第10章 ーthe sinking Shipー
「でもどうやってこの沈み始めてる船から脱出するの?」
メリッサの言う通り船の壁を突き破り大量に水が流れ混んでいる
「とりあえずは来た通路を戻って甲板に出ましょう」
こんな災害のような事態にもシルヴィアは冷静に
入って来た扉に衝撃波を撃ち込み破壊する
幸いにもラルク達の来た通路はまだ浸水してはいない様だが
船は大きく揺れラルク達を翻弄する
あまりもたついているとラルク達も沈没船の一部になってしまう
その想像がこの船は長くはもたないことを暗示している
「甲板に出るはいいがその後はどうする?」
確かに甲板に出たからといって助かるという保証はない
それも含めてハーロットという大鴉の知恵なのだろう
「じゃあこの船とハーロット一緒に仲良く沈みますか?そうなるくらいなら僕は海に飛び込みます」
シルヴィアの台詞に対し
そういう事を言っているのではないと言いたげにアルトはムッとする
「私……泳げない…ですよ?」
セレンが身を小さくしながら手を挙げる
「わ、私もだ……」
アルトも少し頬を紅くしながら言う
「そんなおっきな浮袋あるのに?」
メリッサがアルトに意味深な視線を送る
「だったら船の残骸にでも掴まっていて下さい」
シルヴィアは甲板への扉の前で立ち止まる
「もしこの扉から水が流れ混んで来たらなす術無しだな…」
実際にはこの船内には窓がほとんど無いため外の様子は確認出来ない
もし扉を開けて水が流れ混んだら逆戻りはおろか脱出も不可能だ
「ねぇ、この扉開かないよ?」
メリッサが扉の取手を押したり引いたりを繰り返すところに
「メリッサ下がってなっ!!」
ライカが痺れを切らし扉に向かって突進するが
この時ライカとメリッサ以外の全員が気づいていた
「ライカ、やめろっ!!」
アルトが制止しようとした時にはもう既に遅い
ライカが蹴りで突き破ったところから水が溢れ出し
そこから扉が崩壊し大量の塩辛い水がラルク達を襲う
「うぉわぁっ…!!」
ラルク達は激流に飲まれ
水に体の自由を奪われるなかで意識は薄れていった
「……ぅ…んん……」
うめき声を上げ眼を覚ますとなぜかラルクは船の上に横たわっていた
「…?…助かったのか…?ゴホッ…ッ…!!」
体を起こすといきなりむせかえった
どうやらかなり海水を飲んでしまったようだ
「やっと気がついたかい?」
どこからともなく女性の声がする
「?…誰だお前?」
ラルクはむせるのをなんとか抑えて顔をあげると
浅黒い肌に額に臙脂色の布で短めの金髪を後ろに集めた
セレンと同じくらいの背の女性がラルクの前にしゃがんだ
「ったく、命の恩人にそれはないだろ?おいゲルダ!残りの1人が眼ぇ覚ましたぞ」
「おぉそうか!しかし手前ぇらも悪運が強ぇみてぇだな」
女性の後ろから野太い声の主のゲルダが現れた
「みたいだな…他のみんなは?」
ラルクが言うと女性はラルクの背中側を指差す
「ちょっとライカっ!濡れて服透けてるんだからあんまりジロジロ見ないでよね!」
メリッサはにやけながらいやらしい視線を送るライカに背を向ける
「あー、メリッサのお子様体型には興味無いっての」
ライカはメリッサを手で払う動作をする
「ライカ、恥ずかしいですよ…」
「全くお前という奴は…!」
困惑するセレンに加えアルトはそんなライカに呆れている
「随分と賑やかな仲間達だねぇ…」
女性は苦笑いを浮かべる
「まぁ、それが取り柄みたいな奴らだからな…」
ラルクも苦笑いを返す
「それはそうと、そろそろ名乗ってくれてもよろしいのではないでしょうか?」
後ろからシルヴィアの声がした




