第8章 ーAnxiety to the Truthー
「なんかシルヴィアと組むってのも新鮮だな」
ライカが壁伝いに歩きながら後ろにつくシルヴィアに声をかける
「何か他意があって僕と組んだんですか?」
シルヴィアは曲がり角の壁に背を向け
小さな四角い鏡を取り出し反射させて敵がいないか確認する
「いや別に、ただ…まだそんな幼いのにどうしてそんな戦闘技術とか知識をもってるのか、魔術はそこらの魔導士も顔負けときた…ってのは気になるけどな」
ライカは見張りの隙を見つけると足音を消しながら腰を低くして飛び出し
見張りを羽交い締めにする
「長年グレンさんの下にいたのでこれぐらいは普通ですよ。ラルクやアルトを見てれば分かると思いますが」
シルヴィアは話しながら異変を察知して駆けつけた騎士に向かってナイフを投げる
「ま、確かにあの2人はそれなりに力持ってるわな、ガルシア王とゲルダに認められる程だしな…何か過去に並々ならん事でもあったのかい?」
ライカが遠回しに聞くとシルヴィアは黙りこみ目線を斜め上に向ける
「……ただひとつ僕達の生い立ちについて話せるのは、僕とアルトには親がいません。親の顔も知らなければ、幼い頃の記憶もありません。グレンさんに拾われた事以外は…」
「なるほどね…みなしごなのは俺も同じだけど悪い事聞いちまったな……」
ライカの楽観的を形容する声は心なしか低くなったように思えた
「いえ、構いません。それより、この天然要塞のようなダンケルク城の城門をどうやって開門させるつもりなんですか?」
シルヴィアにとっては話題にされたくない話題なのかどうかは
彼の表情からは伺えないが
シルヴィアは話題を変えるように会話を方向転換させた
一方ラルク、アルト、セレン、そしてメリッサは
セレンの両親であるルシア女王セリエ、夫君のグレイド、そして宰相のエルシアを救出すべく
城内をしらみ潰しにあたっていたのだが
一向に彼女らの姿がみつからない
そして、もうひとつラルクが気になったのは
謀反勢力に属している黒金騎士団がここ、ダンケルク城に集結しているはずなのだが
その騎士の姿がほとんど見当たらない事だ
「ねぇセレン、セレンのお父さん、お母さんてどんな人なの?」
ラルクが思案をめぐらせているとメリッサが横でそんな事を口にした
「2人ともとても優しい人なんですよ。…だから、お父様がお母様に向けて謀反を起こしたと初めに聞いた時は信じられませんでした……」
セレンは苦し紛れでも笑ってみせた
「だっ…だってぇラルク!怖そうな人じゃなくてよかったねぇ!」
セレンの繊細な部分の問題に触れちなた気まずい空気になり
メリッサはそれを払拭する為に大げさにラルクを肘で小突く
「ん?あ、あぁ…」
適当に返事を返したが
実際にはよく聞いていなかった
「でもいいなぁ両親がいてくれて…アタシなんか両親は小さい頃死んじゃったからなぁ」
こんな事にもメリッサは明るく振る舞いながら言う
それが彼女の心を支える強さなのかもしれない
「えと、ラルクのお母様はどんな方なんですか…?」
セレンは少し聞きにくそうにラルクの顔を覗き込む
ラルク達にとって親というものはそれぞれの繊細な部分なのかもしれない
「ん?俺も母さんは物心つく前からいないから顔もわかんねぇな、親父ももういないし。唯一の手がかりだったんだけどなぁ……」
ラルクは少し顎をあげて天井を見上げた
「お母様…大丈夫でしょうか……」
セレンもラルクの感傷が伝染したのか俯いてしまった
「あ、あぁゴメンゴメン!…何か違う話題にしよっ…!?ええと…そ、そういえばこの前ライカがさ…………」
セレンの機嫌をとろうとメリッサは彼女の手を引いていった
「……ラルク…」
アルトの小さないつもより少し低い声が聞こえてきた
「…アルト、最近何か変じゃねぇか?何かあったか?」
先を読んで聞いてみた
ラルクの言うとおりアルトは最近様子がおかしい
元々彼女は自分の感情を押し隠したりするのが得意だが
何かを隠しているような…
特にダンケルク城に来てから口数がめっきり減ったとラルクは感じていた
すると、俯いていたアルトの視線はジッとラルクの蒼い瞳を彼女の紅の瞳で見つめた
「ラルク…実は…っ!!」
と言いかけた所でグッと奥歯を噛み締めアルトは言葉を飲み込んだ
「……いや…何でもない……行きましょう…」
ラルクは両肩に見えない憂い背負いながらセレンとメリッサを追うアルトの背中を追った




