岩と絞め技
「ハル!そっちに1匹行ったぞ!」
「了解…。シエロ…後ろ…。」
「おっと。サンキュー、ハル。」
「シエロ…。そろそろきつい…。」
「よし、とりあえず逃げるぞ!」
どうして俺たちがこんな状況になっているかというと、それは2時間前に遡る。
◇ ◇ ◇
「おっ。あそこに2体いるが、奴らにするか?」
「ちょっと待って……。…ダメ。奴らの近くに…3体ほどいる…。」
「そうか。じゃあ、あっちの2匹はどうだ?」
「たぶん大丈夫…。索敵に引っかからない…」
「よし。じゃあ、あの2匹で行こう」
そういえば、さっき思いついたんだが、石を錬金で岩に変えてから投げたらどうなるんだろうか。
試してみたい。ちょっとやってみよう。
まず石を10個取り出して錬金。俺の右手が光って、手の上に岩が現れる。あ、岩って言っても石よりも一回りでかく、石よりも硬いだけで、重さもあまり変わらず手のひらサイズである。
錬金で出来た岩を振りかぶり、おもいっきり右のリザードマンに向かって投げる。
「おりゃっ!」
ヒュン。ドゴッ!
「シャーーーー!」「シャシャーーーーー!」
お、どうやら右に居る奴に当たった岩がもう一匹のリザードマンに当たったようだ。
うん。ダメージは少しふえたがあまり変わらないな。しかし、石では跳ね返ったりしなかったが、どうやら岩だと少しだけ跳ね返るようである。
これは新発見だ。メモメモ。
「シエロ…。来る…。」
おっと。そんなことをしていたらどうやらもう来るようだ。
「じゃあ右の奴が俺で左の奴がハルな。お互い倒したらすぐフォローに回ろう。」
「………。」
ハルは頷いてくれた。俺の担当する奴の方がHPが減っているっていうのをちゃんと理解してるんだろうか…。なんか騙したみたいだな。
まあ、俺の方がステータスが低いし少しくらいは勘弁していただきたい。
「よし。行くぞ!」
まずは、俺が戦いやすいように2匹を2つに分ける。右の奴をカウンター気味の回し蹴りでそのまま右斜め前の方向に蹴飛ばす。
どうやらハルも似たように、左の方にぶっとばしていた。あいつも結構分かってんな。
リザードマンがすぐに起きあがって斬りかかってくるので。しゃがんでかいひし、そのまま元に戻る勢いを利用してあごにアッパーカットをしかける。
リザードマンは俺の下からの攻撃をもろにくらい、気絶状態になっていた。
気絶状態とは、HPバーの下にあるもう一本のバー、通称スタミナゲージを最大まで減らして腹か、あごに攻撃すると起こる状態異常のようなモノである。
ちなみに、スタミナゲージは攻撃するごとにどんどん減っていくが、逆に攻撃しないと、どんどん回復していく。
今ので気絶状態になったので足払いをかけて転ばし、ジャンプ。
「うわっ!」
予想以上に高く飛んでいた。慣れないなこの感覚。
俺はジャンプした状態から。ドリルのように回転しながら、未だに気絶しながら寝そべっているリザードマンに蹴りを食らわす。
「スーーパーードーリールキーーーック!」
ドンッ!
普通じゃない音がし、リザードマンはポリゴンになっていった。
お、これはもしかしてハルより早くおわったんじゃないか。ハルは…………っと、な、何!?終わっているだと。
「終わってんなら教えてくれよ。」
「終わったとき…。決まってた…。ドリルキック…」
「最後の見られてたのかよ!恥ずかしっ!」
「大丈夫…。格好良かった…。」
「ううぅ…恥ずかしい…//////」
「ふふっ…」
ハルは少し笑っていた。そういえば、ハルが笑っているのは初めて見た気がする。
「わらうなよ。次行こうぜ、次。」
「分かった…。」
「じゃあ、最初に見つけた2匹でいいか?」
「……。」
よしハルも良いって言ってるし、奴らにしよう。
こんどは岩ではなく石をどんどんと投げていく。
奴らもこっちに気づいたようだ。
「来るぞハル!」
「OK…」
ハルがハンマーを構えたのを見て、俺は一気にステップで奴らに近づく、右の奴の懐に入り、正拳突きを放つ。吹っ飛んだのを見て左に居た奴を回し蹴りでハルの方に押し出してやる。
よし、これでいい。おれは前の奴だけに集中しよう。錬金で岩を作り出し投げる。岩はそいつの頭に当たり。どこかに飛んでゆく。
岩を投げられたことに少し腹を立てたのか、すごい勢いで斬りかかってくる。
「シャーーーーーー!」
遅いな。俺はステップでそいつの後ろに回り込み背中に張り付き首を絞める。さっき思いついたやり方だ。
リザードマンは俺を振り放そうと必死に暴れる。しかし俺も必死にしがみつき、首を絞めていく。
急に力が抜けたと思ったら、リザードマンが消滅していた。この方法だと結構簡単にたおせるな。
ドロップアイテムを拾い、ハルの方を見る。
まだやってるな。今度はおれの方が早かったみたいだな。
「ぐあっ!」
突如、後ろから何者かに攻撃を食らった。
なんでだ!?ここはノンアクティブのリザードマンしか居ないはずなのに。
そこにはリザードマンのパーティがいた。しかもそのうち1匹はHPバーが少し減っている。
「くそっ!あのときか!」
どうやら、おれが投げた石が跳ね返って当たっていたようである。
そしてハルが戦っていた奴を含め、9匹のリザードマンと戦うはめになり、最初のシーンに戻るのである。




