終章 ーUntil the...ー Part1
そして決戦の朝
ラルクが眼を覚ますとライカの姿は既になかった
体を寝台から起こして大きく伸びをする
体調は悪くないようだ
「親父、力を貸してくれ…」
ラルクは部屋に置いてあるグレンの剣を手に取り
マントの男から貰った剣と一緒に腰に装着する
「ただいまは全部終わらせて帰ってきてからだな」
ラルクは部屋の扉をゆっくり閉めた
「遅いぞラルク!」
外に出るとアルトの声が飛んで来た
「今日はアタシの勝ちだねっ!」
メリッサがラルクの顔を見ながら得意げな顔を浮かべる
「アルトとセレンに起こして貰ったくせによく言うぜ…」
ライカがメリッサを肘で小突く
「悪りぃなみんな、準備はいいのか?」
ラルクが全員を見渡す
「ラルクが大丈夫なら」
シルヴィアがラルクに確認する
「行きましょうラルク!」
セレンの言葉にラルクは頷いて歩き出した
ラルク達が連合軍の陣営に戻ると既にルシアの騎士もガルシア軍も黒獅子の牙も整列を終えていた
「来たか…シリウス、始めよう」
グレイドはラルク達が到着したのを確認するとシリウスに促した
シリウスは何千も居並ぶ猛者達の前に進み出た
「諸君、聞いてくれ!今、私達は国を奪われ、そして君達の家族、友、恋人の身までもが闇に心を奪われたフィルス公の手中にある王都の前にいる!君達の中には友であった者がフィルス公につき、悪に心を売ったと思う者もいるだろう。しかし、それでも今まで私達と共に戦い、生きてきた仲間だ!私は仲間を悪の道から救い出したい。私と思いを共にする者、家族や恋人、友を自らの手で守りたい者は私の剣に力を貸してくれ!共に戦おうっ!!!」
シリウスは朗々と語り彼の剣を天高くかざすとルシア、ガルシア両軍から地面が揺れる程の歓声が上がる
「ガルシアの戦士達にも声を挙げさせるとはお前のところの将もなかなかやるな?」
オルドネスは嬉しそうにグレイドを見る
「確かにこれはすごいな…」
ラルクも聞いていて鳥肌が立った
これが一流の将が仲間の士気を高めるための演説なのだ
「出陣だ!!」
シリウスを先頭にクラウディア、ゲルダが隊列の間を突き進んで行った
「こちらも始めましょう、シルヴィア」
エルシアはラルク達を振り返りシルヴィアを見る
「それでは作戦を確認します。まず、僕達は移動魔術を使ってルシア王城の地下にある隠し通路へ移動し、アークの城門を操る魔術陣を起動させて開門します。これは王族であるセレンにしか出来ませんのでお願いします」
セレンは大きく頷いた
「そして、それが成功したらフィルス公の元へ向かい、フィルス公に交渉の余地が無ければ彼を討ちますが…彼の元にセルシウスがいるという可能性も十分に考えられますね」
シルヴィアは眉間にシワを寄せる
セルシウスはラルク達が作戦を遂行する中で必ずと言っていい程大きな障害になるからだ
「大丈夫だ、俺に任せてくれ…!」
必ず父の仇を討つ
だから今日でセルシウスと対峙するのは最後だ
「分かりました、門の前で待機しているシリウス将軍は市民の救出を終え次第ルシア王城制圧の応援に向かってもらうことになっています」
そこでシルヴィアの説明は終わった
「それではお父様、エルシア…行ってきます…!」
セレンは2人にギュッと抱きついた
それは別れを惜しむものではなく必ず還ってくるという約束をするものだった
「無事で還ってきなさい、セレン」
「セレン様、どうかご無事で…!」
セレンが2人から離れるとグレイドは一冊の魔導書をセレンに手渡した
「これはアークの城門を操るための魔導書だ。さぁエルシア、始めてくれ」
グレイドに促されてエルシアはラルク達に向かって手をかざして詠唱を始めると
ラルク達の足元に魔術陣が形を成し
光に包まれて視界が一気に真っ白に染まっていった
そして、ラルク達が気付くよりも早く眼の前の景色は変わっていた
しかし、それはどこか見覚えのある景色だった
鏡のような美しい大理石に高い天井
「あれ?ここ本当に城の地下か?」
ライカが不審そうに辺りを見回す
「違う…!ここは城の地下じゃない…!!」
アルトは睨むように周りを見た
「クククッ…ようこそ我が城へ、愚かなセレン王女!!」




