第9章 ーthe Invationー
セルシウスはラルクの剣を押し返し更にもう一振りでラルクの剣を手から弾き飛ばした
ラルクの剣は甲高い音を上げて空中に舞い上がり床に落ちる
剣を失ったラルクの体中から血の気が引く代わりにどんどん体温が下がり冷や汗が湧き出る
ラルクは恐怖の中でも眼を見開きその身を斬られるのを覚悟したが
「黒幕は俺ではない、いずれ分かるだろう……」
セルシウスは剣をラルクの鼻の先まで剣先を振り下ろしたところで刃を収めた
そして、あの時と同じようにまた魔術陣の中に消えて行った
残されたラルクはしばらく身動きが取れなかった
翌朝眼を覚まし、支度を終えて部屋を出ると
ライカとメリッサ、それから2人に隠れてシルヴィアが待っていた
「おはよラルク、もう準備出来てる?」
メリッサがラルクの顔を覗き込む
「出来てる…ライカとシルヴィアは大丈夫か?」
あれだけの傷を受けたのだから嫌でも心配にはなる
「おぅ!もうなんともないぜっ!エルシア…って言ったっけ?やっぱ美人に治療してもらうと治りが早いっ…!!」
ヘラヘラ笑うライカの足の甲をメリッサが踏みつける
「看病して損したっ!!」
メリッサがプゥっと頬を膨らませて顔をライカから背ける
「分かってるって…ちゃんと感謝してますってぇ!」
「それよりラルク、先程シリウス将軍とゲルダさんから僕達だけで先に謀反軍の向かったレギオンに入るようにと指示がありました」
メリッサにゴマをするライカをよそにシルヴィアが言う
「ん?それはかまわねぇけど、やっぱりルシアの騎士団と黒獅子の連合軍みたいな大所帯だと時間かかるか?」
「はい、かなり事態は急を要しますからね。だから身軽な僕達が行ってガルシア王を守れとの事です」
「でもガルシア王そういうの余計なお世話だと思うんじゃないかな?」
ガルシア王国の信条通りなら確かにメリッサの言うとおりだ
もし、神将騎団を相手にしたとしても全く引けを取らない姿は容易に想像できる
「じゃあ…セレンはともかくとして、アルトはこの事知ってんのか…?」
昨夜はあんな状態だったからどうなっているかわからないが
アルトの事だから立ち直っている可能性は十分にあるかもしれない
「アルト……はここに残ってセレンに付いてるってさ…」
メリッサが少し言いにくそうに言ったのは
昨日のセレンの事もそうだが多少なりとアルトの事情も把握しているからなのかもしれない
「これが終わったらお二人さんを迎えに行ってやりますか」
ライカがそう明るく言った
確かに今のラルク達に出来るのはそれが精一杯なのかもしれない
城を出てしばらくレギオンへ向かう道中会話も少ない中メリッサが最初に口を開いた
「なんか、セレンとアルトがいないと調子狂うね……」
「まぁ仕方ねぇさ…今はさ……」
ライカも苦笑いを浮かべる
「どうしてこうなっちゃったんだろ………?」
メリッサが誰に言うわけでもなく呟く
「それは今のセレンの状態の事を言っているんですか?」
シルヴィアがメリッサの何気ない一言を拾ったが
メリッサはシルヴィアの聞き返しに首を横に振った
「ううん…そうじゃなくてセレンのお父さんが謀反の黒幕じゃないってわかったんでしょ?なのに、なんで戦いが終わらないのかなって……」
本当はメリッサの言うとおり
グレイドが謀反の黒幕じゃないと分かった時点で戦いは終わる筈だった
だが、また新たにさらに多くの血が流れようとしている
「元を絶たねぇと戦いは終わらねぇって事だろ?」
ラルクは昨夜の事を少し思い出した
真偽が定かではないが黒幕はセルシウスではなく他にいる
彼の口からはそう語られたが例え相手が誰であっても許してやるつもりはない
自分の大切なもの、大切な人の大切なものを奪っていったのだから
「謀反軍は黒金騎士団の者が多いようですが、黒金は貴族院寄りですから黒金の後ろには貴族院が控えている可能性が高いですね」
「じゃ、黒幕は貴族院の人?」
「だろうな、上手い事女王の旦那を悪役に仕立てあげて信用を落として、そこを貴族院の連中が悪者退治って寸法じゃねぇの?」
ライカの口調が少し営利になっているような気がした
「政権ひっくり返すのに成功した次は反戦論揉み消してウチに手ぇ出すって……ウチも舐められたもんだな」
ライカの言葉にラルクは胸をつつかれたような気がした




