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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
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第13章 ーAfter Rainー

雨が上がり陽が顔を雨雲の間から顔を出したと思ったら沈み始めた頃

ラルクはセレンを背負いながら歩き続けようやく山頂に辿り着いた

周辺を見ると見慣れた天幕がいくつも張られていた

どうやら山頂を目指して正解だったようだ

「ラルク!セレン様!!」

アルトが聞き慣れた声とともに2人を見つけ駆け寄って来た

「セレンなら疲れて寝てるよ、セレンと報告頼めるか?」

「本当によかった…2人が無事で…!探したんだぞ!?」

アルトは穏やかな寝息をたてるセレンをラルクから預かり眼を釣り上げるがどこかその声にも安堵を漂わせる

「おっ?帰って来たな2人共!」

少し遅れてライカ達もラルクに気づいたようだ

「よかったぁ…あの時は本当に2人共死んじゃったかと思ったよぉ!」

メリッサもアルトと同じようにその顔に笑顔とともに安堵を浮かべる

「よかったです、ラルクが無事で…それと、セレンも…」

シルヴィアは2人から眼を逸らしながら口にする

「心配かけたな。まぁ、とりあえずは生きてるぜ」

ラルクはシルヴィアの黒い頭をくしゃっと撫でる

「子供扱いはやめて下さい…それと、先程の戦いでクラウディア将軍の経路で土砂崩れが起きて、当時交戦中だった両軍に多大な被害が出たそうです」

その言葉を聞いたラルクの心臓は大きく一度脈打った

「なぁ、クラウディア将軍の部隊はどの辺りを行ってたんだ?」

少しの予感を含ませて聞いてみる

「確か、南側だと仰っていた。土砂崩れがあったというのは丁度私達がスカーレットと戦ったところだったような…」

アルトが首を傾けながら言う

「だからか…」

さしずめセルシウスは自軍の兵士の安否確認のためにラルク達の落ちた場所まで来たというところだろう

「ラルクどしたの?」

メリッサが少し心配そうにラルクの顔を下から覗き込む

「いや、何でも…そんで、謀反軍の居場所は?」

先程のセルシウスの口ぶりからするともう既に後退を始めているのかもしれない

「シリウス将軍とクラウディア将軍の部隊と交戦した後、謀反軍はガルシア王達の部隊の追撃をかわして下山に入ったようです」

シルヴィアの説明通りこの後セルシウス達は王都アークに入るつもりのようだ

「ま、俺らは急がずに行こうや、スカーレットがいなくなったって言ってもまだ油断は出来ねぇしな…」

ライカはラルクの肩をポンと叩いて背中を向けて歩いていった

心なしか皆顔に疲れが見えるような気がラルクにはした


それからさらに陽が沈み

夕食を摂ったラルクはフラフラと山から見える景色を見に行くと先客が岩の上に腰掛けていた

「ラルク殿、貴方もここからの景色を見に?」

星の輝きに似た金髪を揺らしながらクラウディアは振り返った

「俺はアンタみたいな殊勝な目的じゃないって。暇だっただけだよ」

そうですか、とクラウディアは淡い桃色の唇に笑みを浮かべた

「ま、確かにキレイだけどな…」

星空の下に彼女がいるというのもまた画になるなと思いながらそう言った

「……スカーレットが、谷に落ちたそうですね…」

クラウディアは目線を明るい星空から暗い谷底へと堕とす

「あぁ、俺とセレン諸共な」

「私は、今日一日で大切な人達をたくさん失ってしまいました…」

クラウディアの瞳はいつもの淡い水色ではなくラルクと同じ碧に染まっている

「土砂崩れでかなり死んだらしいな…」

味方が死んだというのにそんな表現しか出来ないのが心苦しかった

「えぇ、みんな一生懸命戦ってくれました…だから守ってあげたかった…スカーレットも……」

意外な言葉がラルクの耳に残った

「俺はアイツのことはよくわかんね…」

今思えばあの時スカーレットが見せた涙は偽りだったと言い切れる

なのになぜ?ラルクは彼女に対し疑問を持った

「彼女のやっていることは間違いなく正しくはないわ…でも、彼女は心に深い闇を抱えていると思うの……」

クラウディアの声は最初と比べるとずいぶん低く小さくなっていた

「深い闇、か…ま、俺もそういう奴を身近に見てるから分からなくもねぇけどさ…」

独り言のようにラルクは呟いた

クラウディアに届いたかどうかはわからない

「スカーレットの心の闇に私達がもっと早く気づいてあげていれば…」

クラウディアはラルクに語るでもなく谷底へと言葉を投げかけた

「アイツは人に心開かなそうだけどな」

スカーレットとは何度か戦っただけだが彼女の放つ冷たく刺さるような視線は言葉を交わさなくてもわかる

そういう視線には慣れているし

心を凍てつく氷の扉で閉ざしてしまった者の眼だ

「…………」

クラウディアは物思いに耽って何も発さなくなった

いつもの柔らかな表情とは裏腹に影を落としている

「……アンタと一緒に戦える奴は幸せだな……おやすみ…」

気休めにしかならないがラルクはそう言い残して静かにクラウディアから離れていった


「ラルクか、クラウディアを見かけなかったか?」

陣営の中に戻ってきたラルクは呼び止められる声のする方を振り返るとグレイドがラルクの後ろに立っていた

「ん、クラウディアならあっちの崖の方で物思いに耽ってる」

ラルクはそう説明しながら自分の来た方を指差す

「そういうことなら今は声をかけない方が良いな…」

「クラウディアに何か用事か?」

そう聞くとグレイドは小さく頷いた

「今日の戦いや、スカーレットのことで彼女が思い悩んでるかもしれんと思ってな…」

声の調子を落とす

「アンタの言う通りだよ。しかし、ルシア軍は部下想いの上官が多いんだな」

ラルクはルシア軍に混ざって戦ってまだ日が浅いが陣営の中にいて少なくとも居心地は悪くないと思っていた

「そういってもらえるのは光栄だな。ただ、それだけに今回の謀反は非常に心苦しい…」

グレイドは声を低くし眉間のシワを深くする

臣下に妻を殺され、さらには自分の国民同士でお互いに身を斬り合わなければならない心の内は彼の表情よりもっと複雑だろう

「だったらこの戦いを一刻も早く終わらせなきゃな、俺もこれ以上人を殺したくねぇ…」

もうあのイデア平原の様な地獄絵図は見たくはないとラルクは素直にそう思った

「そうだな…時にラルク。君はこの戦いが終わったらルシア軍の騎士になるつもりはないか?」

突然グレイドはそう切り出した

「ん?それって引き抜きか?そういうつもりはないけどな」

ラルクは何も考えずにすぐに返事を返した

「それは残念だ、君のことを周りの者に聞くと君の正義観や力量は騎士としての品格を十分に備えているのだがな」

グレイドがそう自分を評価してくれるのはありがたいが

騎士の堅苦しい世界には元々興味はなかった

何より戦うことに対してまだまだ迷いが拭いきれていないというのが本音だ

「そう言ってくれるのはありがたいけど悪いな」

「いや、構わんよ。やはり、グレンの遺志を継ぐのか?」

グレイドは残念そうな顔ひとつ見せずに訊き返す

「まぁな、親父の遺してくれたものを守りたいんだ」

グレンの遺してくれた手に余るだけのものを守りたいと…

「なるほど…なら、無理に誘えんな」

それを聞くとグレイドは満足したように帰っていった

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