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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
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終章 ーUntil the...ー Part3

しかし、フィルスの表情は変わらず侮蔑の笑みで玉座からセレンを見下ろしている

「ほぉ…攻撃を仕掛けるか。交渉決裂だな。おいセルシウス!アークの市民を皆殺しにせよと伝令を出せ!」

「待て、フィルス公。それより面白い方法がある…おい、グレンの息子よ。俺と賭けをしないか?」

セルシウスはフィルスの命令を聞き流してラルクを振り返った

「俺と一騎討ちで剣を交え、貴様が勝ったら俺達は降伏しよう。しかし、貴様が負ければ貴様達に降伏してもらおう」

セルシウスは余裕の表情でどこかこの状況を楽しむかのようにラルクに持ちかけた

「セルシウス!私の命令が聞けんのかっ!?」

フィルスが怒鳴った瞬間セルシウスは抜剣し刃を彼の太い喉もとに突きつけ

フィルスはヒッと高く短い悲鳴を上げる

「貴公は俺の腕を見込んでそちら側に引き入れたのではないか?」

「ま、まぁいいだろう…だ、だからその剣を早く下ろせ…!!」

剣をゆっくりと下ろしセルシウスはラルクを伺う

「ラルク…!!」

「やめとけよシルヴィア。ラルク、ちょっと順番が違うかもしんねぇけどここまで追って来ちまったからさ、最後までやれよ」

シルヴィアを制止しながらライカはいつもの調子で言う

「大丈夫!今のラルクならいけるよっ!!」

メリッサもラルクを勇気付ける

「ラルク、私はもう止めない…勝って…!!」

いつもなら真っ先に止めようとするアルトだがこの時はラルクと皆と気持ちは同じだ

「セレン……頼む…!」

危険な賭けだ

負ければ全てが水の泡と消える

自分の命も失う

しかし、これまでの戦いに決着をつけるため

父の死と自らの決着をつけるためにも戦いたい

だから今はそのひと言だけに全ての思いを乗せた

「ラルク……」

セレンはラルクの碧の瞳を真っ直ぐ見つめてラルクの、また皆の思いを受けとった

「ルシア王国王女セレン・シルミド・ルシアの名に於いて、また貴方の依頼主として信託の剣団長ラルクに命じます……必ず、勝ちなさい…!!」

「信託の名に於いて…」

もう迷いはない、ラルクは父の形見の剣の柄に手をかけゆっくりと引き抜く

顔の前に刀身を縦にかざすと一瞬眩い輝きを放ち

それを漆黒の仇に向ける

「ルシア王国黒金騎士団隊長、神将騎黒焔のセルシウス……参る…!!」

セルシウスも同じように剣先を向ける


そして、両者の殺気が最大限まで膨れ上がった時戦いの火蓋が切って落とされた

先手を取ったのはラルクだった、一気にセルシウスの間合いに入り振りかぶった剣を振り下ろす

グレンの剣はまるで彼が力を貸してくれているかのようにラルクの手に馴染んだ

「なるほど、以前とは違うな。ならば手は抜かん!!」

ラルクの剣を弾いたセルシウスは払った剣を引き戻し脇に抱えて突きを出す

ラルクはそれをかろうじてかわしたがセルシウスの刃はラルクの脇腹を掠めて血が吹き出る

しかし、ラルクもセルシウスの剣が届かない彼の剣の柄より手前に入りセルシウスの胴体の鎧の隙間を斬りつける

「前から思ってたけどお前その剣、誰に習った?!」

ラルクは再び剣を構えながら聞く

「貴様の父親に似ているとでも言いたいのか?」

セルシウスはラルクの足を払おうと剣を横薙ぎに振るがラルクは間一髪それをバク転でかわす

だが、セルシウスはそれだけでは終わらない

直前の攻撃の勢いを利用して右回転しながらもう一閃ラルクに飛ばす

なんとかラルクはそれを剣を縦に構えて受け止めてつばぜり合いに持ち込む

「お前もしかして親父に…っ?!」

歯を食いしばってセルシウスの圧力に対抗するが

流石は神将騎、ラルクの剣を簡単に押し返し追撃にラルクの腹を斬りつける

「ウグッ…!?」

ラルクは2、3歩よろけて背中を苦痛で丸めながら後退する

腹からは抑えても抑えきれそうにないくらいの紅黒い血が流れ息が出来ずに膝をつく

「ゥ…ハァハァッ…!!」

「冥土の土産にひとつ教えてやろう…確かに貴様の言う通り俺はかつてグレンに剣術を師事し、ついにあの男を超えることが出来た」

セルシウスはゆっくりとラルクとの距離を詰めていく

やることはただひとつだ

「しかし、かつての師は利き腕を失っていた。これほど虚しいことはあるだろうか…そして、その技を受け継ぐ貴様と戦えるこの時を楽しみにしていた」

セルシウスは彼の剣が確実にラルクに届く距離で立ち止まった

「だが、それももう終わりだ…」

セルシウスは剣を振り上げた

このままセルシウスに親父の仇を討てずに負けるのか…?

自分達が守るために戦ってきた仲間を置いて…セレンとの約束も守れずに死ぬのかよ…?!

そんな自問自答がラルクの頭の中で響いていた

「ラルク!負けないで下さい!」

「一緒にセレン様を守るんだろうラルク!?」

「こんなとこで終わるなんて許さねぇぞラルクっ!!」

「そうだよ!かっこいいとこ見せてよラルク!!」

仲間達の声が聞こえた

そうだ…自分はただこのルシア王国を救うためだけに戦ってきたんじゃない

大切なものを守るため、仲間と共にまた笑える日を迎えるために戦ってきたんだ…!!

その時セルシウスの剣がラルクへと振り下ろされ始めた

「ラルクっ!!勝ってえぇぇっっ!!!」

その刹那セレンの叫びがラルクの耳に届き身体中に痺れが走ったような気がした

すかさずラルクは一気に左へと飛びこみ

自分でも信じられないくらいの速さで体勢を立て直して剣の柄を握りしめてセルシウスの右脇腹を斬り裂く

セルシウスは剣を振り下ろすことだけに集中していた為に防ぎ切れずによろめく

ラルクはその瞬間セルシウスの両足が揃って棒立ちになったのを見逃さなかった

出せる身体の力でセルシウスの懐に飛び込みセルシウスの体を一閃

「グッ…!!」

まともにラルクの剣を受けたセルシウスは膝から崩れ落ち大量の血を床に吐いた

「ハァッ…ハァッ…ッ……ハァッ…!」

ラルクは乱れる呼吸と朦朧とする意識の中で最後の一撃を出すべく剣を振り上げる

これで全て終わりだ…仇は討ったぞ親父…

そう心の中で呟きながらラルクが剣を振り下ろそうとした瞬間セレン達を見ると自分に何かをしきりに叫んでいる

何か悲痛な叫びのようだが

一体どうしたんだみんな?

構わずラルクは剣を振り下ろそうとしたが、何故だか体が動いてくれない

その代わりに視界が傾いていきラルクの眼には高く趣向の凝らされた天井が映った

加えて、手足がどんどん冷たくなってゆき背中に生温かさが広がってゆく

「ラルクっ!?」

セレン達がラルク崩れ落ちたラルクに駆け寄りラルクに向かって叫ぶ

「フッ、フハハハハ…ヒャヒャヒャヒャッ…!!」

玉座の間にはフィルスの高笑いが響き渡っていた

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