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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
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第6章 ーForebodingー

「おいライカ、本当にここで合ってるのか?」

昼頃にラルク達は王都レギオンを出て

月が傾き始めた頃アルカナ城に予定より早く到着した

しかし、人影が全く見当たらない

闇夜に隠れているせいだからなのだろうか

「報告だとここにセレンが連れて来られたんだと」

性格のせいかライカの発言はどうも信憑性に欠ける

「ラルク…早く来て…じゃないと私はハーロットに…」

背中の方から細い声が聞こえてきた

「メリッサ似てねぇぞ…っていうか、ハーロットに何だ?」

メリッサがセレンの声真似をしていただけだ

似てはないが…

「あれぇ?ラルク知らないのぉ~?大鴉の首領のハーロットってライカ並に女好きなんだよぉ、だから急がないと大変な事になるかもよぉ?プププゥッ…」

メリッサは指先を口元に当て悪戯な笑みを浮かべる

「そりゃ気をつけないとな…」

ラルクは先に行ったシルヴィアとグレンを追い始める

「だからぁ、俺は博愛主義だっての!」

ライカもラルク達の後を追っていった


ラルク達がアルカナ城内に侵入してから4分の1刻程が経ったが

セレンの姿どころか敵すら見当たらない

「ここが最後の部屋だな…」

城内をしらみつぶしにあたって行った結果

城の最上階の大きな扉の前に来た

「ラルク、随分余裕の無い顔してるな…」

グレンに図星を突かれた

やはり親というものには子供の少しの変化も分かってしまうのだろうか

「大丈夫だ…」

本当は大丈夫ではないがそう強がった

グレンはラルクの不安を表に出さずに受け止めながら眼の前の扉を開けた

扉を開けると、その奥には大広間が広がり

1人の少女が2人の男に挟まれて立っていた

「セレン!?」

ラルクが思わず叫ぶと彼女はこちらに気づいた

「みんな逃げて!罠です!!」

一瞬セレンがなぜそう叫んだのかわからなかった

だが、セレンの左側に立つ背が高く

ライカにも劣らない端正な顔つきの男が指を鳴らした事でやっと意味が分かった

一気に部屋の中に黒い鎧を身につけた武装した男達がなだれ込んで来た

「おいおいハーロット…離反した黒金騎士団と手ぇ組むって、冗談が過ぎるぜ」

黒金に囲まれたラルク達はすぐに武器を構えたが

ライカだけはハーロットと読んだ黒髪の端正な顔の男を睨む

「これはこれは、ガルシア王の狗のライカ君じゃないか?今日は彼女とお友達もお連れで…」

ハーロットはその切れ長の眼に皮肉の笑みを浮かべる

「セルシウス、お前も謀反の一端をになっていたとはな…」

グレンはセレンの右側に立つ

焔のような短髪と黒の瞳に体を深淵の闇のような鎧に身を包んだ男をそう呼んだ

だが、黒焔のセルシウスはその黒焔の名とは相対する氷のような視線をグレンに向けただけだった

「ハーロット、テメェどういうつもりでこんな事した!?」

ライカの眼つきが今まで見た事無いくらい鋭くなる

「そんな事君達がしってどうなるって言うんだい?だけどひとつ教えておこうかな…僕にとってガルシア王とそれに与する黒獅子共が邪魔になったんだよ、勿論君もね…」

ハーロットは艶のある前髪を手で掻き上げる

「だからってセレンに手を出すのは筋違いでしょ!」

メリッサが食ってかかる

「筋違い?ところが案外そうでもないんだよ可愛いお嬢さん…しかし、大人には大人の事情があるんだよ、わかるかい?」

ハーロットはメリッサに挑発するような調子で言う

「利害の一致ですか…セレンを謀反勢力に引き渡し、ガルシア国内に入る手引きをする見返りとして国家を潰す協力を謀反軍から得るという寸法ですか…なんともお得な発想ですね」

