chapter2:桜の木の下で
突然の笑い声に思わず振り向く。
すると、体育館付近の桜の木の下から学制服を着た男子が姿を現す。
「君、おもしろいね。名前は?」
少し茶がかった黒い髪。目や鼻のくっきりした端整な顔立ち。背は高めで、低くよく通る声。
(うわっ!カッコイイ…///)
自分でも顔が熱くなるのがわかる。
「あっ、日下ちとせです。」
(ヤだ、あたし。見とれちゃった…)
「ちとせか…。遅刻だよ。」
「あっあなたこそ。」
いきなり名前で呼ばれ動揺が隠しきれない。つい、どもってしまう。
「俺はいーの。出番、まだだし。校長のハナシとか面倒だし。それに俺、二年…‥
あっお母さん着たみたいだよ。」
(出番…?)
こちら体育館では、新入生呼名が始まっていた。次々と生徒達の名前が呼ばれていく。
「香山 翔」
「ハイッ」
みんなが驚くほど、大きな声で返事をして立ったのは一風、不良風のほっぺたに大きな傷がある少年だった。
「おっ、やったじゃん、紫月。香山と七連続同じクラス♪さては愛ですな。」
「もう、そんなんじゃないよ。ただの幼なじみだよぅ。」
そんな話をしているうちに、男子の呼名は終わってしまった。もちろん、まだちとせは来ていない。
「どうする〜?純ちゃん、順番きちゃうよぉ?」
「だぁ〜いじょうぶだって。絶対来るよ、アイツは。」
「霧島 円」
「ハイッ」
「日下 ちとせ」
「………」
「日下?一年三組、日下ちとせ」
返事がない。そのおかしい光景に皆がざわつき始める。