第11章 ーin the Battlefieldー
「いくら優勢とは言え陣形が雑ですね」
シルヴィアは戦場の真っ只中で敵を魔術で薙ぎ払ってゆく
「まぁ、ガルシアでは好きに戦えってのが当たり前だからな」
ライカが言うように周りを見ると隊列を乱れないように整えているルシア兵に対して
ガルシア兵は自由に入り乱れて戦っている
今は優勢だからお互いの違いに安易に優劣はつけられないだろう
「ラルク、大丈夫ですか?」
シルヴィアに声をかけられラルクは生返事を返す
戦場の空気に飲み込まれそうなのだ
人々が剣で肉を裂き合い倒れた敵を何度も何度も槍で突く
そんな血と断末魔の中で普通でいられるはずがない
ラルク自身ももう何人斬ってきたかわからないくらいなのに未だに刃が言うことを聞かない
後方のシルヴィアを見ると近距離の敵でも難なくナックルダスターと投擲用ナイフで応戦し
中距離以降の敵には得意の魔術を操り人形のように淡々と詠唱し悲鳴を生み出す
「おいラルク、あそこだ!」
ライカが何かを見つけたらしく指差す方向を辿ると武装した兵達が輪を作っていた
その中にいる2人の他を大きく凌駕する覇気を放つ男達と
華奢かつ豊満な体を包む露出の多い妖艶な雰囲気を放つ女性
「チッ…!!うちの化け物とガルシアの大猿相手にするのも楽じゃないわね…!」
彼女の言葉を推察しながら人混みの中を掻き分けていくと
ルシアの神剣とガルシアの黒獅子に対するルシアの紅蓮の姿があった
3人とも体に傷ひとつ作っていない様子からすると
両国の猛者達による三つ巴の高度な攻防が連想される
「ネェちゃんよぉ、さっきっから俺は黒獅子だっ言ってんだろ!?」
ゲルダが涼しい笑顔でスカーレットに吼える
「アタシからしたらあんた達全員下等な猿どもよ!」
スカーレットの真紅の唇に笑みが浮かぶ
スカーレットのその言葉を受けたゲルダはこめかみ辺りに青筋を浮かべる
「大将なぁにカッカしてんだよ?」
ライカがゲルダに呼びかける
「よぅライカ!ずいぶん遅えじゃねぇか」
どうやらライカの声は届いたようだ
「シリウス将軍、僕達もお手伝いしましょうか?」
シルヴィアもシリウスに向かって呼びかける
「だそうだ…そろそろ覚悟は出来たかスカーレット?」
シリウスが一歩覇気と共に詰め寄る
「ふん!これ以上長引かせて戦力を削るつもりはないわ!お前達!撤退よっ!」
スカーレットが踵を返し謀反軍の兵の中へと消えて行った
「待ちやがれっ!!」
ゲルダは群衆の中に消えていったスカーレットに咆えるが当然返事はかえってこなかった




