第9章 ーDarkness within Darknessー
その後、ラルクは泣き顔を見られたくないと顔を紅い髪で隠しながら歩くアルトを部屋まで送り
自分も部屋に戻って寝ようとしたがどうも眠れずに夜の静寂とともに城の中をフラついていた
(謀反の張本人…か……一体誰なんだよ…)
グレイドの疑惑が晴れたとはいえまだ問題は山積みだ
セレン、セルシウス、スカーレット、ハーロット、マントの男…挙げればキリがない
それにセルシウスが言うには今は謀反軍がレギオンへと向かっている
考えを巡らせながら何となく大広間の扉が眼に付き
体重をかけながらその大きな扉を開けてみると
「ッ…!?」
大広間の闇の中にただずむさらに深い闇
その闇は窓から差す月の光で彼の黒い鎧が光り
その光がラルクの右眼を差す
「貴様が来るのを待っていた…」
セルシウスは静かに一言そう言い放ちラルクを見た
「奇遇だな…丁度俺もお前に会いたかったんだ…」
彼の焰が燃え盛るような短い紅い髪はラルクの胸の鼓動を段々と高めていった
「親父の弔いついでに聞きたい事がある」
ラルクは高鳴る胸の鼓動が自分でも分かるくらい脈を感じる右腕で腰の剣の柄に手をかける
「なんだ…?」
セルシウスはまだ剣の柄に手をかけずにその眼光だけを鋭くする
「謀反の黒幕はお前か…!?」
ラルクは低くにらみつけるような口調でセルシウスに問う
「もしそうだとしたら貴様はどうする気だ?」
セルシウスは口の端に微笑を浮かべながら答える
「わかってんだろ?結局は親父の仇をとるだけだ…!!」
力のこもる右手で鞘から勢いよく剣を引き抜く
「いいだろう…必要な事は全て交わる刃が語ってくれるはずだ…!」
セルシウスもようやく鞘から剣を引き抜いた
抜剣したセルシウスからは今まで鞘に抑えこまれていた殺気が一気に放たれ
足が地面へと引っ張られているような感覚に襲われる
だが、ラルクも引き下がるわけにはいかない
やっと巡り会えた仇だ
ラルクは一気に自分の剣が届く間合いに入り剣を斜め上から斬りおろす
セルシウスはそれを上体の動きだけでいとも簡単にかわしてしまうが
ラルクはお構いなしに追撃を繰り出す
「太刀筋も父親そっくりだな、多少粗いが悪くない…」
セルシウスはラルクが剣を両手で振るうのに対し片手で剣をぶつけ受け止めてしまう
そして、ラルクの剣を子供をあしらうかの様に押し返し
その場から一歩も動かずに横薙ぎに剣を振る
それを読んでいたラルクは高く飛び上がってかわし
空中で一回転しながら剣を振りおろす
「身のこなしも悪くない」
セルシウスはまたもそれを受けてラルクをはじき飛ばす
飛ばされたラルクは背中を床に叩きつけられ
肋骨から肺を締め付けられるような痛みに身をよじる
「っ…!じゃあ、俺の力量が分かったところでそろそろ答えてくれよ!謀反の張本人は誰なのか…」
起き上がりラルクは再び剣を構える
「いいだろう……」
セルシウスは剣をラルクと同じように剣を構えラルクに向かって突進してくる
セルシウスが剣を振りおろすのに対しラルクは剣を振り上げ鍔迫り合いの形になった
「謀反の張本人は……」




