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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
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第2章 ーSin and Starlit Skyー

「俺が…殺した…?」


その言葉で初めて気付いた

自分が人を殺したという事に

「お…れが…殺した…こ…ろし…た…」

彷徨う視線の中に自分が殺した命の器を見た

その瞬間身体中に震えが湧き起こり

寒気となにか…分からないが

自分の心を何か恐ろしいモノが自分の心に迫ってきて

自分の心を闇の奥底に引きずり込もうとしている

そんな感覚が身体の震えと寒気と共に襲ってくる

そして、緋色に染まった自分の両手を見た

この緋色は手を洗っても決して落ちそうにない


「人殺しは罪だ、いくら正当化しようと拭いきれん」

父の言葉がラルクの耳に響く

そんな事分かっていた…いや、分かっていなかった

でも本当は知っていたんだ…この自分の心を襲う恐ろしい魔物は

この両手を染める緋色は


そうこれは…『罪』だ…


そんな自問自答を繰り返している中不意に足音が近づいてきた

今来られてはまともに戦えない

だがその足音はシルヴィアのものだった

「ラルク、大丈夫ですか?」

返事はなかった


しばらくしてラルクが手にかけた亡骸や他の亡骸は砦の近くに埋葬された

ラルクは自分の部屋で魂が抜けた様になって窓の外を眺めていた

すると部屋の扉をノックする音が聞こえた

「ラルク、入りますよ」

シルヴィアは返事を待たずに入ってきた

「少しは落ち着きましたか?」

丸まったラルクの背中に声をかける

「シルヴィア…人を…初めて殺したのはいつだ…?」

「憶えていませんね」

淡々と答えた

「俺…人を…殺しちまった…」

もう自分が何を言っているのか分からない

「ラルク、辛いかもしれませんが、それが僕達傭兵の仕事です。殺さなければ殺されます。もし誰かがラルクを殺そうとするなら、僕はその相手を殺します」

厳しい言葉だがこれがシルヴィアの優しさ、なのかもしれない

シルヴィアが出て行った後ラルクはベッドに入り眼を瞑ったが

余計な事が頭をめぐってなかなか眠れなかった


次の朝ラルクが眼を覚ますと昨日の事が悪い夢であったかの様にいつもと変わらない朝だった

しかし、眼を閉じると昨日の惨劇が鮮明に蘇る

それが何よりいつもの朝と違う証拠だった

ラルクは重い心と足取りで食堂に向かう

食堂に入るとみんな既に席についていた

その中にルシア王国王女セレン=シルミド=ルシアがいるというのもいつもと違う点だ

朝食を食べている間にアルトに大丈夫かときかれたが

あえて気丈に振る舞った

気を使わせてしまえば足でまといになってしまう

だが、今も心は不安定で食事もろくに喉を通らない


朝食の後、初めにグレンが口を開いた

「今後の事だが、一旦騒ぎが収まるまでガルシアに身を寄せようと思う」

「なんでガルシアなんだ?」

確かに自分の国で起きている事なのに外国に身を寄せるというのもおかしな話しだ

「ガルシア王はルシア王族と親交がある、それにグレンさんとも戦友なんだそうだ」

「親父はそんな奴と一緒に戦ってたのか?」

「昔の話しだよ…」

少し歯切れが悪い様子だ

「とにかくこの国にいればセレンが危険に晒される、すぐに出発するぞ」


数刻後、ラルク達は砦を後にした

これがラルクにとって初めての旅になる

ラルク達は出来るだけ村や街などを避けてまずはガルシア国境を目指す事にした

道中ではいつ敵襲があってもいいように三角に陣形をとり中央にセレン、その近くにラルク

前をグレン、後ろをシルヴィアとアルトという陣形だ

「ラルク…昨日はラルクを混乱させてしまってごめんなさい…」

「いや、俺の方こそ悪りぃ…」

