文化祭準備
「ただいま~」
もちろん誰もいないので返事などあるわけないと奏は分かっているのだが、なんとなく癖で言ってしまうのだった。リビングの時計を見ると8時過ぎだった。結局先輩と2人で帰ってきたのだが、奏はずっと緊張していて、会話の内容も覚えてないし、途中で買い食いしたクレープの味も覚えていない。しかし、今頃になって嬉しくなってきて、ニヤニヤし始めたのだった。
次の日。結局この日もずっと先輩のことを考えていて全く授業に集中出来ない。
そんな奏を見かねて、同クラスの奏の友人の1人、千原千佳が話しかけた。
「奏…。最近ぼーっとしてるけど平気?」
「そーかな?」
「うん。なんかあったの?」
「特に何もないよ」
「それならいいけど…。なんかあったらいいなよ」
「うん。ありがとう」
それでもやはり奏はずっとぼんやりしていた。
放課後になり、奏は全速力で音楽室に向かった。
「こんにちは!」
奏の思った通り、先輩はもう来ていた。
「こんにちは、奏。今日もやる気満々だね」
「放課後が楽しみで仕方がなくて」
荷物を机におきながら答えた。
「それはよかった」
と、先輩は奏の頭をなでなでした。
「ちょ・・・せ、先輩~」
「本当は嬉しいくせに~」
奏が嫌がる度にどんどんエスカレートしていくのだった。
奏は赤面してしまったのをごまかすために話題をふった。
「恋先輩、今日は何やりますか?」
「今日はら文化祭の話をしようかと思ってて…」
「文化祭で歌うんですか?」
「そうよ~。で、曲決めしたいんだけど、音楽室にあんまり楽譜ないから今度の土曜日…つまり明後日に買いに行こうかなぁって思ってたの」
「それって、私もついて来ていいですか?」
「もちろん!」
「やった!」
先輩と一緒に買い物に行くと考えるだけで楽しみで仕方がない奏だった。