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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
35/114

外伝 ーHe Loves Me?ー PART3

ラルクがお会計を済ませて店を出ると

メリッサ達は物陰に隠れながらライカと女装したメリッサを尾行していた

さすがに軍人や傭兵について来ている者の集まりなだけあって尾行もお手の物だ

「おい、後で3人とも立て替えといてくれよ?」

「そんなケチな事を言うなラルク、緊急事態だから仕方ないだろう」

「ケチな男は嫌われるよぉ?」

「ごちそうさまですラルク」

結局こういう時は男が払う羽目になるんだよな…

「それよりライカとシルヴィアいい感じですね」

それよりって……

まぁ、確かにシルヴィアライカと腕組んでいい感じだな

ライカも満更でもなさそうだし…

「ムゥ…ちょっと羨ましいかも……」

メリッサが少し不満そうな顔をする

そうそう、それが女の子の普通の反応だ

…となるとひとつ心配な事が出てくるんだよな……


そしてしばらく尾行を続けているとシルヴィアのある異変に気づいた

「ねぇ、シルヴィア君の顔…」

メリッサがシルヴィアの顔を指差す

「ん?シルヴィアの顔がどうした?」

見た感じ何の異変も見当たらないが…

「シルヴィアのお化粧が浮いてます…!?」

「そんな一大事か?」

セレンが焦るほど大した事じゃないと思うけど…

「これだからラルクは…」

え?俺だから何なの!?

何そのラルク分かってな~い…みたいなアルト達の視線!?

「で、顔作り直すのにどれくらいかかる?」

「3人でやればすぐ済むわ」

「よし、じゃあシルヴィアの前方に周りこんでくれ」

「了解っ!」

メリッサ達は頷き物陰から出て走っていった

「さぁて、命中すっかな…」

ラルクは足元にある小さな石ころをシルヴィアに向かって投げる

「いたっ…!?」

見事ラルクの投げた石ころはシルヴィアの後頭部に命中した

「どうした!?」

「後ろから何か飛んできたの…!」

「?…ちょっと待ってな、見て来るから…」

ライカが不信そうな顔をしラルクの方に向かってくる

「っと見つかんねぇように逃げるか…」

ラルクはライカに見つからないように逃げる

「シルヴィア!こっちだ…!」

アルトが路地裏から手招きする

「化粧が落ち始めていたのでありがたいですが、もっと他の方法は無かったんですか?」

シルヴィアは頭をさすりながらアルト達に駆け寄る

「すみません…緊急事態だったので…」

そう言いながらセレンは手早くシルヴィアの浮いた化粧を直す

「文句はラルクに言ってよね……はい!出来た!」

メリッサはシルヴィアの顔を両手のひらでパチンと挟む

「ではそろそろキメにいきますよ…」

「あぁ、頼んだぞ…!」

そう言ってアルトはシルヴィアを路地裏から送りだした


そして一刻程が過ぎ

ライカと女装したシルヴィアはお互いの距離を縮めていき

日が暮れ始めた頃……

「なぁ、この街の外れにさ、夕陽が綺麗に見える丘があんだけどさ…行ってみない?」

どうやらライカからこの状況を動かそうとしているみたいだ

「ホントに?連れてって!」

シルヴィアははしゃいで見せる

「夕陽の綺麗な丘って…昨日ライカがナンパしていた時に言っていた所かしら?」

「って言うのはライカの場合口実じゃないのか?」

「どういう事ですか?」

おっと…冗談のつもりだったけどセレンが喰いついて来ちまったな……

「ラルク!」

うわぁ…姐さんスゲぇこっち睨んでるよ……

「ラルクぅ~どういう事ぉ~?」

これ以上喰いついてくんじゃねぇメリッサ!!

「あ、あれだよ…なんか相手の事ビックリさせようとしてんじゃねぇの…?」

「そういう事ですか、ライカ素敵ですねぇ…!」

「そ、そうだな……ライカ…そういうとこも男前だよな…?俺も見習わないとなぁ……」

「なぁ~んだ…ラルクつまんなぁい」

俺が考えてる事そんままセレンに言ったらうちの姐さんに何されるかわかんねぇだろうが…!


