第12章 ーthe Mountain covered with Fogー
「セレン大丈夫か?キツかったら俺かアルトがおぶってやるぞ?」
山道に転がる比較的平らな岩にセレンは腰掛け呼吸を整えるために深呼吸をする
「大丈夫です…でも、やっぱり山登りは始めてなので大変ですね、ずっとお城の中にいましたし…」
セレンは苦笑いしながら背筋を伸ばす
「運動しなくても太らないなんてうらやましいですねセレン様」
アルトがセレンの体を上から下まで見回す
「そ、そんなことないですよ……アルトの方が綺麗な体してますよ」
それを聞いたアルトは口元に柔らかく笑みを浮かべる
「フフッ…ありがとうございますセレン様、でもお世辞ではなく本当にセレン様はお綺麗ですよ?」
セレンはアルトにそう褒められると頬を紅に染め両手で顔を覆い隠す
女性というものはこうしてお互いを褒めあって綺麗になっていくのだろうか
「まぁ確かに嬢ちゃんもアルトも綺麗な体してるわな」
ライカは顎に指を当てながら2人の体をまじまじと眺める
その横でメリッサが期待するような視線をライカに送る
「アタシは?アタシは?」
ついでにライカの目の前で跳ねてみる
「ん?メリッサはお子様体型だなぁ!」
ライカはメリッサの頭に子供を扱うように手を乗せる
「なぁ、そういやなんかさっきから霧が濃くなってきてないか?」
ラルクが手を前に出すと掌がうっすらと水分で湿る
「マズイな…これでは視界が…」
アルトが山頂を見上げると山頂は既に濃い霧で覆われている
それは不気味で何か不穏な未来を暗示しているようだった
「まさかこれが敵の狙いなのでしょうか?こういう時に敵に出くわしては面倒です、急ぎましょう」
シルヴィアが急かすようにラルクに促し霧の中へと歩いていった
一刻程霧の中、山道を登っていているとラルク達は斜面ではなく平坦な場所に辿り着いた
「着いたぁ〜!ここ山頂かなぁ?」
メリッサが大きく伸びをしながら歩き回る
「でもなんか霧って幻想的だよね〜」
「多分まだここ山頂じゃねぇな…メリッサ、視界悪いからあんま走り回ったりして落ちんなよ?」
ライカが霧の中へ消えてしまいそうなメリッサに注意する
「大丈夫ぅ〜…ってうわっ?!」
メリッサがいきなり飛び跳ねて尻もちをつく
「あぶなっ!?この先崖じゃん?!」
どうやら視界が悪くて見えなかったメリッサの歩く先は崖だったようだ
「言わんこっちゃないわね…」
アルトが駆け寄ってメリッサを助け起こす
見てみるとそこは奈落という表現が相応しい底が深く暗すぎて見えない崖だった
試しに覗いてみるだけでも足がその奈落に引きずり込まれそうですくんでしまう
「底が見えないってことは私達結構高いところまで来たということなんですね、心なしか少し息苦しいです…」
セレンを見ると少し呼吸が速くなっているようだ
「ノモス山は他の山より少し標高が高いから仕方ありませんね」
シルヴィアの言う通りだが、ラルク達はそれほど息苦しさは感じなかった
セレンの場合ラルク達のように戦うなどして心肺機能を鍛える機会がないからだろう
「しかし霧が濃いなぁ、これじゃ敵がいても視野に入るまで相当距離縮めなきゃなんないな…」
ラルクがそう言いながらシルヴィアに意見を求めると
シルヴィアはラルクを見ながら人差し指を自分の唇に当て聞き耳を立てるように促していた
「誰か来ます…!」




