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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
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第14章 ーEach own Nightー part1

救国を賭けた運命の戦いを前に出撃準備を整えるためラルク達に連合軍から1日の猶予が与えられた

その時間を使いラルク達は陣営近くにある信託の剣の傭兵団の砦に戻って来た

「なんか懐かしいな…」

陽が落ちて真っ暗になっている自分の家の中をラルクは見回す

「実際には数ヶ月しか経っていませんけどね」

シルヴィアが燭台に灯りを灯しながら言う確かに数ヶ月しか経っていないがラルク達の感覚からすると何年もかかったような気がする

それだけこの旅の内にいろいろあったということだ

「ただいまー!って感じだね」

「まぁ、俺達ここに来るの初めてだけどな」

ライカもメリッサと同様に部屋を眺めながら言う

「ねぇラルク、今晩はここに泊まっちゃダメですか?」

セレンが突然そう提案した

「でも作戦は明日だぞ?」

明日の行われる救国を賭けた作戦に遅れてしまっては全てが狂ってしまう

「今晩くらいはいいんじゃないか?明日の朝早くに本陣に戻れば」

珍しくアルトがそんなことを言う

「そうだな、そうするか!」

「やったぁ!お泊まりだぁ!!」

メリッサがはしゃぐ横でシルヴィアは早くも夕食の準備に入り始めた


そして夕食の後、皆は思い思いの夜を過ごし始めた

ラルクは砦の中をフラフラと歩き回り気がつくとグレンの部屋の前に立っていた

「ラルクか、どうしたのかしら?」

部屋の扉をノックせずに静かに開けるとアルトがグレンの机の前に立っていた

「いや、なんとなく暇でさ…アルトは何してんだ?」

「私は少し昔のことを思い出していたの…」

アルトは細い指でグレンの机をなぞる

彼女のなぞった跡には埃がなくなって跡が残っていた

「親のいなかった私をここまで育ててくれて…グレンさんは本当に私のお父さんみたいだったなって…」

「本当も何も、俺達は家族だろ?親父はこれからも俺達の親父だ」

ラルクはそう言うとアルトはフフッと小さく唇に笑みを浮かべる

「ラルクなら、家族じゃなくて恋人になってもいいわよ?」

アルトはラルクに彼女の桃色の潤んだ唇が触れるくらい顔を近づけてラルクの顎を人差し指でスッとなぞる

「な、何言ってんだよウチの姐さんは…?!」

彼女から漂う甘い香りと雰囲気に頭がボーッとなりながらもラルクは頬を紅潮させながら背ける

「フフッ…冗談!これからもお姉様の言うことはちゃんと聞きなさいね?」

「わ、分かりましたよアルトお姉様…」

アルトに妖艶な眼つきで見つめられいてもたってもいられなくなったラルクは部屋を出ていった


「よぉラルク…ん?お前顔真赤だぞ?さては…?」

ニヤニヤしながらライカはラルクを見る

「お前の想像してるのとは違うぞ…で、ライカはどうしたんだ?」

なんとか呼吸を落ち着けてライカを見る

「ヒマだったからさっきまでメリッサの奴と話してたんだよ」

「邪険にしてる割には仲良いのなお前ら…そういや、ここまで付き合わせて悪かったな、この戦いが終わったらどうするんだ?」

そう言うとライカはいつものようにヘラヘラ笑いながら

「別にいいって。お前達との旅、結構楽しかったぜ?ま、この戦いが終わったらセレンやアルトに会えなくなんのはちと寂しいけどさ」

ライカは大袈裟に肩を落とす

「野郎はどうでもいいってか?お前、メリッサがいんだろ?」

そう聞き返すとライカはいつもの楽観的な表情に少しだけ真剣さを混じらせたような表情になった

「あいつはまだまだ子供だからな〜……この先も気持ちが変わらなきゃいんだけどな…」

後半はラルクにも聞き取れないくらいの小声でライカは呟いた

「ま、この戦いが終わっても連絡ぐらい寄越せよ?俺寂しいと死んじゃうんだよ」

「わぁったよ…」

ラルクは聞き流しながらライカに背を向けてシルヴィアの部屋の前に立ち扉をノックした

「シルヴィア、入るぞ」

部屋へ入るとシルヴィアは梯子を使って本棚の手が届かない高さのところに登っていた

「ラルク、どうしました?」

シルヴィアはいつも戦う時の身軽さとは違いゆっくりと梯子を使って降りて来た

「いや、何してるかなって」

「少し本棚の整理を…ラルクも少しは魔術や錬成術の勉強を本格的にしてみては?」

シルヴィアから何冊かの小難しそうな分厚い本を差し出される

「い、いや…俺にはシルヴィアがいてくれるから大丈夫だ…」

苦笑いしながらシルヴィアに本を押し返す

「ありがとうございます、そう言っていただけて光栄です。ラルクも随分と頼れるようになれましたね、最初は実際の戦いで剣を持つ手が震えていたり、夜中に何度もうなされていたのに」

どうやら隠してもシルヴィアには全てお見通しだったようだ

確かに今でも人を斬るのは震えが走る程怖いし

自分が殺した的に追われる夢にうなされる夜も数えきれないほどあった

「シルヴィアには敵わねぇな…これからも頼りにしてるぞ!」

シルヴィアの頭を少し乱暴に撫でて部屋を出たが今回はシルヴィアはラルクの愛撫をなぜか拒まなかった

「……貴方が必要としてくれるから僕は存在出来るんです………」

シルヴィアは静かにラルクのいなくなった部屋でそう呟いた


ラルクはその後、そろそろ寝ようと部屋に戻っていると

「メリッサ、まだ寝ないのか?」

メリッサの姿を見つけた

「ん〜セレン探してるんだ」

キョロキョロしながらラルクに近寄ってくる

「俺はてっきりライカと寝たいから場所交換してくれって言いに来たのかと思ってたけどな」

一応ライカはラルクと同じ部屋で寝ることになっている

「それもいんだけどぉ〜今夜はアルトとセレンと一緒に夜更かししようかなぁって」

メリッサはまるで明日のことが頭に無いかのように楽しげに話す

「明日は朝早いんだぞ?寝坊したらおいてくぞ?メリッサいつも起きんの遅いしな」

メリッサの頭にコツンと拳を乗っける

「むぅ…ラルクも人のこと言えないじゃん」

お前よりマシだ、とラルクに言われるとメリッサは先程とはうって変わって真顔になった

「明日で全部終わりにするんだから寝坊なんかしないよ。みんな、セレンが還ってくるの待ってるもん…」

「そうだな…だったらなおさら早く寝ないとな」

ラルクはすぐ近くにある自分の部屋の扉を開けた

「でも、ちょっとだけ…」

メリッサの声が小さくそう聞こえた


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