9 ポアンカレ予想の考察 (三次元球面を描く)
2-1 ポアンカレ予想の考察 (三次元球面を描く)
☆ポアンカレ予想とは
「単連結なn次元閉多様体はn次元球面 S^n に同相である」
という、フランスの数学者アンリ・ポアンカレによって1904年に提出された、数学の一分野である位相幾何学というカテゴリーでの定理の主張です。
「単連結なn次元閉多様体」というのは位相幾何学での用語なので、門外漢である人間にとってはほとんど馴染みのない言葉だと思います。
私自身も数学者ではないので、ここに触れるつもりはありません。
ですが、ポアンカレ予想の後半にある
「n次元球面 Sn」
という部分は数学に限定したものではなく、「球面」という一般的にも使われている普遍的な概念ですし、この部分に着目して自分なりの見解を述べてみようと思います。
四次元球体を四次元超立方体と同じ要領で三次元上に再現したものを、さらに二次元上で表現するとこんな感じの図ができあがります。
なぜそうなるのかという理屈は前章で説明していますので、詳しい仕組みが知りたい人はそちらを読み返してみてください。
この図を作画するにあたり、座標は通常の直交座標ではなく指数直線を軸に用いた特殊な座標系を使用しています。
四次元球体はそのまま三次元空間上に表すことはできないため特殊な座標系を用意しましたが、それとは別に三次元球面は三次元上で表すことができます。
ただし、球面を二次元平面上の地図に起こす過程でいくつかの重要な情報(距離・方角・座標位置・寸尺等)を犠牲にしなければならないように、三次元球面を三次元上で表現するにあたって何かしらの情報を犠牲にする必要性が出てきます。
何を残して何を犠牲にするかの取捨選択次第で、描かれる結果が違ってくるのは二次元平面上に描かれる地図が「~技法」と幾種類も存在しているのと同じです。
p-040
では実際に三次元球面のモデルを作って回転させてみましょう。
※ 画像をクリックすると元動画が張ってあるサイト(みてみん)に飛びます
上の動画で紹介した三次元球面では、直交する三本の軸を維持するために回転時のスケール(寸尺)が犠牲になっています。
二つの球面が重なる接線は必ず直角に交わるという制約、そしてどちらの球面も中央に固定された円周が自身の一部に組み込まれていて、両球面の接線は必ずその円周上に生じることになります。
では次にこの動画で紹介した三次元球面の作り方を解説しますので、ご自身でも実際にモデルを作成して検証してみてください。
まずは手順として球面を二次元平面に起こす操作から始めていきましょう。
手順としては球面をそのまま平面にするのではなく、図 P-041_3の上段で示しているように一度円柱に変形する工程を挟みます。
ここでは円周jと円周kをそれぞれy軸とx軸に揃える手順を採用しています。
下段の2番目の行程を見ていただければ分かると思いますが、円柱上にする時点で、いわゆる赤道地点がそのままのサイズであるのに対し、極地点は点だったものを赤道と同じ大きさの円に広げていますから、当然大きな歪みが発生しています。
また、円柱の柱部分も、円を直径の長さに縮まっていますので、下段の三番目の行程のような柱方向(横)を1として円周方向(縦)約1.57(τ /4)という比率の長方形が連なった形状の円柱ができあがります。
この長方形を1:1の正方形に調整しながら、円柱の側面を下段の4番目の行程のように開いて平らに均せば球面を二次元平面に起こす作業は完成です。
ただし先程もいいましたが、これはあくまで平面で表す手法がいろいろなある中での1パターンを紹介したに過ぎず、他にも様々な手法を用いた表現が考案されています。
そして図 P-041_2で示したように、このやり方であっても、赤道を横軸に取り地軸に沿って縦軸を設定する決まりなどは存在していません。
立体空間で直交する三軸のどの方向に展開してかまわないのです。
p-041
※分かりにくいかもしれませんが、図 P-041_3ではj軸とk軸
をi軸が乗っているx y軸に展開するという手順になっています。つまり平
面の色が群青なのは、これがj軸とk軸で形成された二次
元平面だからというわけです。
ではそれを踏まえて、今度は三次元球面を三次元空間で描写できるように展開していこうと思います。
三次元球面はこの章の冒頭の図P-040_1で紹介した四次元球体の表面ということになりますが、もちろんそのまま三次元空間に再現することはできません。
そこで、まず何を犠牲にして何を残すのかということを決める必要があります。
図P-041_1 (GIF動画)では、三次元の各軸が直交するという性質と球という形状を残すために、大きさ(スケール)を犠牲にしています。
それではこの図P-041_1 (GIF動画) ケース② で描かれている三次元球面がどの様な仕組みでできているのかを図を交えて解説していきます。
軸の回転 → 球(物体)全体が連動して動く。
↓
同軸上では無制限に回転できる。
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それ以外に付け加えることがあるとすれば、ケース①と同じく90°回転で軸が入れ替わり、180°回転すると内と外が入れ替わります。
三次元球面を三次元空間上で表現する手法は一つに限らないとはすでに書きましたが、残すものと犠牲にするものの条件を変更することで違った形状の三次元球面で表すことも可能です。
あくまで参考のため、片側球面のみの作画です。
※ これは縦軸の径を生かすために交差面の角度を犠牲にした描写になっています。
p-042
回転する三次元球面が90°ごとに完全な球面と二次元平面(この場合は筒状)の組み合わせになる様子は、こちらのケースの方がより伝わりやすいのではないかと思います。
このような状態になったとき、回転軸を他の軸に問題なく変更することが可能になっています。
こうした性質を利用した有名な玩具がルービックキューブです。
ここまでの考察をまとめますと、
① 三次元球面を三次元空間で表現する手法は一つに限らない。
② ポアンカレ予想では球面に関して具体的な言及が見当たらないが、三次元までの球面なら現実世界でも描写は可能なので、それと比較すれば問題なく解決に至ることができるはず。
③ただし、この手法だと新たな軸が見つからない限り、四次元以上の球面は存在そのものが否定されてしまうため、「四次元以上の球面は存在しない」というのが現状での解答として導き出されます。
実際問題として、五次元以上に関しては解決済みだと言われている割に、五次元以上の球面の具体的な姿を目にしたことはただの一度もなく、それ以外でも「四次元以上の球面は存在しないのではないか?」という疑惑が解消されるような何かが提示されたという話も残念ながらまるで聞こえてきません。
数学的、あるいは位相幾何学的な結論とは全く異なりますが、上の三つがこの問題に対して私が出した解答です。
以上が、数学者以外からの視点で見たポアンカレ予想に関する考察となります。
p-043