そんな会話をしている内にライカの言っていた街の外れの丘に来た

確かにライカが女性を誘うだけの事はある

見晴らしがよく風が気持ちよく吹いていて

人がちょうど2人座れる位の平らな形をした岩がある

「見晴らしいいわね…」

シルヴィアはライカに嬉しそうな顔を見せる

「夕陽が沈む頃にはもっと綺麗だぜ?」

ライカはシルヴィアを平らな岩の上に座らせる

「あのさ……」

2人の光景を眺めていたメリッサが呟く

「どうした?」

「ホントはシルヴィア君が言ってた事の意味、分かってたんだ…ライカの恋人はアタシの自称なんじゃないかってさ…」

メリッサの声の調子はいつに無く真剣だった

「そんな事ないですよ!ライカはきっとメリッサの事…!」

「ありがとセレン、でもあれが何よりの証拠でしょ?」

メリッサが指差す方向には

ライカとシルヴィアのお互いが沈黙の内に見つめ合っている

これから2人がしようとする事は…

全員にはもう分かっている

「アルト!止めないとっ…!!」

ライカとシルヴィアの本当の気持ちに直面したセレンはアルトに助けを求める

「セレン様、これは確かに悪ふざけから始まった事かもしれませんがメリッサもライカの気持ちを確かめたいと思っている筈です…」

メリッサは覚悟が決まっているのかゆっくり頷いた

「メリッサ、本当にいいのか?」

「うん、アタシなんかライカからしたら恋愛対象にも入らない子供だし、ライカにはもっとお似合いな素敵な人がいるでしょ…?だからアタシはライカのそばに居れるだけでいいんだ……」

セレンは何も言い返せなかった

叶わぬ想い、相手の幸せを願うライカに対するメリッサの愛…

そんな言葉を心の中で反芻しながら

ライカとシルヴィアの近づいてゆく2人の唇をラルクは見つめていた

そして、2人の唇と夕陽が重なる時……

「ったく…たまには面白い事考えんじゃねぇの?」

ライカは唇をシルヴィアの唇に触れる寸前で笑みを浮かべた

「え?どういう事ですか!?」

セレンが物陰に背を預けながら言う

「ラルク達も出てきたらどうですか?」

なぜかシルヴィアにも呼ばれラルク達は仕方なく物陰から出て行く

「バレてたっていう事…?」

まさかバレてたとは…

作戦は完璧だったはずだろ?

「いつから分かってたんだよ?それからシルヴィアもバレてるなら早いとこ言ってくれよ」

「フフッ…最初からバレてたわよ?面白そうだったから最後までライカに協力しちゃった……正確に言うと、バレていたのはナンパをしていたライカを見てこの話しを持ち出した頃、からですね…」

?…でもライカどうやって知ったんだ?

「どうしてライカがその事を…酒場にいた時ですか…?」

「だぁってさ、俺が女の子ナンパしてた時その話ししてたじゃん?まぁ、シルヴィアちゃんの変装はお見事だったけどな…」

ライカは後ろからシルヴィアの淡い桜色の頬を手のひらで挟む

「あの時は私と話していただろう?」

「周りの様子を注意して見るのも俺の仕事よ?」

完全にラルクにやられた…

「まぁ俺も楽しかったし合格点でないの?」

悔しいが俺達の負けだな…

ライカの方が一枚上手だったな

「もぉ~…ビックリしましたよ~ライカがシルヴィアとキスなんて…」

セレンは顔を紅くしながらその場にへたり込む

「ちっと俺もドキドキだったけどな……」

ライカはヘラヘラ笑いながらメリッサの前に立つ

少しの、瞬き程の沈黙が2人の間に流れる

「……ライカ…ホントの…気持ち…教えてよ…」

メリッサは眼を潤ませながら俯く

「ホントの気持ち?…そーだなぁ…」

ライカは身を屈めて震えるメリッサの肩を抱く

「…え?……ちょ、ちょっとライカ…?!」

ライカが眼を閉じ唇を近づけるのに戸惑いながらも

最終的にはメリッサも眼を閉じライカの気持ちに答える

眼を閉じた時右眼から一筋涙が零れ

その場にいた全員が2人に祝福の笑みを送る

そして、2人の唇が重なろうとした時………………

「………キスはもうちょっと、お預けだな……」

ライカは唇をメリッサの耳元に持っていき優しく囁き

彼女の頭を優しく撫で唇を耳から離す

「お!今出てる夕陽が一番綺麗なんじゃねぇの?」

ライカはそう言って彼方の山を朱に染める夕陽を仰いだ

「綺麗ですねぇ…」

「とりあえず一件落着か…?」

「一応解決ですね」

「逆に鼻をあかされた結果になったわね…」

「まぁまぁ、そういうのは言いっこなしって事で…」

心が洗われるような夕陽には似合わない台詞を言いながら

ラルク達は夕陽が黄昏時の舞台から降りるまで眺めていた


ーそして翌日ー

「君を見ていたらさ……」

「コラぁー!ライカぁー!」

「本当にあれでいいんでしょうか?あの2人…」

「いんじゃねぇの?メリッサ、幸せそうな顔してるしさ…」

「片思いの恋…ですか……理解し難いですね」

「あら、片思いの恋も悪く無いものよ?」

ラルク達はしばらく2人の微笑ましい痴話ケンカを眺めていた


ライカ、アタシ待ってるからね…

いつかもっとアタシが大きくなったら…

そしたら…アタシと………


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