10 四次元超立方体(テッセラクト)の本当の姿を解明する
2-2 四次元超立方体の本当の姿を解明する。
☆ 四次元超立方体の模型を作成するための手順として、次元(空間)という概念についての解説から始めていきます。
四次元超立方体は立方体(三次元の正多面体)を四次元に拡張した、「立体」「面」「辺」「頂点」が対照的に配置される四次元の正多胞体を指し、正八胞体とも呼ばれます。
立方体(三次元)が6枚の正方形(二次元)に囲まれた内側の領域とするなら、四次元超立方体は四次元空間内に存在し、8個の立方体で囲まれた内側の領域、ということになるでしょう。
四次元超立方体の模型の作成には、四次元空間について正しく理解し、三次元空間に表せられるような形に変換するための手法を確立する必要があります。
もっとも2-1で、すでに四次元球体の模型を作成していますから、今回はそれを応用するだけで問題ありませんが、せっかくですから空間について解説してみようと思います。
0次元…空間内に座標情報のみで領域を持たない存在
一次元…空間内に前後・左右・上下などの対になった方向のうち一つ分の情報を持ち、その情報上(直線)にのみ領域を持つ存在
二次元…空間内に前後・左右・上下などの対になった方向のうち二つ分の情報を持ち、その情報上(平面)にのみ領域を持つ存在
三次元…空間内に前後・左右・上下などの対になった方向のうち三つ分全ての情報を持ち、その情報上(立体空間)の全てに領域を持つ存在
四次元…空間を内側と外側に分断し、各次元内にさらに閉ざされた領域情報を生み出す概念。辺(線分)・正方形(平面図形)・立方体(立体物)など、この概念が存在していなければそもそも成立できない。一次元から三次元までと違って方向の情報は持たない。
球が空間から独立して存在するためには、空間内に境界で区切られた内側の領域をそれ以外の領域と区別して認識できていることが絶対条件です。
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この「内側」「外側」という概念を四次元として空間を形成する次元の概念に加えるのが相応しいかはともかく、空間論を語る上では絶対に認識しておかなければいけない概念ではあります。
以上を踏まえた上で、一次元から順に次元を増やして四次元超立方体の模型を作成していきます。
四次元超立方体は決まった一つの模型しか三次元上で再現できない――なんてことはなく、何を残して何を犠牲にするかで形の違いが発生することも含めて、いろいろな作成方法を使い分けることで幾通りかのパターンの模型を用意することができます。
そのあたりは四次元球体と違いはありません。
実際、四次元超立方体の作成は四次元球体の作り方を下敷きに再現していきますから、それらの一辺は正方形や立方体で通常用いられる1ではなく、1+1の2になっています。
上の一連の図では次元が増える度に直交する軸が足されていく様子を示したものですが、注目してもらいたいのは、軸は決して一方方向に伸びているわけではないという点です。
0次元から一次元に拡張される時点で、直線は右と左(順方向と逆方向、あるいは正と負)の双方向に伸ばされています。
このように相反する二つの方向と静止した状態にある点がなければ、両者を分ける境界は発生せず、内と外という概念も生まれないので「線分」という閉じた領域は作られません。
この「双方向」という概念を次元に加えていいのかは議論の余地がありますが、少なくとも空間を語る上で軽く扱ってはいけない存在なのは確かです。
一次元が二次元に拡張されると、今度は「双方向」から「角度」という概念が新たに加わっています。
これによって二次元空間上では、一次元上では存在していなかった回転という新たな要素が生まれる訳ですが、これに何しては後で解説する予定ですので今は触れません。
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ただ、回転という要素は三角関数という形を通して有効活用されています。
回転という要素に代わり用いられているのはベクトルという概念で、二点の座標を結ぶ直線で方向という要素が表されています。
このときに用いられるのがいわゆる「直交座標」といわれる座標系で、二次元空間は直交する二つの軸によって形成された空間を指します。
一次元空間では左右(双方向)に伸びていた直線軸に、直交する軸(前後:双方向)という新たな方向が加わった空間が二次元空間というわけです。
これをただ単なる縦・横という関係だけで捉えてしまうと、閉じた領域としての「円」「正方形」を正しく認識できません。