シルヴィアの推察にハーロットは手を叩いた

「さすがだねぇ察しがいい、その歳の割には…という事で僕は失礼するよ。本当はこのお姫様を連れて行きたかったけど契約だからね」

ハーロットは窓から飛び降りていった

「待ちやがれハーロットォ!!」

ライカが窓から飛び降りたハーロットを追いかけようとしたが黒金に行く手を阻まれた

そして、ラルク達とセルシウス率いる黒金騎士団がその場に残った

「さて、この状況をどう乗り切るかだ…」

グレンは黒い鎧達の後ろに立つ黒焔の名を冠する男を睨んだ

「いい機会だ…信託の剣団長グレン、貴様に一騎討ちを申し込む。俺に勝てばセレン様を開放してやろう」

セルシウスは兵たちの間から進み出てくる

「グレンさんダメです!私に構わないで!!」

セレンがグレンに向かって叫ぶが

多分彼の耳には届いていないだろう

「…いいだろう、お前がどれだけ成長したのか見るのも悪くない」

グレンは口元に笑みを浮かべる

「親父…!!」

「ラルク、昨日言った事を忘れたか…?」

止めようとしたが、グレンの言葉に何も言い返せなかった

「死ぬなよ…」

グレンに限ってそんな事はない筈だが

こんな言葉が出てしまったのは

あのセルシウスという男に胃を締め付けられるような異様な雰囲気を感じたからだ

「お前達はこの一騎討ちが邪魔されぬよう残りの者を始末しろ!」

セルシウスが横に手を振ると

ラルク達とグレンは敵によって大きく隔てられた

「それでは始めよう…」

その声と同時に戦闘が始まった

グレンとセルシウスが物凄い音と剣がぶつかる事で生まれる火花をたてる

そして、ラルク達と囚われているセレンの間にいる30程の黒金も襲いかかってくる

「ラルク、僕とライカで突破口を開きます、メリッサはラルクの後ろについてセレンの救出を急いで下さい」

「わかった!ラルク、ちゃんとまもってね!?」

「あ、あぁ…」

ラルクはこの戦場の威圧感に呑まれ生返事しか出来なかった

柄に手を掛けるが重い

前を見るとシルヴィアが自分のために突破口を開くために次々と敵を肉塊へと変えていっている

その様相はラルクの手を震えさせ、更に柄を重くさせる

「ラルク!危ないっ!!」

メリッサの叫びに急いで前方を確認すると敵がラルクに向かって剣を振りかぶっている

次の瞬間ラルクは抜剣しながら横にステップし敵のわき腹を一閃する

ラルクの斬り裂いたわき腹からは血が勢いよく吹き出し

黒金の男は崩れるように倒れた

気づけば悲しくも剣を振る時の柄の重さは無いに等しかった

無意識だった、心の動揺もなかった…

日頃の訓練の成果がこんな形で思い返されるなんて思ってもみなかった


そこから気がつくと

ラルクは息を切らし体中に返り血を浴び

セレンとラルクの間に立ちはだかる黒金は最後の1人となった

最後の1人に向け剣を構える

相手も同様に構える

もうラルクには何が何だか分からなくなっていた

この戦いだけで幾人の血で自分の手を濡らして来ただろう

考えている余裕もない

ただ眼の前に立ちはだかる敵を一刻も早く斬り捨てる

今のラルクにはそれが全てだった

向かった黒金も先に死んで行った仲間の亡骸を見ようともせず

たった1人でも臆する様子はない

ただ与えられた任務を遂行するために動かされる駒のようだった

だが、最後の1人もラルクが難なく斬り捨てる

そして、その先に辿り着いた汚れのない少女を見ると

戦っている相手を見るために狭まっていた視界が拡がっていくような気がした

セレンの清らかさで視界が拡がった事で気づいた

自分の体が大量の返り血に染まっている事に

それに気づかされたラルクの膝から力が抜けていきその場に膝をついた

「ラルク!?」

心配したセレンがラルクに駆け寄ろうとしたが

