表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
やったぜ。7  作者: 水前寺鯉太郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/7

第3話

投稿者:土方のわし 2026年4月5日

 やったぜ。今日はお花見という名の、春の「盛り合い」じゃ。

 朝から太郎の奴が、散歩の気配を舐めるように感じ取ったんか、部屋の深淵をぐるぐると身悶えしながら回りよる。

「おい太郎、落ち着け! わしは今、ハムカツを白濁した衣で揚げるのに必死なんじゃ!」

 鼻をひくひくさせると、揚げ油の香ばしい匂いと、太郎の興奮した荒い鼻息がアパートの中でドロドロにぶつかり合っとる。あぁ~~たまらねえぜ。

 しばらくして、おっさんと兄ちゃん、金髪を桜色に光らせた新人という名の異物、そして太郎で岡山城の近くへ繰り出したんじゃ。

 見上げれば、満開の桜が空を埋め尽くし、薄桃色の花びらが「生の破片」のように舞い落ちてきよる。

「わしさん、このサンドイッチ……マジ神っすね! 喉越しがパねぇっす!」

 新人の金髪が、わし特製・ハムカツサンドを口の奥へ突うずるっ込みよる。

「おじい……いや、おじいさんら、毎年この『生』の宴をやってるんすか」

「ほぼ毎年じゃ。これが現場の出口なんじゃ」

「マジか……。バイブス、じりじりと上がりますわ」

 還暦のおっさんは「……桜の花びらという名の、卑しいおつまみですわ」と言いながら、トップバリュの酒を喉の奥へ流し込みよる。兄ちゃんも、昼からの酒に顔を真っ赤にして、痛風の恐怖をアルコールの深淵へと棚上げしとるわ。

 鼻をひくひくさせると、桜の清楚な香りを、濃厚なソースの匂いとアルコールの刺激がドバーっと追い越していく。もう、おえんわ。この背徳感、たまらんのう。

 太郎の奴が、桜の絨毯の上で鼻をひくひくさせて、落ちてきた花びらをパクッとしおった。

「こら太郎! それは食い物という名の出口じゃないぞ!」

 太郎が首をかしげ、すぐに出口(口)から吐き出しおった。汚れ好きの奴め。

 それからはもうめちゃくちゃや。追いワンカップをおっさんが卑しく買いに走り、サンドイッチを食い尽くして、岡山の春の光の中でドバーっと、気が狂う程騒いだんじゃ。

 ――もう一度、この「混ざり合った」メンバーで飲みたい。

 アパートに帰ると、おっさんが先に果てて寝、兄ちゃんがその横に泥のように倒れた。太郎がその上に、勝利者のように乗りよったわ。旭川のほとりには、空き缶の山という名の「生の残骸」だけが残っとった。

 こんな変態親父と花見宴会遊び、しないか。

 あぁ~~早くアルコールまみれになろうぜ。

 旭川のほとり、空き缶の山を舐めるように眺めながら待っとるぞ。

 ――ウコンの力をしこたま持って来てくれる奴、おらんかのう。

 土方姿を忘れて、54歳のわしは2026年の桜を、喉の奥底へドバーっと流し込んだんじゃ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