第5章 ーwhen it comes to Courage!ー
その路地裏は奥に進めば進む程暗くなりラルクは行き止まりに突き当たったが
さっき見た人影はなかった
やはり勘違いだったか…
そう思って踵を返そうとした時、背後から石畳を靴底で叩く音がした
反射的に振り返ると通りの方から僅かに差し込む明るさで2人の男がラルクに近づいているのが確認できた
よく見ると2人の男はその手に短剣を持っている
道が塞がれてしまった
かと言ってあの様子じゃ通して下さいで素直に通してくれそうにもない
ラルクは浅くなる呼吸を抑えながら剣を抜く
剣を持ってきたのが果たして正しかったのかどうか疑問に思いながら
そして、2人の男はラルクに向かって走りだす
対するラルクは場所が狭いせいかラルクの持つ普通の長さの剣では思う様に振れずにいた
一方、短剣の男達は道の狭さなど感じさせないように短剣を振り回す
ラルクが突きを出そうにも小回りの効く短剣が相手だと剣を引いている間に刺されてしまうと思い出せずに
その短剣の応酬に防戦一方になり
ついには背中が行き止まりの壁についてしまった
前に出てきた片方の男がラルクの体を貫こうと短剣を引き寄せる
ラルクの体に足元から嫌な悪寒が走る
しかし、その瞬間後ろにいた男が短くうめき声をあげてその場に崩れた
突然の出来事に剣を引き寄せた前の男は後ろを一瞬確認した
ラルクはその一瞬を見逃がさず男の体を剣でひと突きにした
一応助かったが、ラルクにも何が起きたのか分からずに前方を確認すると
あのマントの男がゆっくりと片刃の剣を手に持った鞘に収めていた
正面から見てもフードを被っていてその顔は確認出来なかった
「お前一体誰なんだよ…?」
思わずそんな台詞が口からでたが
男はラルクの問に対して応えず黙したままただ立っていた
「ラルク!」
自分を呼ぶ声が路地裏の入り口から聞こえてくる
これら恐らくアルトの声だ
こちらに向けられた足音からすると他の連中も一緒だろう
それをラルクと同様に聞いていた男はラルクの方に駆け出した
仲間に気を取られている内に男はラルクに軽くぶつかり壁を蹴って昇り去っていった
「ラルク、あの男…!?」
アルト達が駆け寄り聞いてくる
「酒場にいた奴だ…」
ラルクはマントの男と自分が殺した2人の遺体に眼を落とす
「すごい…死んでる筈なのに斬った所から血がでてないよ?」
メリッサが男が殺した遺体を調べながら言う
確かに自分の殺した男からは大量の血が流れ雨に濡れた雨で出来た水溜りを真っ赤に染めているが
男の殺した遺体からは血が流れていない
「傷を作らない程の達人の技なんでしょうね、それとどうやらこの男達が誘拐犯の可能性が高いようです。ラルクを襲っていましたし…」
そう言いながらシルヴィアはラルクの胸元に手を伸ばす
「…?」
ラルクはシルヴィアの白くて細い指先が服の間に挟まれた紙きれを摘まんだ時ようやく気づいた
「この事にはこれ以上関わるな、早くこの町を去れ…ですって」
シルヴィアが男が残していった紙切れの内容を読みあげる
「そう言われちゃうと気になるなぁ…」
メリッサは好奇心をくすぐられ悪戯な笑みを浮かべる
「こんな事書くなんて探って下さいって言ってるようなもんじゃん」
ライカは鼻で笑う
「でも逃げられちゃいましたね?」
「やはり岩窟島を調べるべきでしょうか…?」
シルヴィアは皆の反応を伺う
「いや…でもあれだろ?こんな酷い雨じゃ船だせないし、シルヴィア岩窟島関係ないって言ってなかったっけ?」
「先程この街の船乗りに聞いてみた所、岩窟島に船を出してくれとマントの男が来たそうです。だから、岩窟島を調べてみる価値はありそうですね…」
ライカを無視してシルヴィアが言う
「ハイハーイ!私シルヴィア君の意見に賛成!」
「ちょっと勝手に決めちゃ…!」
アルトが止めに入ろうとするが
「怖いんですか?」
「こ、怖くなんかない!いいわ、行きましょう!」
アルトは強がりながら承諾する
「あ…俺宿に忘れ物した…」
「やったぁ!みんなで肝試しだねっ!!」
帰ろうとしたライカをメリッサが腕にしがみついて止める
「私少し怖いです…」
「俺、コイツらで肝試しする事の方がなんか恐いけどな…」




