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冒險の相棒 ~世界最弱最強の魔物~  作者: ゅぇ
粘液騎乗師vs恐狼騎乗師
12/16

冒險十ニ話 突如現れた恐狼の正体

 【ダイアウルフ】…紫がかった灰色の体毛を持つ、体長二メートル程の狼でDランクの魔物モンスターだ。

顎や牙が発達はしていて噛み付きは脅威的だが、脚が短めで俊敏な動きは得意としていない。

とはいえ、普通の人間にとっては十分過ぎる程の俊敏さだとも言えるだろう。


 群れでの行動を基本としており、ボスを中心とした連係攻撃は見事なモノで…単体ではDランク扱いだが、群れでの遭遇はBランクになると言われている。


 ダイアウルフは咆哮によっていくつかの魔法も使える魔物モンスターだ。

特に、群れで共鳴させて使う咆哮は範囲も威力も脅威的なので、一番気をつけなくてはいけないだろう…



 だがそんな知識のないティアはただの狼だと思い判断を間違っていた。

結果としてラムネは、弾け飛びバラバラの水たまりのような状態になってしまう。


「ラムネ…」

魔法吸収スポンジボディを使っていれば…ごめんねラムネ…)


「「「グルルルルッ…」」」


 ティア達の周りにドンドンとダイアウルフ達が集まり囲いはじめる。

ゼロを庇うようにして強く抱きしめるティア。


「大丈夫!怪我はしないからね!」


「…ダイアウルフ…」


「え?ダイアウルフ…」

(ジルおばぁちゃんが言ってた!魔法を使うから気をつけろって…私のバカ!)


「ガウッ!」


 一匹の合図と共に三匹が同時に飛びかかってきた。


「ふせてっ!」


ヴンッ、ドゴドゴッ!


「「キャインッ!」」


 ゼロをふせさせたティアは、回し蹴りで前側と右側から飛びかかってきた二匹のダイアウルフの下顎を蹴り飛ばした。

蹴り飛ばされた二匹は顔を上下に振りながら座り込んでしまう。

ティアはすぐに後ろに振り向き構えるが、後ろ側のダイアウルフはティアの喉元にめがけて牙をむく。


「ガルルッガウッガウッ…」

「くっ!?」

(痛っ…)


 ティアはとっさにダイアウルフの口に手を突っ込み、上下の牙をおさえて喉元を噛まれないように防いでいた。

手元は鋭い牙があたっている為に血がにじんでいる。


「このっ!」


ブゥンッ!


 のけ反るように倒れこみ、その反動を利用して巴投げのようにダイアウルフを投げ飛ばす。

だが、投げ飛ばされたダイアウルフは空中でひる返り、簡単に受け身をとって地面に着地した。

座り込んだ二匹以外のダイアウルフが、隙をうかがうようにティア達の周りをまわりながら、少しづつ距離をせばめてくる。


「「「グルルルルッ…」」」


(…飛びかかってこない?…やっぱり狙いは…)


 しゃがみ込んでいたゼロが、ジャラシーの森にはえている一本の木を指さした。


「…ティア…あそこにいる…」


(…!?…8くるってそういう意味か…)

「ラムネっ!粘着属性変化ホイホイチェンジっ!」


 水たまりのように飛び散っていたラムネの体が薄いピンク色に変化した。

その瞬間に、まわっていたダイアウルフ達の動きが止まってしまう。


「ガウッガウッ!」

「グルルッ!」

「キュゥーン…」


 ダイアウルフ達は暴れ動き回っているがうまく動けなくなっていた…よく見ると、体中ピンクまみれである。

とりもちのように変化したラムネが、ダイアウフル達の足や体や口に絡みつきネバネバして動きがとれなくしていたのだ。

ティアが立ち上がると、いつの間にか元の色や形をしたラムネが傍によりそっている。


「さて、様子見も終わったことだし…そろそろ隠れている人に出てきてもらわないとね?鞭変形ウィップモード!」


 ラムネがティアの手元まで体を細く伸ばしてゆく。


(ゼロ君は8くるって言った。ダイアウルフが7匹しかいない以上は…もう1匹…嫌、指示を出してる奴がいるはず!)

「…出てこないなら…力づくでいく事になるけどいいの?」


サァァーッ…


「「「クゥゥーンッ…」」」


 風の音と、口までも封じられたダイアウルフ達の悲しげな声が聞こえるだけだった。


「健気な子達だね…私達・・を置いて逃げろって言ってる…逃げ出すの?」


 ゼロの指さしていた木の陰から背の高い、目に傷のある男が現れた。


「逃げたりせぇへんわ…ようわいの場所が分かったなぁ、そっちのちっこい奴やろ?」

(気配を殺すのには自信はあってんけどな…)


「…ワーウルフ…」


「…ワーウルフ?本当だ犬耳可愛い!」


「アホか!狼耳や!わいは恐狼騎乗師ダイアウルフライダークロロ=ダイア様や!」


 クロロは紫の髪の毛からはえている狼耳をピンっと立て、尻尾も立てて胸を張っていた。


(どうみたって盗賊シーフなんだけど…)

「…そんな人が何の目的でこんな事をしたの?返答次第ではギルドに連行します。」


 ゼロを背中で庇いながら、ティアは鞭状になったラムネを構えて戦闘の姿勢をとる。

それを見たクロロはすぐにその場で胡坐をかいて座り込み、両手を上げた。


「降参や。お嬢ちゃんの回し蹴りは見事やったわー…下顎を攻撃して脳にゆさぶりをかけたんやろ?あの一瞬で確実に二匹の動きをとめるなんて技が出来る奴なんてそうそうおらんで…」

(おそらくこのお嬢ちゃんはまだ本気をだしてへん…)


「それをいうなら、そっちだって本気を出せばいつでも殺せたでしょ?最初の三匹で気を引き付けてから、控えていた四匹が同時に襲えば簡単だもんね。でもしなかった…」

(それどころか最初の三匹だって本気じゃなかった…)


(なんや手加減しとったんも見抜かれとったんか…)

「正直に話すわ…強い冒険者に勝負を挑んで打ち勝つ事がわいらの趣味なんやけど…」


 ティアはクロロの話しを聞くつもりはなかった…なぜなら、彼が言っている事は全部嘘だと確信をもっていたからだ。


「私の首につけてるネックレスを奪うのが目的でしょ?最初から傷つけるつもりはなく、奪った時点で逃げる去る予定だったのに…私達が強くて予想外な結果になっちゃったってところかな。」

(敵意は感じるのに殺気は感じなかったわけだよね…)


「なっ!?…なんのことかさっぱりわからんわーっ。」

(やばいな…)


「自分の事をこんな風には言いたくないけど…スライムを連れた女の子を強い冒険者だなんて思う人いるわけないでしょ!全部じゃないけど彼女達・・・の話が聞こえたんだから嘘つかないで!」


彼女達・・・か…ダイアーウルフの性別を見抜く奴なんかそうそうおらへんで…)

「…まさかとは思うたけど…お嬢ちゃんは狼語がわかるんやな?」


「…なんとなくだけどね。」

(そう感じるだけだから…)


 クロロはゆっくりと立ち上がり、ティアはそれを見て警戒を強める。


(さぁ、どうでる!?)


「くっくっくっ…こら凄いわ!ほんまにわいの完敗や…惚れてもうたわ。」

(わいのもんにしたる!)


 警戒していたはずのティアはあっけにとられていた。

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