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文化祭

いよいよ文化祭!


1ヶ月はあっと言う間に過ぎていった。そして今日は待ちに待った文化祭。奏と恋はこの日のためにたくさん練習をしてきた。




「晴れてよかった」

恋は音楽室の窓から外を見て、嬉しそうに言う。6月になってから、ここ最近は、いまいちすっきりしない天気だったが、今日は晴天で、絶好の文化祭日和になった。

「そうですね。天気悪いとお客さん来ませんから…。やっぱり一生懸命練習したからたくさんの人に私たちの歌を聴いてほしいですし…」

「…奏、緊張してる?」

急に恋が真剣な声で話す。

本当は眠れないほど奏は緊張していたのだが

「…ちょっとだけ」

と答えた。ピアノをやっていたので、人前で何かを披露することは慣れているが、自分のせいで先輩とのステージがダメになるのが怖かったからだ。

「大丈夫。失敗とかおそれなくていいよ。楽しんで歌わないとお客さんも楽しんでくれないよ?それにさ、一年で一度だけのお祭りなんだから楽しまなくちゃ!」

まるで恋に心の中を見透かされているようだった。奏は先輩が言うように歌っている自分が楽しまなかったら、お客さんが楽しめるわけがないと納得した。

「…そっか。そうですよね!なんか緊張少し和らいだ気がします。ありがとうございます、恋先輩」

「いえいえ。じゃあそろそろ発声しようか」

「はい」




  ♪  ♪  ♪



2人のコンサートは音楽室で開催された。

本当は体育館や野外のステージでやりたいところだったが、人数が少なすぎることと音が響かないことを考慮したからだ。

コンサートは恋のピアノ演奏で始まった。お客さんは予想以上に来ていた。生徒だけでなく、保護者や中学生など様々な人が見に来ていて、恋の演奏に心を奪われていた。


演奏が終わると恋は聴衆に向かってあいさつをする。

「みなさんこんにちは。音楽部によるコンサートにご来場いただきありがとうございます。最初に私が弾きました曲は、私が作曲しました。いかがだったでしょうか?」

聴衆はお互いに先輩の曲の感想をささめきあったりしているようだった。「次の曲はアカペラの曲です。音の響きを楽しみながらお聞きください」

恋は奏を見て頷き、曲の最初の音をピアノで鳴らす。音楽室は静寂に包まれた。

恋が奏の隣に立つと、一緒に息を吸って歌い出す。

先輩の澄み切ったソプラノの声がいつもどおり音楽室に響き渡った。先輩の歌声がもっと美しくなるように、とアルトを担当する奏は恋の歌声に合わせて歌う。

クレシェンドで曲が段々と盛り上がっていく。ここは練習で上手く歌えなかったが、今日は上手くいった。

最初は緊張していた奏だったが徐々に緊張はとけていき、楽しささえを感じられるようになった。今まで感じたことのない楽しさだった。

曲が終わると大きな拍手に包まれた。




  ♪  ♪  ♪



その後は、一曲は奏がピアノ演奏をし、2人で合唱曲を一曲、最後に恋がソロ(奏はピアノ伴奏)で歌ってコンサートは終了した。

お客さんのうち何人かは、2人に「うまかった」とか「また聴きたい」と感想を言って帰って行った。



お客さんが帰って音楽室には恋と奏しかいない。文化祭は終わりが近づいていて、段々といつもの静けさが戻ってきた。



「終わっちゃいましたね…」

奏は緊張からの疲れと、なんとも言えない達成感という、変な気分に包まれてた。

「そうね。なんかあっという間だったわ。歌い足りないぐらいよ」

「また来年もこんな風に恋先輩とコンサートやりたいです」

「…私もやりたいなぁ」

恋は遠くの方を見ながら寂しそうに言って、そっと奏の頭を撫でる。

「せ…せんぱいっ!?」

戸惑う奏を無視して恋は奏を撫で続ける。その顔はどこか物寂しそうだった。





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