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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
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第9章 ーTramplingー

「おいおい…笑えねぇ事してくれてるじゃねぇの……!」

ライカはその表情に抑えきれない怒りを露わにしている

ダンケルク城を発ち数刻後にレギオンに着いたラルク達の目前に広がるのは

破壊され火の手が上がる箇所もある城下街

逃げ惑う人々、その身をぶつけ合う兵士達、そして横たわる亡骸達だった

「ライカ、ここは俺達が引き受けるからメリッサと一緒にガルシア王の所に行ってくれ」

ラルクとシルヴィアは目前に広がる戦場に身を投じるために武器を構える

「おいラルク、俺達は軍人だ…」

ライカの低く鋭い声が聞こえてくる

「軍人の仕事は民間人を守る事だよ」

「そう、それに自分の身も守れねぇ王はこの国にはいねぇよ…!」

メリッサとライカのその言葉を聞いたラルクは思った

ルシアの騎士はは彼らが本当に守るべきもの自らの手で傷つけていると

例え異国の地であろうと弱者を蹂躙するのは許される事なのか

「ラルク行きましょう、僕達は指示通りに事をすすめなければなりません」

今は何が正義なのかと考える暇はラルクには与えられない

シルヴィアの背中を追ってライカとメリッサに別れを告げた

そして、迫り来る謀反軍の騎士を斬り捨てながら

オルドネスがいるであろうレギオン王城の玉座の間へと急ぐ中

やはり、ガルシア軍とルシアの騎士に加えて民間人の死体がいくつも目についた

また罪の意識に胸が締め付けられるような感覚に襲われる

なぜ関係のない者までこうして傷つかなければならないのかと

「ラルク、感傷にばかり浸っていられません。ここで被害を食い止めないと後々に僕達の戦いが不利になってしまいます」

「あぁ………」

ラルクの心情を察したシルヴィアに生返事を返し先を急いでいった


「セルシウス、スカーレット何をしている!早く殺さんか!!」

ラルクが玉座の間の扉を開けて中に踏み込むと

そこには四肢から強い光を放つオルドネスと彼に対峙するセルシウスとスカーレット

その後ろにわめきながら、ハゲ散らかした頭に

そんなに必要かというくらいの数の装飾品を身につけた中年の肥えた男がいた

「うるさいわねっ!あの化け物相手にしてるのよ!?黙ってなさい!!」

スカーレットが紅の瞳に苛立ちを男に向かって見せる

「ガルシア王っ!…やっぱりお前達か…!」

ラルクもその場に入っていきセルシウスとスカーレットを睨む

「ラルクか、他の者達はどうした?」

対峙するセルシウス達から目線を外さずにラルクに返事を返す

見た所まだ戦局はそれほど動いていないようだが

神将騎2人相手でもオルドネスはまだ余裕のようだ

「ライカとメリッサは今城下に、他はダンケルク城からこちらに向かっている途中です」

ラルクに代わってシルヴィアが状況説明する

「だそうだフィルス公とやら…今の貴公らの戦力ではここらが潮時ではないのか?」

オルドネスは後ろの偉そう構えている中年男をそう呼んだ

「むぅ……セルシウス、後の指揮は貴様に任せる。私は一旦退くぞ」

そう言ってフィルスは魔導書を使って魔術陣の中に消えていった

「結局は能無しね…セルシウス、私は兵を撤退させるから後はアンタぬ好きにしなさい!」

スカーレットもそう言い残し玉座の間をさっさと出て行った

「おい、待てよ…!」

「貴様の目当ては俺ではないのか?」

スカーレットに気を取られていたラルクの耳に父の仇の声が聞こえる

「……そうだな、今度こそ親父の仇を取らせてもらおうか…」

ラルクはセルシウスに向き直るが

相変わらず彼からは異常な程の恐ろしい威圧感が感じられる

「貴様も生きていたか…」

セルシウスはラルクの横に立つシルヴィアに目を移した

「えぇ、生憎ウチの傭兵団はしぶとさが売りなので…」

シルヴィアも軽い皮肉で挑発し返す

「どうやら俺は場違いのようだな…ラルク、シルヴィアよ俺は城下の方に加勢に行く。…あぁそれと、別に玉座を守ろうだなどと気張る必要はないぞ。民に勝る玉座など俺は知らぬかからな…」

オルドネスはそう言い残しセルシウスに背を向けた

異様なまでの殺気を放つセルシウスにすら簡単に背を向けられる

オルドネスの背中はまさに王者の背中だった

「行くぞシルヴィア……!」

ラルクはシルヴィアに横目で合図を送りシルヴィアも無言で小さく頷く

それを確認したラルクは剣を抜きセルシウス目掛けて突進し横薙ぎに剣を振る

「剣を師事する者にとって半ばで師を失う事ほど憐れな事はないな…」

セルシウスは静かにそう言いながら剣を払う

だが、ラルクを突き放した次の瞬間シルヴィアの焔の渦が襲う

「だから僕達はこうして師の仇をとりに来ているんですよ」

シルヴィアはセルシウスが飲み込まれた焔に向かって言う

「仇をとる?その程度でか?笑わせる…」

焔に飲まれたセルシウスだが黒煙を纏いながらラルクの前に現れ剣を振り下ろす

「お前を倒さないと親父が俺達を守った意味が無くなるんだよっ!!」

ラルクは左肩の肉をよけきれずに裂かれながらも剣をかわし

斜め上に剣を振り上げるがセルシウスはそれを読んでいたのかラルクの剣に合わせて剣を振る

そして次の瞬間ラルクの手に手の動きが封じられてしまう程の痺れが走り

剣が耳に響く程の甲高い悲鳴を上げる

「ラルクっ!?」

シルヴィアが叫んだ時にはもう遅い

ラルクの剣は綺麗にふたつに折られ手に残された柄さえも弾き飛ばされていた

「己の未熟さと剣の脆さを呪え……!」

セルシウスに耳元で囁かれたかと思った次の瞬間にはラルクは激痛と血溜まりの中に倒れていた

しばらくすると痛みと交代するように体から段々と力が抜けていく

ラルクの視界の端ではシルヴィアが魔術で反撃しているが

セルシウスはそれをことごとくかわして魔術陣の中に消えていった

「ラルクしっかりして下さい!!ラルク、ラル……ク…ラ……ク…」

駆け寄って声をかけるシルヴィアの声も霞んでいく視界と共に遠退いていった

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