第2章 ーEncounter and Crimeー
辺りが薄暗くなった頃ラルク、シルヴィアはアルトの手引きでグレンと城門の前で別れ
ルシア王国王都アークの王宮内に入る事が出来た
城の中はラルクが今まで見た事ないような広さに装飾が施されていた
ところどころに歴代の女王の石像や肖像が飾られいる
大理石の床は歩くと足音が高い天井に響き渡っていく
「意外と簡単に潜入出来たな…」
周りの黒と紅いラインが所々に入った鎧を身につけている黒金の騎士を見るが
特に自分達を警戒する様子はない
「騎士の同伴なら入り易いだろう、それだけこの国が平和だという事だ」
確かにそう思えるが、だったらなおさら謀反という話しは信じ難い
「しかし、謀反の動きは水面下で確実に動いている」
「謀反分子が表に洩らさないようにしているのですか?まぁ、彼女は国民から絶大な支持を受けてますからね、謀反分子も迂闊に国民を敵に回したくはないでしょう」
アルトは頷いた
だからここまで王宮内は静寂を保っているのだと納得がいった
そしてアルトはラルクとシルヴィアを止まらせ
部屋のまえに立っているアルトと同じく
白に所々水色のラインの入った鎧を着ている2人の女性に話しかけにいった
しばらくすると部屋の前に立っていた2人の女性はアルトに頭を下げ消えていった
アルトはラルクとシルヴィアを部屋の前に呼ぶと
扉をノックした
「親衛隊隊長アルトです」
どうぞと上品な少女の声が返ってきた
アルトは失礼しますとドアノブをひねった
アルトがゆっくりとドアを開け部屋に入ると
少女が椅子に座っていた
長い黒髪に茶色のすんだ澄んだ瞳
色白で華奢な体に合った白を基調としたドレスを身に纏っている
「アルト…どうしたんですか?」
不思議そうに茶色の瞳がアルトの真剣な表情を映す
「セレン様、落ち着いて聞いて下さい…」
アルトは現在の状況をセレンと呼んだ少女に話し始めた
「お母様とエルシアが…?!」
指先を口元にあて驚きを抑えるセレン
その様子だと自分が軟禁された経緯も母と自分の腹心までもが
危険に晒されているという事も今知ったようだ
だか、アルトは今回の謀反の首謀者はセレンの父である
グレイドであるという事は話さなかった
いずれ分かる事だが
多分アルトはこの現実をたった15の少女が受け止めるのは酷だと判断したのだろう
「…という訳で私たちとここから脱出してもらいます」
「私たち…?」
自分とアルト以外にこの部屋に誰がいるんだという顔をするセレン
「2人とも入ってこい」
アルトが言うとラルクとシルヴィアが入ってくる
「今回の脱出の護衛につく信託の剣のラルクとシルヴィアです」
「よろしくな」
とラルクに対して無言のシルヴィア
「2人とも失礼だぞ!」
アルトが注意するがセレンはいいんですよといさめる
「まったく…ではセレン様脱出の準備を…」
ラルクとシルヴィアを閉め出しアルトはセレンの準備を手伝い始めた
「…なぁ、アルト達時間かかり過ぎじゃないか?」
壁にもたれながらシルヴィアに聞く
「女性というのはそういうものです…ですがアルトが手伝っている割には遅いですね」
シルヴィアがそれを言い終る頃
「アルト、入るぞ」
「ちょっとラルク」
シルヴィアの意表をつき扉を開けるラルク
しかし、シルヴィアが止めようと彼の腕を掴んだ時には
もう遅い、部屋の中には白く滑らかな肌が剥き出しの小さな背中を
ラルク達に向けているセレンの姿があった、しかもラルクとセレンの視線がピッタリと合っている
あっけにとらわれているラルク達とラルクを睨むアルト
一瞬時が止まったかのようだった
そして次の瞬間
「キャーーーッ!!」
セレンの叫び声は城内に響き渡っていく
「ラルク!!」
叫び声の後にアルトの平手打ちがラルクの右頬を捉える
また、その音も城内に響き渡っていく
「え?…え?」
一瞬の出来事で状況が理解出来ないラルク
「ラルク!貴様という男は私ならまだしもセレンのを…!!」
さらにまくしたてるアルト
「ラルクならいいんですか?…それよりそんな大声出したら…」
シルヴィアが言ったそばから
「何事だ?!」
衛兵の黒金の男達の足音が近づいてくる
「マズイな、ラルク!私が時間を稼ぐからそのうちに脱出しろ!」
アルトが部屋を出ると衛兵達の足音が部屋の前で止まった
「何事です親衛隊長?!」
「あそこにネズミが出たのよぉ…怖いから退治してぇ…!」
甘ったるい声で訴える
「うわ出た…」
眉をひそめるラルク




