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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
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第3章 ーShare of Conflictー

宿に戻りラルク達は休む事にした

ラルクはこの街に長居をすれば敵に捕まるのではないかと心配したが

シルヴィアとライカが領事館に手配書が送られていないから大丈夫だと言うから

その言葉を信じ一晩エルクに留まることにした


同じ部屋のシルヴィアが寝た頃

ラルクは眼が冴えて眠れなかった

ベッドの上で仰向けになっていると廊下から足音が聞こえる

敵か?深夜だから可能性は高い

心臓が段々と高鳴っていく

ラルクは剣をとり物音を立てないように扉を小さく開け廊下を覗く

そこにはアルトが壁にもたれかかっていた

「アルトか…」

ラルクは少しホッとした

「ラルクか、眠れないのか?」

アルトもラルクに気づき近づいてくる

「アルトこそどうしたんだ?」

「少し眠れないだけ…ねぇ、少し話しをしない?」

ラルクに持ちかけ2人は宿を後にした


「2人でこうして話しをするのは久しぶりね…」

夜の人気のない街を歩きながらアルトが言う

「どうしたんだよ改まって…」

「フフッ…なんでもない」

笑みをラルクに向けた彼女の顔は月明かりに照らされて美しかった

「どうだ?騎士団の生活ってのは」

ラルクは聞いた

幼馴染みとして今まで共に同じ時間を過ごしてきた彼女はその内4年間を自分達とは違う時間を過ごしてきた

だから、彼女がその時間で何を見てきたのか知りたかった

「そうねぇ…毎日忙しいわ、次から次へと事件が起きて、毎日それの対処に追われて…それに私は最年少の18歳で親衛隊長に就任したから周りからはあまりよく思われなかったわ…」

アルトは笑顔だったが彼女の紅の瞳は笑っていなかった

遠くへ、彼女の過去へとその瞳を向けているのだろう

「そっか…悪い事聞いちまったな…」

「ううん、いいの」


話している内に2人は橋の上に来ていた

アルトは橋の柵に肘をつき水面に映る三日月を見つめながら

「そういえば私が落ち込んでいたり疲れていたりするといつもこんな風にセレン様が私室に招いてくれたな…」

「セレンとはいつ知りあったんだ?」

ラルクはアルトの隣に並び柵にもたれかかる

「私が親衛隊に配属されて間もない頃セレン様の私室を1人で警備していたら部屋の中から泣き声がきこえたんだ…どうやらセレン様は悲しい夢を見ていたらしい、それで私が声をかけたのが始まりだった」

