第3話
投稿者:土方のわし 2026年4月5日
やったぜ。今日はお花見という名の、春の「盛り合い」じゃ。
朝から太郎の奴が、散歩の気配を舐めるように感じ取ったんか、部屋の深淵をぐるぐると身悶えしながら回りよる。
「おい太郎、落ち着け! わしは今、ハムカツを白濁した衣で揚げるのに必死なんじゃ!」
鼻をひくひくさせると、揚げ油の香ばしい匂いと、太郎の興奮した荒い鼻息がアパートの中でドロドロにぶつかり合っとる。あぁ~~たまらねえぜ。
しばらくして、おっさんと兄ちゃん、金髪を桜色に光らせた新人という名の異物、そして太郎で岡山城の近くへ繰り出したんじゃ。
見上げれば、満開の桜が空を埋め尽くし、薄桃色の花びらが「生の破片」のように舞い落ちてきよる。
「わしさん、このサンドイッチ……マジ神っすね! 喉越しがパねぇっす!」
新人の金髪が、わし特製・ハムカツサンドを口の奥へ突うずるっ込みよる。
「おじい……いや、おじいさんら、毎年この『生』の宴をやってるんすか」
「ほぼ毎年じゃ。これが現場の出口なんじゃ」
「マジか……。バイブス、じりじりと上がりますわ」
還暦のおっさんは「……桜の花びらという名の、卑しいおつまみですわ」と言いながら、トップバリュの酒を喉の奥へ流し込みよる。兄ちゃんも、昼からの酒に顔を真っ赤にして、痛風の恐怖をアルコールの深淵へと棚上げしとるわ。
鼻をひくひくさせると、桜の清楚な香りを、濃厚なソースの匂いとアルコールの刺激がドバーっと追い越していく。もう、おえんわ。この背徳感、たまらんのう。
太郎の奴が、桜の絨毯の上で鼻をひくひくさせて、落ちてきた花びらをパクッとしおった。
「こら太郎! それは食い物という名の出口じゃないぞ!」
太郎が首をかしげ、すぐに出口(口)から吐き出しおった。汚れ好きの奴め。
それからはもうめちゃくちゃや。追いワンカップをおっさんが卑しく買いに走り、サンドイッチを食い尽くして、岡山の春の光の中でドバーっと、気が狂う程騒いだんじゃ。
――もう一度、この「混ざり合った」メンバーで飲みたい。
アパートに帰ると、おっさんが先に果てて寝、兄ちゃんがその横に泥のように倒れた。太郎がその上に、勝利者のように乗りよったわ。旭川のほとりには、空き缶の山という名の「生の残骸」だけが残っとった。
こんな変態親父と花見宴会遊び、しないか。
あぁ~~早くアルコールまみれになろうぜ。
旭川のほとり、空き缶の山を舐めるように眺めながら待っとるぞ。
――ウコンの力をしこたま持って来てくれる奴、おらんかのう。
土方姿を忘れて、54歳のわしは2026年の桜を、喉の奥底へドバーっと流し込んだんじゃ。




