第8章 ーthe Intrusionー
「名前とか…聞き忘れちゃったね」
メリッサが顔の皮膚に裂傷を負ったラルクに治療を施す
頬の辺りが温かい光に包まれ痛みと傷が塞がっていく
「恥ずかしがり屋さんなんでしょうか…?…安らかに眠って下さい………」
セレンは横たわる遺体達に小さな声で語りかけ
治療魔術をかけながら言う
その事については誰も口を挟まなかった
皆それがセレンの優しさだとわかっていたからだ
「そうじゃなかったとしても素性なんて明かさないだろ?あいつ…」
ライカは数ある深淵への道を覗きこみながら言う
「敵じゃないだけたすかったわ……」
あんな剣の腕前を魅せられては
アルトの言葉にも素直に頷けてしまう
「それで、ダンケルク城へはどっちへ進んだらいいの?」
「んーと……こっちだな」
ライカがラルク達から見て1番右側の通路を指差す
だが、またしばらく歩いていくと行き止まりにぶつかってしまった
「まさかお前また道間違えた?」
ラルクは行き止まりの壁を確かめながらラルクを振り返る
「なぁに?まぁだ俺の事疑ってんの?大丈夫だってぇ、なぁ?メリッサ!」
ライカはメリッサに視線を送るとメリッサは
ここ、ノスタルギア回廊に入ってきた時と同様魔導書を開いていた
「あんまり疑り深いと女の子にきらわれちゃうぞぉ?」
メリッサはそういいながら詠唱をすると眼の前が光に包まれていった
光が収まると先程のジメジメした暗い景色ではなく
より規則的で人工的な景色がラルク達を迎えた
恐らくダンケルク城に到着したのだろう
ノスタルギア回廊より断然こちらの方が明るい為眼の奥が痛む
「よし!ダンケルク城に到着っ!!」
メリッサがラルク達に向かって敬礼する
「今頃クラウディア将軍達は大騒ぎね、きっと…」
今になってアルトはセレンを護衛する立場であり軍人である事を自覚しため息をつく
「全く…大胆な事する姫様だねぇ」
クラウディアとの約束を破る片棒を担いだライカはヘラヘラと笑う
「ご、ごめんなさい…でもアルト……!」
セレンが自分が行った事の重大さを思い知り慌てて頭を下げるが
皆セレンの心の内は理解しているからここまでセレンを連れて来た
「謝らないで下さいセレン様。私もセレン様のお気持ちが分からない程頭は堅くありませんよ?」
と、ここまでは笑顔でいったが
すぐさまその柔らかい笑顔は苦々しさを混じらせる
「でも、きっと戻ったらお叱りを受けるでしょうね……」
アルトはウィンクしながら舌を出して彼女にしては珍しく戯けてみせる
「軍法会議にかけられ、命令放棄でアルト親衛隊長は断罪…と」
シルヴィアはありもしない事をさらっと言ってのける
「セレン様…短いお付き合いでしたが楽しかったです……」
アルトはセレンから顔を背け人差し指で涙を拭う真似をして見せる
「そ、そんなぁ…!?ラルクぅ…!!」
セレンはラルクの腕を引っ張る
「んな訳ねぇだろ………それよりこっからどうすんだ?開門とかセレンの両親の救出もやんなくちゃなんね、二手に別れるか?」
戦力は半減するが今は事を迅速に進める必要がある
むしろそちらの方が得策だろう
「そういう事なら開門の方は俺に行かせてくれ、特別師団長様の出番だな。あ、それと…シルヴィア借りてっていいか?」
ライカはそう言いながら嫌がるシルヴィアの肩に手をまわす
「お手柔らかに頼みますよ」
一応嫌がっているのはどうやら建前のようだ
少しは仲間というものに慣れてきたのならラルクとしても嬉しい
もしそうでなくとも、魔術や飛び道具があった方がライカにとっては都合がいいのだろう
「そんじゃ、後は救出でいいな?セレンとメリッサは怪我をしていた場合に手当を頼む」
ラルクが彼女らを見ると2人は大きく頷く
気合十分のようだ
「開門がすんだら僕が発煙弾を打ち上げます、そしたらラルク達も進路を確保する為に合流して下さい」
シルヴィアはそう言って歩き始めた
「ライカ、シルヴィアを頼んだぞ!」
シルヴィアはライカと2人だけで組むのは始めてだろうから一応そう言っておいた
「はいよ、ラルクもしっかりエスコートしてやれよっ!」
ライカもラルクにそう返事をし
走って先に行ったシルヴィアを追いかけていった




