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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
109/114

外伝 ーthe Knight at Restー Last Part

エルシアは桃色の潤んだ唇に笑みを浮かべ

シリウスの両脇の下から自分の細い腕を通し

エルシアがシリウスに抱きつく形となった

「何を…?」

そうシリウスが聞き返そうとした瞬間

彼の体は不意に前方に引っ張られていった

「ッ…!?!」

あまりにも急な出来事な上にまさかエルシアに体勢を崩されるとは思っておらずシリウスは踏みとどまる事が出来ずに

噴水の淵を越えて水面へと2人の体が投げだされる

しかし、シリウスは空中で着水する寸前に体を精一杯捻り

彼女が自分の下敷きにならないように自分と彼女の体位の上下を入れ替えた

次の瞬間にはシリウスの背丈の二倍程の水柱が立ち静かな城内に水が爆ぜる音が響く

「エルシア様っ!!」

着水と同時にシリウスは彼女の体を水の中から抱え上げる

「どういうおつもりですかエルシア様?!お戯れにも程が…!」

シリウスが彼女を抱えたまま噴水から出ると

シリウスの腕の中にいるエルシアは水に濡れて冷たくなった人差し指を彼の唇に当てて黙らせる

「ほら、ちゃんと貴方は私を守ってくれたわ…頼りになるわ…」

「エルシア様…」

シリウスはこの時初めてエルシアが自分が彼女にとって頼りになる存在だと

証明するために

わざと噴水へ道連れにしたのだと気づいた

「……まったく…この国の奥方にはいつも振り回されてばかりですね…」

シリウスはそう言いながら

エルシアの体を最初のように噴水の淵へと降ろす

「でも、そんな私達のワガママに付き合ってくれる貴方のような心の広い殿方がこの国にはたくさんいるわ……ね?」

エルシアは首を傾けて頬を緩ませる

「そう言っていただけるなら苦労が少し報われた心地です」

シリウスは彼女の顔にかかったマロンペースト色の髪をどける

「あら?少しだけなの?それは残念ね!」

気づくとお互いに笑いあっていた

こんなに長い時間笑ったのはいつ以来だろうか?

そういえば最近任務やら訓練やらで忙しく

まともにエルシア様達と話せていなかったな…

そんな事を思い出しながらシリウスは笑いを収め再び質問してみた

「話は変わりますが、今朝エルシア様は何に対してあのようにため息をつかれていたのですか?」

今の状況からするともしかしたら自分の思い過ごしかもしれないと思いながら聞いてみた

「…?あぁ~…あれはシリウスをどうやって元気付けようかと考えていたの。最近、貴方がとても忙しそうに見えたから…」

本当に思い過ごしだった

いや、むしろ心配されていたのは自分の方だった

「それで考えたの、何か食べ物もいいかと思ったけどたまにはこんな風に力の抜けるような悪戯もいいかなって…」

「えぇ、今全身の力が抜けましたよ…」

シリウスは苦笑いを浮かべたが内心たまにはこういうのも悪くないとも思った

「それと、今ようやくわかりました…なぜセリエ様が私をセレン様達の元へ向かわせ、セレン様達は私の相談に乗って下さり、グレイド様は私に夫婦円満の秘訣とここに向かうようにと言われたのか…」

自分は全て彼女達の手の平で踊らされていたのだ

だが、このひと時はそれでもいいのかもしれない

彼女達の手の平で踊れるならそれはそれで幸せだ

「楽しんでいただけたかしら?」

エルシアはシリウスにゆっくりと手を差し伸べる

「えぇ、普段とは違った不安や喜びに新鮮な胸の高鳴りを味わわせていただきました…」

シリウスはエルシアの前に跪き彼女の熱が戻り始めた手をとり立ち上がる

「ありがとうございます…我が麗しの君……」

2人は手をつないだまま中庭を城の中へと歩いていった



それから翌日

シリウスは見事に風邪を引いて数日間寝込み

エルシアは公務の合間にシリウスの看病をする事となり

城の中では「ルシアの神剣は風邪を引かない」

という都市伝説が崩れ去ったと両騎士団の間で噂になるのであった

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