複雑
予定より早く書きあがってしまいました。
奏の通う高校は進学校のため、文化祭と体育祭は6月の上旬にまとめて行う。そうすることで早い時期から受験勉強に集中させようとするのが先生たちの考えだ。
文化祭まであと1ヶ月。5月になると一年生もだんだんと高校生活になじんできて、余裕がでてきたのだろう。クラス内にぽつぽつとカップルが出来始めた。
「ねぇねぇ、あの2人って付き合ってるんだって。知ってた?」
昼休みの教室で千佳と天音と三人でお弁当を食べていると天音が聞いてきた。
「えっ!?そうなの?知らなかった…。だからあんなに仲良そうに話してたんだ」
「いいなぁー。私も彼氏欲しいなぁ…」
天音は箸に刺さったたこさんウインナーを見つめながら溜め息混じりでつぶやく。
「作ればいいじゃん。天音の周りには男の子たくさんいるんだし」
千佳がめんどくさそうに言う。天音がこういう話をし始めるといろいろめんどくさいからだ。
「そりゃあクラスでも部活でもたくさん男の子と関わっているけどさ…なんか理想と違うんだよね」
「理想って、どんな?」
「うーんとね、私より背が高くて、声が低くて、ちょっと子どもっぽくて…って聞いてる?」
「「うん」」
ちなみに天音の身長は175センチだ。
「でさーこれがなかなかいないんだよね…。あぁ、早く私の王子様現れないかしら?」
夢見る乙女。そんな言葉が今の天音にぴったりだ。
「その前にもう少し妥協することが必要だと思うよ。だって身長が天音より高い男子ってなかなかいないよ?」
「無理!私が妥協する必要なんかないもん。それより、2人は好きな人いないの?」
「いないし。っていうか男子に興味が無い」
千佳は幼稚園から中学まで女子校だったので男子とあまり関わったことがないのだ。
「だろうね。で、奏は?」
「私?私は…」
そのときなぜか恋先輩が脳裏をかすめた。
「いるのね?いるんでしょ!教えなさいよ!」
…まさか。そんなことがあるわけない。何かの間違えに決まっている。
「ちょっと奏!黙ってるなんて卑怯よっ」
そうだよ。先輩は私の憧れだ。ただの尊敬できる先輩だ。
「ごめんごめん。私には好きな人なんかいないよっ」
「ふーん…。まぁ好きな人できたら紹介してよね」
「うん」
奏には胸の中にあるこのもやもやとした思いが一体何なのか分からなかった。
次話でようやく文化祭に入るつもりです。