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chapter6:再会と決意

音楽室の前で二人で深呼吸する。

ちとせは柄にもなく緊張していた。


このドアの向こう側に本当に彼はいるのだろうか?


あったところでどうするというのだろうか?


そもそも、彼は自分の事など覚えていないかもしれない。

そんな途方も無い不安が脳裏をかすめる。


「ちとせ、開けるよ?!」


円の言葉にハッとして我に返る。


「う、うん…」


音楽室の扉がギギギッと音を立てゆっくりと開く。


「失礼します。」


音楽室に入り、辺りを見渡すが彼の姿はない。


い…ない……‥―――


頭が真っ白になり、それと同時に熱いものが込み上げてくる。


音楽室の中は入学式と同じ形で吹奏楽部員が並んでいて、それがよく見渡せる位置に何人かの見学者がいる。


「こんにちは〜」


吹奏楽部員の感じの良い挨拶により円は緊張がほぐれたようだが、ちとせはそんなわけにはいかなかった。


「初めまして、見学に来てくれてありがとう〜」


入学式の日、あいさつをしていたポニーテールの人がそう言って椅子をだしてくれた。


「今日はまだ初日だから、楽器は吹かせてあげられないんだ。ごめんね。」


今度は別の女の人に声をかけられる。

そして、それに便乗するようにポニーテールの人が

「でも、今から合奏するんで聞いてね。」

と言った。その時、再び音楽室のドアがギギギッという音をたてた。


「すいません、遅れました。」


その聞き覚えのある声に思わずちとせは振り返る。と同時にまるで時間がとまったかの様な錯覚にとらわれる。


あ…―会えた―――


自然に笑みがこぼれ、先程までの熱いものとは違う意味での熱いものが込み上げる。


「佐伯くーん、アンタは入学式もさぼって、今日も遅刻して本当にやる気あるの!?」

と言いながら、ポニーテールの人が近づいていく。


(サエキっていうんだぁ!!)


彼に会えた喜びと少しだけ彼の事を知れた喜びをかみしめる。


「すいませんっ、泉梨部長。今まで寝てて急いで来たんですよ。」


眉尻を下げて困った様に笑う彼。


「まぁ、いいわ。アンタのさぼり癖と遅刻癖には慣れたしね。合奏するから、さっさと楽器だして、音だしして。」


「は〜い、ってあれ?!ちとせじゃんっ!!!」


「ふぇっ?!こ、こんにちは」


(突然、名前呼ぶからどもっちゃったよ〜、でも、名前覚えててくれたんだっ//)


「ちはっす、まぁごゆっくり。」


「佐伯〜!!!一年生口説いてないで早くしなさぁいっ」


「うわっ!!はいっ、じゃ」




数分後ようやく合奏が始まった。曲目は入学式に吹いてくれた曲や有名なアニメソングのメドレーなどだった。


やっぱり演奏中の彼はどこか引き込まれるところがあり、目を奪われた。


合奏が終わると、見学していた一年生達がぞろぞろと帰っていく。そして、ちとせと円も。最後に部長さんが

「ありがとうございました〜」

と微笑んでくれた。彼も

「よかったらまた来てください。」

と言った。


帰り道―――


ちとせと円は吹奏楽部に入部することを決意したのだった。

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