何となく気まずい雰囲気になる

「どうさたラルク?王女様といえど女の子を前にして緊張しているのか?案外ラルクもウブだな」

アルトが沈黙を破ってきた

「ちっ違ぇよっ…!!」

一気に顔が熱くなっていく

「仕方ありませんよ、ラルクの周りには今まで女性と呼べる女性はいませんでしたし…」

「どういう意味だシルヴィア?」

アルトが睨むがシルヴィアは眼をそらす

「私だって十分魅力的だろラルク?」

艶かしい眼でラルクに迫る

「あ、あぁ…そうだな…」

緊張して声が裏返る

「何だか賑やかで楽しいですねっ!」

ここでセレンが初めて笑顔を見せた

「これ楽しいか?」

だが彼女の笑顔でラルクも心の緊張が少しほぐれた気がした

みんなが気を使ってくれたのかもしれない

こんな事でもしてないかぎり心が壊れてしまいそうだったから


その夜、ラルクは見張りを買って出て見張りについた

本当は眠れそうになかったからだ

夜空を見上げると街から離れた所だから

灯りが無く星が今まで見た事ないぐらい綺麗にラルクの眼に映った

星が河の様にながれつい見いってしまう

そうすると、今まで傭兵団の砦の周りだけが自分にとっての全世界だったのだと思い知らされる

「ラルク…?起きているんですか?」

振り返るとセレンが後ろに立っていた

「どした?眠れないか?」

「ええ、野宿は初めてなんで…少しお話ししてもいいですか?」

「ああ、座りな…」

ラルクが言うとセレンは小走りでラルクの右隣に静かに座った

彼女が隣に座ると甘くていい香りがラルクの鼻を優しく包む

「星がキレイだな…」

ついそんな台詞が出て少し恥ずかしくなった

「ええ、こんな景色お城では見れませんから…」

セレンも星空を見上げる

2人の時間と同じで星の河がゆっくりと流れる

とても心地良い時間…

「生まれた時から城にいるのか?」

「はい、生まれた時からお城をあまり出た事がありません、だから今とても嬉しいんです!こんな満天の星空がみれて、世界はこんなに広いんだと思いました!不謹慎かもしれませんが…」

セレンは少し後ろめたいように笑う

「いいんじゃねぇか?素直に喜んどけば、城に引きこもってるよかマシだ」

言われるとセレンは少し顔をしかめる

「ラルクヒドイです…私引きこもりじゃありません…」

「ハハッ…悪かったよ」

ラルクは笑みで返した

「でもこんな会話をしていると何だか私達お友達みたいですね!」

セレンは嬉しそうにしているがラルクは違和感を感じた

「ん?それじゃまるで友達いないみたいじゃないか?」

セレンは少しうつむく

「お城の中では友好関係というのは出世のためや政敵から自分を守るためにあるものなんです…だから友達というのが少し羨ましいです…アルトは私の護衛役ですし…」

「アルトはセレンの事ただのご主人様なんて思ってないんじゃないか?それに友達なんて作ろうと思えば作れるさ」

「じゃあ…」

セレンは上目遣いにラルクの顔を覗き込む

「私と…私ともお友達になってもらえますか?」

「姫様と友達なんて恐れ多いけどな…」

ラルクは笑顔で返事を返す

「わぁ…よかったぁ…!!」

一気にセレンの顔が喜びに変わりラルクの手を握る

「あ…あぁ、よかったな…」

恥ずかしくなり顔を背けた

「それじゃあラルク、私もう寝ますね、お話し相手になってもらってありがとうございました!楽しかったです!」

そう言いセレンはみんなの寝ているそばに横になる

「あ、また暇な時はラルクとお話ししてもいいですか?」

「あぁ、話し相手くらいならなってやるよ、だからおやすみ…」

背を向けて返事を返す

「はい、おやすみなさい…」


しばらくして彼女の寝顔を覗き込むと

こんな状況にも関わらず幸せそうな寝顔だった

こんな旅ならいつまでも続けたいと

さっきまで2人で見上げていた闇に散りばめられた輝きをみながら

ラルクは願った



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