物語っているだろう。

中心にいるのはカムールとドランだけである。


「勝負あり!勝者、ティア=フレアハートっ!!」


 ポールの声が響いた。

一瞬の沈黙…そして大きな歓声。

客席が一気に盛り上がり、各々が叫び声をあげた。


「「「ワァァアァアァアーッ!!!」」」


 盛り上がりとはうらはらに状況をつかめないドランがいる。


(…俺は…負けた?)


 ドランがゆっくり振り返ると、離れた所でドランから奪った袋を高らかにあげているティアがいた。

そしていつもの満面の笑顔をドランに向ける。


「…認めてくれますか?」


 ドランはカムールから飛び降りてティアの前に立った。


「お嬢ちゃ…嫌、ティア=フレアハート…ようこそ【プロミネンス支部】騎乗ギルドへ!」


「…はいっ!」

(やったよ!ジルおばぁちゃん!)


 ティアの笑顔がまたもや、客席で見ていた多くの男性の心をつかんだのは言うまでもないだろう。

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