境界によって分断され内側と外側という領域の区別されることは、それ自体が一つの次元を与えられたに等しい意義を持つものだ、という認識が必要だと思っています。
三次元空間は左右・前後に上下という概念を加えて、直交する三方向の軸で生み出される空間です。
二次元空間では平面に直交する直線軸が回転の中心でした。
両者の関係性自体は三次元空間でも変わりませんが、軸や平面の角度は新たに加わった座標を指定することで傾きを自在に変化させることができるようになります。
二次元→回転(複素平面) 三次元→回転軸の傾き(四元数) という図式です。
また回転軸自体も、回転の種類によって軸が直交した位置に重なった状態の時、別の軸に移すことが可能になります。
"ルービックキューブ"という玩具はその原理を有効活用した動きをしますから、回転と回転軸の関係を理解するのにとても便利でオススメです。
では前置きはこのぐらいにして、四次元超立方体の模型について解説していきます。
☆ケース ① ※ 図 P-045_2 中段
ケース ①は指数直線を使った座標系を用いて作図されています。
指数直線は下のような方法でマイナスの範囲を0~1(正確には0/1の極限から1/1の極限まで)の置き換えた直線軸を使った座標系です。
この座標系の特徴はマイナスも含めて絶対値しか存在していない点です(マイナスの値は分子と分母を入れ替える操作を加えることで指数直線上の値に変換します)
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0を挟んだ逆方向はマイナスではなく180°の回転で表されます。
直線 + 回転 という二つの要素を合成した座標系で「極座標」と呼ばれるものと実質同じですから、二次元空間なら複素平面、三次元空間なら四元数に応用できます。
この手法の特徴は厚みを設定できることです。
中心の0点から、それぞれ1離れた直交する三軸の座標上の点を中心とする六面で囲われた立方体の表面を基準に、外側にx/1、内側に1/x伸ばした面に囲まれた領域が四次元超立方体になります。
☆ケース ② ※ 図 P-045_2 下段
ケース ①では外側と内側に領域を伸ばして四次元超立方体の厚みを表現しましたが、ケース ②では外側にのみ領域を広げます。
やり方は三次元の立方体と同じものを立方体の六面それぞれ外側の面に貼り付けるように配置していきます。
このとき立方体の中心も一を保つ事ができず、同方向に座標1 (一辺の半分)分のずれを生じます。
加えて、本来接触しているはずの立方体同士の面と面(例:上立方体の右面と右立方体の上面)の間に空間が挟まれてしまいますが、ここがケース ②では直角という角度を維持する代わりに犠牲にされた部分です。
四次元方向に新たに生まれる立方体は、三次元立方体の左右・前後・上下の6つの面から作られるもの(ホワイト)の他に、内側に向いた面で作られる立方体と外側を向いた面で作られる立方体の2つを足した合計8つになります。
マゼンタの立方体は外側を向いた面ならどこに付けても問題ありません。
このように、6+2個の立方体の集合体がこの手法での四次元超立方体になります。
さて、四次元超立方体を作成する二種類の方法を紹介しましたが、他にも全く別のアプローチで三次元空間内に表現する方法もあります。
それは三次元球面でやったのと同じように表面だけを描写するやり方で、面(二次元)の部分のみを一次元分拡張することで三次元内での描写を可能にする手法です。
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なぜそうなるのかという理屈は三次元球面の模型を作成する過程で順を追って説明していますので、気になるという人はそちらを参照してもらえるとよいかと思います。
タイトルには「四次元超立方体の本当の姿」などと大仰なことを書いてありますが、要点を抜き出すと「三次元空間内で描かれる四次元超立方体はそのままの姿を再現しているわけではなく、どれも三次元に変換する過程で何らかの加工がなされた結果の姿である」ということになります。
身も蓋もない結論ですが、三次元空間の住人である私たちに四次元空間本来の形など知りようがないというのが真実でしょう。
ですが、構造とその理屈を把握できていて正しいやり方さえ知っていれば、四次元立方体に限らずいろんな四次元構造体を三次元空間で再現できるようになれるでしょう。
この項では、そのための道標を示すことを目指していくつかの実例を提示してみましたが、いかがだったでしょうか。
もしこれを期に興味を持っていただけたのであれば、皆さんもぜひ挑戦してみてください。
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