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第九章:見つけた聖域

マエラの人脈から噂が広がり、避難者の流れは途切れなかった。新たな顔ぶれは希望と不安をもたらす。食わせる口が増え、守る命が増え、だが聖域を築く手もまた増えた。


彼らの到着には、ある種の規則性があった。逃れてきた人々はあまりにも容易に彼らを見つけ、追跡不可能なはずの痕跡を辿っていた。避難者がこれほど簡単に辿り着けるなら、奴隷狩りも同じだろう。逃れてきた者たちが谷へと導くことになる。それでも、絶望の中で避難所を求める魂を追い返すことはできなかった。


徐々に、集団の空気は希望に近づいていった。シムは新参者を迎え入れ、静かな手際で作業班を組織した。ペルは馬の世話を引き受け、ロープと材木で粗末な橇を作り物資を運んだ。


「この獣どもは十人分の働きだ」ペルは馬の頑丈な脇腹を叩きながら呟く。馬は新しく切った材木の荷を、成長する避難所へと引いていく。


斧が木に食い込む音が谷に響き、ダックスが避難者の一団を率いて建設用の木を伐り出していた。彼の大工の腕は貴重だった。到着から数日で最良の材木を見分け、伐採班をまとめていた。「枠組みには松だ」丸太を運ぶ一団に声をかける。「柱には樫。白樺の枝は取っておけ、屋根に使う。」


シムは負傷者と疲れた者の間を絶えず動き回り、優しい手当てと静かな祈りで混乱に秩序をもたらした。アリアは安全に活気づき、他の子供たちと採集に出て、その若々しい熱意は周囲に伝染した。リラは持ち物の山から秩序を作り出し、組織の才を発揮した。


新たな到着者の中で、ゴンドは有用な技能を見分け始めていた。コルヴェンは腕に火傷の痕がある白髪の男で、奴隷にされる前は鍛冶屋だった。「鍛冶場と鞴をくれ」貧弱な道具の山を見ながら言う。「釘、蝶番、まともな刃を作ってやる。」


マルタという年老いた女は漁船の帆を縫っていた。風雨にさらされた手は革も帆布も同じように扱う。「まともなテントが要る」間に合わせの避難所を見て呟く。「防水の。この掘っ立て小屋じゃ最初の嵐で全滅だ。」


金槌の音が斧に加わり、人々が集めた金属から道具が生まれる。壊れた荷車の車輪は材木を補強する鉄帯に、曲がった蹄鉄は釘に伸ばされた。金属の欠片も、熟練の手も、すべてが貴重だった。


谷のあちこちで、ゴンドの名が静かに囁かれる。作業の割り当てで争いが起きれば、彼の判断を仰ぐ。答えが必要な問いがあれば、彼に向かう。ゴンドの存在だけで気性が鎮まり、怒りが笑顔に変わることもあった。気づけば、彼はすべての決定の中心、小さな共同体の軸になっていた。


やがて、人々はゴンドに奇妙な力の現れを感じ始めた。ある夜、彼は剣の手入れをしていた。油を塗り、磨き上げる。神殿での体験以来、金属の質が少しずつ良くなっているのに気づいていた。


