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エピローグ
朝の光が、薄いカーテン越しに差し込んでいた。
目を開けると、部屋は昨日と同じなのに、どこかほんの少しだけ違って見える。
鏡の前で髪をまとめ、淡々とした日課をこなす。
冷蔵庫から牛乳を取り出し、パンを焼く音を聞きながら、スマホに届いていた天気予報の通知を確認する。
どれも、変わらない朝の風景。
けれど、パンの香りに包まれながら椅子に腰を下ろすと、美晴は気づいた。
胸の奥に、昨日までにはなかった静かな重みがある。
それは決して暗いものではなく、むしろ「まだ続いていく」という合図のような重さだった。
通勤の人々が駅へと急ぐ音が窓の外から聞こえてくる。
小さな子どもの笑い声が混じり、誰かが自転車のベルを鳴らす。
日常は流れ続ける。自分もその中を歩いていく。
トーストをひと口かじり、温かな香ばしさを舌の上に感じた。
その感覚を胸の奥で静かに噛みしめながら、美晴は窓の外を見つめた。
いつも通りの朝を、いつも通りに過ごしている。
そのことが、ただ確かに心に残った。