ラルクは血に濡れた手を出しセレンを制止させた

今彼女を血に汚れた理性が戻りきってない自分に触れさせてしまったら

彼女を清らかな体、心までもこの両手の血で汚してしまうような気がしたから

なんとかラルクは心と共に乱れる呼吸を調え

やっと立ち上がりグレンとセルシウスの方を見たが

グレンはセルシウスの前に血を流し息を切らしながら跪いていた

だが、一騎討ちだから手は出せない

「こんな形で貴様と戦う事になるのならもっと早くに戦っておくべきだったな…時というのは間々ならないものだな…」

セルシウスは黒の冷酷な瞳に寂しさを浮かべグレンに歩み寄る

「確かに…その通りだな…時を経てお前もロザリアも考えが変わったようだな…」

そして、セルシウスは剣の届く距離で振りかぶる

「やめろぉ!!」

一騎討ちに割って入れないラルクの叫びも虚しく剣は振り下ろされる

だが、ラルクの叫びは剣がぶつかり合う音にかき消された

「やはりその右腕…」

ラルクは一瞬グレンが斬られたと思ったが

グレンはセルシウスの剣をどうやってか分からないが受け止めていた

「なかなか…太刀筋が良くなったな…」

グレンはフラつきながら後ろにさがる

「さぁ、アレを解いて貰おう…」

血を吐きひざまずくグレンにセルシウスは剣先を向ける

「それは出来ない…ロザリアやお前は方法がそれしかないと思っているだろうが…あれは俺達の…過ちだ…」

グレンは呼吸をみだしながら声を振り絞る

聞いているラルク達は話しが全く読めない

「仕方ない…もう話す事はない…」

セルシウスはまた寂し気な表情を浮かべ再びトドメを刺すべく剣を振りかぶる

まずい、このままではグレンが…!

止めなければ

しかし、その気持ちとは裏腹に恐怖の鎖がラルク体を締め付けて動く事が出来ない

恐らく他の仲間もそうだろう

この2人の猛者の戦いの中に入って行こうという気も起こらない

今ラルクの体を締め付けている鎖の名は恐怖

あの2人の激突の中に身を投じれば身の安全は補償出来ない

「ダメ!!」

空間に少女の声がこだます

そして、ラルクの視界には

セレンが今正に身を斬られようとしているグレンに走っていく姿が映った

次の瞬間にはラルクが自分でも信じられない程の速さでセレンのもとに駆け出し

セレンとセルシウスの間に体を入れた

それを見て一瞬セルシウスの動きが止まったが

剣を振り下ろした

ラルクはギリギリのタイミングで剣を受け止めるが

セルシウスの予想以上の力に押され

自分の剣の刃が顔の皮膚を裂き

そして剣が飛ばされラルクは大きく体を投げ出された

「セルシウス辞めて!!あなた達の敵は私でしょう!?だったら私を殺して!!」

両手を広げグレンを庇う様に立ち

セレンは泣きそうな声で叫ぶ

「セレン様、例え貴女と言えど邪魔をするなら容赦はしません…」

セレンの声は虚しくもセルシウスの心に届く前に消えていった

そして、セルシウスは今度こそトドメを刺すために剣を脇に引き寄せる

セレンはセルシウスの冷酷さと剣を振り下ろされる恐怖に眼をギュウッと瞑る

その光景にラルクはただ届かないと分かっていながらも手を伸ばす事しか出来なかった

血の気が引くとは正にこの事を言うのだろう

体が冷たくなっていき、力が入らない

そんな感覚を味わっている中

セレンの胸めがけて剣の切っ先が迫り来る

だが、その時グレンは最後の力を振り絞り

セレンの体を右手で突き飛ばし

セレンが受ける筈だった刃で自分の身を貫かれる

「残念だ……」

セルシウスが鮮血に染まった剣をグレンの体から引き抜きながら

そう呟くと同時にグレンは今までの力を全て使い果たした様に崩れ落ちた




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