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ーUntil the Daybreakー  作者: Lauro
序章 ーin the Duskー
105/114

外伝 ーthe Knight at Restー Part1

これは、ラルク達がセレンと出会う少し前の王宮でのある出来事…


「ふぅ…」

平和な時をゆっくりと刻むルシア王国王都アークの王宮で

柔らかな窓からの陽の光を受け淡いマロンペースト色の長い髪を輝かせる女性はため息を洩らす

「エルシア様、どうかされましたか?」

男の低く落ち着いた声の方に黄金色の瞳を向けると

そこにはエルシアとは対象的にがっしりとした体躯に

銀髪に所々毛先に紅を混じらせた男が密かに燃える焔のような瞳で彼女を見つめていた

「あ、シリウス。私に何か御用かしら?」

エルシアは不自然にも質問を質問で返しながら透き通るような白い頬に笑みを浮かべる

「いえ、エルシア様が珍しくため息をつかれているのが少し気になって…」

シリウスは人差し指で頬を掻きながら言う

「ヒドイわシリウスッ!私だって辛い時ぐらいあるの……っ!」

エルシアは顔を両手で覆ってシリウスに背を向け彼女の細い肩を震わせて見せる

「あ…いや!これは、その………!」

シリウスは彼女の肩に触れてなんとか弁解しようとする

「フフッ……ウ~ソ!」

エルシアはクスッと笑って振り返りシリウスの胸に手を置く

「エルシア様……」

シリウスはエルシアの悪戯に呆れた顔を見せる

彼女は公の場でこそ凛としていてどんな者からも認められる品格を持っているが

気心の知れている間柄では時にこういった小さな悪戯をする

「でもシリウス、貴方はいつも私をよく見ていてくれるのね…」

エルシアは突然唇にそんな言葉を浮かべた

「どうされたのですか?急に…」

シリウスが聞き返すと

エルシアはどことなく寂しげともとれぬ表情を浮かべた

「ううん、言ってみただけよ?それでは、私は公務に戻りますね」

そう言い残しエルシアはシリウスの前から去っていった

彼女が去った後には彼女から香る花のような甘い香りだけが漂っていた

シリウスはその香りの中で彼女の行方をただ見ていた

「女心とはわからないものですね、シリウス」

また女性の声が背中の方からシリウスの耳に届いた

「セリエ様…!」

振り返るとそこにはこの国を統べる者

女王セリエ=オルビス=ルシアの姿があった

シリウスは彼女に深々と頭を下げる

長い艶のある黒髪に純白の白い肌を包むのは

淡い水色の彼女の細い足を美しく見せるロングスカートに

肩口が切れて彼女の細い肩が露出する白のブラウス姿がセリエ女王の姿だった

「エルシアの様子が気になりますか?」

セリエは少し楽しんでいるかのように宝石のような水色の瞳に笑みを浮かべる

「はい…お恥ずかしい話しですが、私には時々彼女がわかりません…」

シリウスは紅の瞳を俯かせる

実際エルシアは聡明で誰に対しても慈しみや礼を失わない彼女でも

時に彼女が見せる物憂げな表情、思わせぶりな表情にはいつも右往左往させられてしまう

「あら、私達の神剣は剣の扱いは得意でも女心の扱いは苦手みたいね?」

セリエは悪戯な表情を浮かべながらシリウスの困り顔を覗き込む

「からかうのはお止め下さいセリエ様…」

シリウスは頭を掻きながら苦笑いを浮かべる

「でも、貴方だけじゃないわ、グレイドだってそうよ?この国の殿方はこの手の事には奥手みたいね」

シリウスは何も言い返せなかった

ルシア王国は女性に王権がある女系国家なだけあって苦笑いを浮かべるのはいつも男の方だ

「いつもは頼りになるのにこういう時は随分とかわいらしいのね」

「セリエ様…」

シリウスの男としての自尊心はもうズタズタだ

「そういえばシリウス?今日はこの後暇かしら?」

セリエはシリウスに対して小首を傾げた

「えぇ、今日は私の隊は休養としていますが…」

「なら、セレンの所へ行ってもらえるかしら?」

セリエは片眼を瞑りシリウスに対して手を合わせた

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