外伝 ーthe Best Friends have a Quarrelingー Part1
「ふぅ〜気持ちよかった〜!」
風呂上りのまだ湯気が立ち昇る茶色の濡れた髪をメリッサはタオルでバサバサと乱暴に拭きながらアルトとセレンと一緒に宿の廊下を歩く
「初めて入りましたけど温泉っていいですねぇ〜」
「お肌がツルツルになりましたねセレン様」
髪の長いアルトとセレンはタオルを頭にターバンのように巻いている
3人とも湯上りのせいか頬が艶やかに桜色に染まっている。
「ルシアには温泉ってないの?」
「そうね、ガルシアみたいに火山がないからフエンテのような街を興せるくらいの数の温泉はないわね」
そう、今アルトの言ったようにラルク達は旅と日々の戦いの疲れを癒すために
次の目的地の道中にあったガルシア有数の温泉街フエンテに立ち寄り温泉を満喫している
「温泉があるって羨ましいですね〜」
ほや〜ってした感じで言うところからセレンはもう既に温泉の魅力の虜になってしまったようだ
「おっ!湯上り美人発見っ!」
セレン達の背後からライカの声がした
「あ、ライカ!ラルク達はまだ入ってるんですか?」
セレンとアルトの温泉で紅潮した頬を見て嬉しそうに軽やかな足取りでライカが近寄ってくる
「いや、2人ならまだ部屋にいると思うぜ?」
「ライカが女湯を覗きにいくのを止めにいったわけじゃなかったのね」
「えっ?じゃあアタシ達が入ってた時に感じてた視線って……?」
突然メリッサが何かを勘付いたかのように眼を見開いた
「ライカもしかして…覗いてたんですか……?」
セレンが両手を抱えるようにしてまるで忌むべきものを見るようにライカを見る
「見せつけてあげればよかったのでは?セレン様」
「そうだよ!セレンのむ…」
「わー!わー!わー!」
セレンが顔を真っ赤にして面白がるアルトとメリッサの前に出て話しを遮る
「そうそうそうそう、姫様のキレイな……っておい!今回は大人しく独り寂しく温泉を満喫してたよ」
「はぁーよかったです…」
セレンは大きなため息をついた
実際ライカは皆が部屋から浴場に向かう前に混浴の素晴らしさについて熱弁していた
とは言ったものの、その話しを真剣に聞く者はその場に誰1人いなかったが…
「それで、ラルクとシルヴィアはどうしたの?」
アルトが話しを結論にもっていこうとする
実はアルト達は一緒に部屋を出たわけではなくラルク達を後に残して浴場に向かったわけだ
「んー?なんか口ゲンカ始めちゃってたから置いてきちゃった」
ライカはヘラヘラっと言ってのけた
「え…?大丈夫でしょうか?」
セレンはライカから発せられなかった不穏な空気を敏感に感じとった
「珍しいね〜2人がケンカするなんて」
メリッサに関してはちょっと面白がっているようだ
もちろん、その興味は普段感情を激昂させることが決してないシルヴィアに向けてだ
「始まったか…」
アルトは深いため息をついて眉間に指を押し当てた
「おっ?もしかしてラルクとシルヴィアがど派手に殴り合うとか?」
「大変ですっ!とっ止めないと!?」
ライカが煽るのに対してセレンはオロオロと狼狽える
「あ、いえ…特にお互い手を出すわけではないのですが、仲直りするまでがなかなか長くて…」
アルトは言葉を濁しながら心底面倒そうに説明した
「ねちっこいのかな?2人とも」
「ん〜…とりあえず部屋に戻ってみよう、そうすれば分かるわ」
アルトはメリッサに苦笑いを向けて先頭を切って部屋に向かっていった