「アルト結構お姫様相手に大胆な事すんのな」

笑いながらアルトを冷やかす

「う、うるさい…!ほっとけないだろう…」

アルトの頬が瞳と同じ色になり眼を斜め下に逸らす

「ま、アルトが放っておかなかったおかげで今こうして一緒に旅が出来てんだよな」

「そう思うのは少し不謹慎だけどな…」

アルトは一応ラルクに釘を刺しておく

「それじゃそろそろ帰るか?」

ラルクは踵を返し歩き出す

「ラルク…」

アルトの声だけが背中を追いかけてきてラルクは歩みを止めた

「セレン様を共に守ってくれ…今のセレン様は私達しか守ってあげられないから…」

ラルクは振り返らずに聞いていた

「なら早く帰ろうぜ、お姫様がまた悲しい夢でも見て泣いてるかもしんねぇ」

ラルクはまた歩き出しその背中を今度はアルト自身が追いかけていった



次の日の朝

ラルクが眼を覚まし体を起こすと部屋には誰もいない

アクビを噛み殺しながら廊下にでると皆が揃っていた

しかし、ライカがいない

「よぉラルク、やっとお目覚めかい?」

と後ろからやけに軽い声がした

「ライカ、どこに行ってたんだ?」

ラルクはてっきりライカの事だからフラフラていなくなっているのかと思っていた

予想外だ

「情報収集にな、あんた達をガルシアに連れていく約束したしな」

ライカが昨日した約束を憶えていたこれも予想外だ

「それで、国境周辺はやはりダメですか?」

シルヴィアが先を読み質問する

「あぁ、お察しの通り国境周辺では大規模な検問が行われてるとよ、まず通るのは不可能て考えた方がいい」

それでは、とアルト

「南西に迂回しエルノア峠を超えるしかないな…」

少し歯切れが悪そうだと察したラルクは

「なんか通れない理由でもあるのか?」

そう聞くとアルトが答えるよりも速く

「あそこは確かにほとんど人がとおらないし検問もきっと敷かれてないけど…出るんだよ…」

ライカが答えた

「ま、まさか…オバケですか?!」

「んなわけないだろ…どうせ山賊とかだろ?」

「そゆこと、だからあんま通りたくないんだよ…」

「まぁでも道はそれしかないから行くしかないだろ?」

ラルクがまとめると渋々ライカが賛成する

「何も無けりゃいんだけどねぇ…」

ライカは先に宿を出て行ったラルク達を追っていった


街を出て暫くシルヴィアは後ろを向き口を開いた

「ところでライカ、あなたは戦闘に加わるんですか?」

するとライカはヘラヘラ笑いながら

「俺?言ったでしょ、俺ただの情報屋だって、戦いは傭兵さん達に任せますよ」

「ただの情報屋…ですか」

シルヴィアはいぶかしげに呟く

「そうそう、ただの情報屋だってぇ」

ライカは調子を合わせる

「怪しい事この上ないがな…」

アルトもいぶかしむ

そんなやりとりを見ていながらもラルクはやはり昨日のセレンの事が気になっていた

一連の出来事があった後、彼女は一言も発さず宿に戻り眠りについた

昨夜ああは言ったが涙を浮かべている少女に慰めの言葉ひとつもかけてやれない自分が情けなかった

そう思いを巡らせていると

「ラルク…」

と後ろから控えめなセレンの声がした

「昨日は心配をかけてごめんなさい…お母様やエルシアの事はシリウス達がきっとなんとかしてくれると思います、今はガルシア王のもとに行くのが先決ですね…」

そうは言っているが声色は暗い

「あんま無理しないで辛かったらアルトとかシルヴィアに言うんだぞ?…ところでよく話しにでるエルシアと今名前が出たシリウスってのは誰なんだ?」

一応話題を変えてみた、今は少しでも話しかけて考えこませないようにするのが大切だ

「エルシアはルシア王国議会議長で議会では強い発言力をもち聡明でいつも国民の声に耳を傾ける優しい人です、それと私の乳母でもあります」

「要はルシア女王の次に偉い奴って事か?んでシリウスってのは?」

すると今度はアルトが2人に歩みより

「シリウス将軍はルシアの神将騎で神将騎団隊長首席だ、彼は王国一の騎士と言われエルシア様の腹心だ」

「ちょっと待ってくれ、そもそも神将騎団ってなんだ?」

すると次はシルヴィア

「神将騎団とは男性で組織される黒金騎士だん女性の白銀騎士団の両騎士団から2名ずつ隊長を任命し組織され、各人に二つ名が与えられます」

シルヴィアは4本指を立て一本ずつ折り込んでいく

「まずは黒金、神将騎団隊長首席神剣のシリウス、黒焔のセルシウス、白銀騎士団隊長首席錦狼のクラウディア、最後に紅蓮のスカーレットの四名です

「あんま二つ名じゃ想像つかないな…」

ラルクが小首を傾げる横で

「いやぁ、錦狼って言うくらいだからさぞかし綺麗なんだろうなぁ…」

「はい、クラウディアもエルシアも2人ともとても綺麗ですよ」

セレンが言うとライカの眼が輝く

「マジで!?」

「セレン様、ライカに余計な事を言ってはいけません」

セレンはテンションの上がるライカを見てアルトに苦笑いを返す



その日の夜

皆が寝静まった頃ラルクは見張りを兼ねて1人月明かりを頼りに夜空を眺めていた

昼間の少し幸せな気分てはうってかわってなぜか今は不安な気分だ

今までの出来事を思い出していた、でも頭を巡るのは人を斬った時の事ばかり

骨肉を剣で断つ時の感触

死に際の形相

そして何より罪の意識

考えると奪った命がすべて自分の両肩にのしかかっているみたいで

心が重い

ラルクは両手で顔を覆いそこから頭の銀髪を撫でた

あとラルクにはもうひとつ不安がある、そるは…

「見張りご苦労さん!ってなぁに黄昏てんだよ?」

その軽い声にラルクはハッとした

自分の考えている事を悟られたくない、ことに声の主はライカだからだ

しかし、ライカと話しているとあまり心の距離というのを感じない

不思議だ

「どこの世界に独りぼっちでニヤついてる奴がいるんだよ…?」

「そりゃそうだ、でも俺にはなんか深刻そうな顔に見えたぜ?何考えてるか当ててやろうか?」

「好きにしろよ…女の事考えてるとかそういうのはなしだからな」

ラルクはライカの提案に当たる筈がないと思いながら乗った


ライカはラルクの隣に座り

「…戦うのが怖いんだろ?」

ライカの声の調子が低く変わった

「………」

何も言えない、図星だ

「殺すのが怖いんだろ?」

「なんでわかった?」

「街から出てここにくるまでの間姫様見るか敵が出て来そうな場所見て挙動ってたからな、それに領事館に入った時俺が衛兵を殺すかどうか聞いた時真っ先に反応したしな…傭兵なのに緊張の仕方が異常じゃないか?」

ライカには全て分かっていた、自分の無意識の怯えまで

「…なぁ、ライカは人を殺した事があるのか?」

こんな質問をラルクはしてみた

「あるさ」

ためらわずにライカは答えた

「依頼の途中にそういう場面があってな…ま、殺した事には変わりないわな」

「怖くないのか?殺すのが…」

「俺は殺すより殺される方が怖いな、死にたくねぇし、それに迷ってたらこっちが殺されちまう」

「割り切ってるのか…?」

さらに突き詰めて聞いてみる

「大体はな…それよかお前んとこの騎士の姉ちゃんや魔導士少年の方が割り切れてるんじゃないの?」

「俺は…」

ラルクはうつむいた

割り切れるはずがない、人の命だ…

「ま、あんま考え過ぎんなよ少年!いずれ答えが出んだろ?」

と先程とはうってかわって明るい声にもどる

「かわいい姫様の手ェとって守ってやんだろ?うらやましいねぇっ!!」

ライカはラルクの背中を乱暴に叩く

「そっ…そんなんじゃねぇって!?」

顔を紅く染めながらライカの手を払う

「そうかい?お似合いだて思うけどねぇ…」

「バカ言ってねぇで早く寝ろよ、寝坊したら置いてくからな!!」

「ハイハイ!じゃラルクも寝坊すんなよ~」

とだけ言いライカは横になった

「守るために割り切る…か…」

ラルクはそう呟き夜の静けさに紛れていった


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