外伝 ーthe Best Friends have a Quarrelingー Part4
「なるほどね、資格があれば傭兵としての信用が上がって仕事も任されやすくなるか、信用商売だしな」
立場上、戦いを生業とする者同士ライカはシルヴィアの理屈を理解出来るようだ
「はい、少しでもグレンさんの助けになればと思ってのことでした…しかし、いざ依頼主に仕事の内容の確認のために会いに行ってみると、会うなり僕の幼さを見て誰も僕に仕事を任せてはくれませんでした、それどころかこんな子供が依頼を受けに来るのかと怒り出す人もいました」
シルヴィアは少し紅の目線を下に向けた
「私もアルトがシルヴィアを連れて来た時には驚いてしまいました、けど…」
「シルヴィア君の魔術を一回見たらビックリしちゃったよ!」
メリッサはセレンの後に続けた
決してメリッサが誇張して表現したわけではなく
彼の魔術の腕前はガルシア、ルシア両国の将軍格も一目置く程であることは確かだ
「けど、その多くは幼過ぎたシルヴィアには見向きもしなかったわけだな?」
シルヴィアは反論することなくライカを見上げて頷いた
「それが続いたら自信を失ってしまいますよね…?」
「えぇ、きっと大人には僕は必要とされていないのでしょうね」
シルヴィアはそんな哀しいことを表情も変えずに淡々と言い放った
「シルヴィア君はそんなこと…!」
「でも…!」
メリッサが反論しにかかるのを遮るようにシルヴィアが発した
「大人達や周りの人間が僕を煙たがる中でグレンさんは僕を認めてくれてラルク達だけは僕が側に居ることを許してくれました…」
シルヴィアがそう話した時、彼のいつも感情を見せない紅の瞳が微かに揺らめいたように見えた
「そっか、ラルク達ももしかしたらシルヴィアみたいな思いしたから気持ちが分かるのかもな…」
ライカはポンとシルヴィアの背中に優しく触れた
「だから、僕が役立たずだったり子供のままだったら僕はラルクの隣に居ることが出来なくなるかもしれません」
シルヴィアは長いまつ毛を持つ眼尻を下げる
シルヴィアにとっての自らが存在することを許される場所、それがラルク達だったのだ
「ねぇシルヴィア君?別にアタシ達はシルヴィア君が何か出来るから一緒にいるわけじゃないと思うよ?」
メリッサはシルヴィアの左側から彼の俯いて長い黒髪に隠された白い顔を覗き込む
「じゃあ、これからセレンをルシアまで送り届ける任務として僕達がこうして共に行動する状況をどう説明しますか?」
シルヴィアは顔を上げて切れ長の眼で3人を睨んだ
「確かに私達が一緒にいるのは偶然かもしれません。けど、私達の内で誰かが辛い想いをしていたら心配になっちゃいます」
「そうだぜ?極端な話し、シルヴィアが只の俺達の駒だったらシルヴィアの気持ちなんて俺達は知ったこっちゃねぇわけよ」
ライカの言葉は極論であったが言いたいことを表現するにはちょうど良かった
「ですが…」
段々とシルヴィアが反論する間隔が短くなってきたその時
「理由なんてねぇよ、俺はシルヴィアと一緒にいたいから一緒にいんだ」
シルヴィア達の背後からよく通る声が聞こえてきた
「いちいち全てに理由を探そうとしても見つかりっこないわよ?シルヴィア」




