第10章 ーinvitation to the Feast of Deathー
そして翌日の朝には既にラルク達はゲルダ率いる黒獅子の牙と共に港のあるミラクに到着していた
「何でこえ俺達がミラクに来る時は毎度毎度こうなっているのかねぇ…」
偵察を引き受けたライカとラルク達が物陰から街中を覗くと
黒い腕輪を着けた大鴉達が戦前の緊張感と共に獲物が来るのを今か今かと待ち構えている
「この中に疫病神かなんかでもいるんじゃないの?」
メリッサが皆を見回す
「でしたらそれはライカではないでしょうか?この前も街中を歩いていたら女性のスリがライカに近づいて来ましたし」
「そう言われるとシルヴィアの言うとおりかもしれないわね…ライカと会ってからというものの、いきなり捕まったり、泥棒の真似事みたいな事をする事が増えたし…ロクな事がないわね……」
アルトは横眼でライカを見る
「あらまぁ…ヒドイお言葉……」
そんなやりとりの中ラルク達に近づいて来る足音があった
「どうだ?いけそうか?」
野太い声に振り返るとそこには正に黒獅子と呼ぶに相応しい大男のゲルダがいた
「まぁ、船は大鴉共のを失敬するとして…」
ライカが港の方を指さすと建物越しでもその姿がわかる程の巨大な船が停まっている
「よし、じゃあ手前ぇらは俺達が奴らを引きつけてる間に先に船に向かえ」
「でもそれじゃあ黒獅子のみんなが……」
ゲルダの提案にメリッサが不安の色を見せる
「大丈夫だメリッサ、俺達は泣く子も黙る黒獅子の牙だぞ?あんなチャラチャラした野郎共には遅れはとらねぇよ。それより坊主、船の方は頼んだぞ」
ゲルダはメリッサの頭を少し乱暴に撫でながらシルヴィアを見る
「わかっています、貴方達も乗り遅れないようにしてください」
シルヴィアが言うとゲルダはニヤッとしながら去っていった
そして、しばらく待機していると遠くの方で人々の怒号や武器がぶつかり合う音が聞こえてきた
「始まったみたいですね…」
セレンが顔に不安の色を浮かべながら静かに呟く
「行くか…!」
ラルクも皆にそう声をかけ港の船着場に向かって走り出す
途中敵に何度か遭遇したが
ゲルダ達が大半の数を引きつけてくれているおかげで難なく切り抜けることができた
しかし、船着場に辿り着くと要所なだけあってすぐに敵に囲まれてしまう
「簡単には乗せてくれないようね…!!」
アルトが眼の前の1人を槍で一閃する
「でもあんまりここで時間掛けてられないよ?」
メリッサが船着場に停まる船を振り返ると敵の後方の数人が吹き飛んでいった
「手前ぇら何グズグズしてやがる!さっさとお嬢連れて乗れ!!」
ゲルダはまた彼を囲んだ複数人を彼の大斧で薙ぎ倒していく
「でもゲルダ…っ!!」
ラルクは迷いながらゲルダと船の間に視線を行き来させる
「馬鹿野郎!!野郎共の心配するよりお嬢達の心配しやがれ!!」
ゲルダから戟が飛んでくる
「そゆことよラルク。グズグズしてっと次はあの大斧が飛んでくるぜ?」
ライカはラルクの肩を叩いて船着場の船への渡しを駆け上がっていく
「早いところ船の制圧を済ませてしまいましょう」
シルヴィアが甲板に立ちそう言うが実際船上には人が見当たらない
「とりあえず舵のある部屋に向かうか…」
アルトがそう提案し船室の入り口へと歩いていく
「私、船に乗るの始めてです。だからもっと別の機会に乗りたかったですね…」
セレンは少し残念そうな表情を浮かべながら船内の廊下を歩いていく
「それにしてもハーロットってずいぶんおっきな船持ってるんだねぇ」
メリッサが船内の窓から外の碧の地平線を眺める
「やっぱ海はキレイだねぇ…………ねぇ!?この船もしかして動いてない?!」
メリッサは異変に勢いよく振り返った