ペルも気づいていた。「あのポンコツ、ただの鉄だったはずだ」冗談めかして言う。「戦いより蕪掘り向きだった。だが今の刃は剣鋼だ、違うか?」


「手入れが良ければ剣も応える。お前も自分の剣で試してみろ」ゴンドは答えた。


「それで鉄が鋼になるなら、俺は大金持ちだな。」


◇  ◇  ◇


数日後の夕暮れ──


ある穏やかな夕方、ゴンドは集団に向かって話した。「我々は聖域を見つけた。しかし安全は保証されない。警戒を怠らず、この家を守る準備をせねばならない。」


ペルが前に出て腕を組む。「谷の入り口を要塞化すべきだ。守りやすく、目立たぬように。罠も仕掛ける。」


シムがうなずく。「希望ある共同体を築く。それでも、平和を壊す者には備えねば。」


人々から同意の呟きが上がり、声に決意が宿る。ゴンドは顔を見渡し、胸の奥で何かが膨らむのを感じた。誇りというより、静かな満足だった。


「それぞれ役割がある。」顔から顔へと視線を移す。「共に生き延び、共に栄える。」


夜明け前の静けさの中、ゴンドは谷の高い尾根で見張りに立った。下では、生まれたばかりの共同体が眠っている。


「良い始まりだな」ペルが闇の中で呟く。「だが奴隷商人が永遠に我々を無視することはない。」


ゴンドはうなずき、顎を引き締めた。「来るがいい。ここで見つけるのは、ただの逃亡者じゃない。」


ペルの唇が獰猛な笑みを浮かべる。「守るものがある時の人間の底力、見せてやろう。」


夕日の最後の光が谷を金色に染める。ゴンドは胸の奥深くで何かが落ち着くのを感じた。


翌日、ペルとゴンド──集団で唯一軍事経験のある二人──は体力のある者たちに防衛訓練を始めた。槍術に焦点を当てた。槍は騎馬の敵に強く、未経験の守備者でも一人の敵に集中攻撃できるからだ。


◇  ◇  ◇


一週間後──


最初の危機が訪れた。


ゴンドは減りつつある穀物袋の山の傍らにしゃがみ、残りを数えながら顎を引き締める。周囲では、湖で遊ぶ子供たち、火の世話や服を繕う大人たちの朝の喧騒が続く。しかし数字は嘘をつかない。今の消費では、食料は十日分しか残っていなかった。


「どれほど悪い?」ペルが肩越しに尋ねる。


「十分に悪い。」ゴンドは立ち上がり、手から埃を払った。「もっと遠くに採集隊を出すしかない。谷の資源だけでは五十人は養えない。」


シムが近づき、顔は深刻だ。「同じことを考えていた。果樹はほとんど摘み尽くされ、湖の魚も減っている。」


「穀物を植えるには遅すぎる」ペルが付け加える。


「秋までに、春まで持つだけのドングリや木の実、ベリーを集められる。だがそれまでは…」シムは言葉を濁した。


三人は沈黙し、それぞれが含意を理解していた。大きな採集隊は発見の危険が増す。しかし食料がなければ、聖域は墓場になる。


「他にもある」シムが静かに言う。「昨日の新しい到着者が──厄介な知らせを持ってきた。」


ゴンドは司祭に目を向けた。「どんな知らせだ?」


「地平線の煙。ここから南に三日。何時間も続いた黒い柱。」シムの声は低く落ちる。「村を焼く時の煙だ。」


朝の暖かさの中、ゴンドの背筋に寒気が走った。「組織的な襲撃か?」


「そのようだ。地域全体を一掃しているらしい。採集隊を隠すのは難しくなる。」


ペルは息の下で悪態をつく。「飢餓と発見の間か。完璧だな。」


ゴンドは狭い円を歩き回り、土に道を刻む。どれも良くない選択肢を量りながら、手は脇で握りしめては緩めた。配給を厳しくすれば戦士が弱る。小さな採集隊では物資が足りない。南の放棄農場への大規模遠征は危険だが、食料の望みがある。


彼は立ち止まり、決意で顎を固めた。


「評議会を集めろ」決めた。「リラ、コルヴェン、他の指導者も。選択をし、全員が賭けを理解する必要がある。」


一時間後、指導部が中央の火の周りに集まり、顔は深刻だった。ゴンドは残酷な正直さで窮状を説明した──食料不足、迫る脅威、危険と飢餓の間の選択。


「危険を冒すべきだ」コルヴェンが拳を握る。「衰弱して死ぬより戦って死ぬ方がましだ。」


「守る子のいない者の軽い言葉ね」リラが反論する。「奴隷商人の領域に人を送る話よ。」


「我々はすでに奴隷商人の領域にいる」ペルが静かに指摘した。「今向き合うか、見つかるまで待つかだ。」


議論は一時間続いた。コルヴェンの拳が切り株を叩き、リラは腕を組んで背を向ける。他の者たちは落ち着きなく身じろぎし、誰かはコルヴェンに、誰かはリラに寄った。恐怖と絶望が冷静さと希望とせめぎ合い、声が上がり下がった。ゴンドは全ての議論に耳を傾け、心配で引き締まる顔と、災厄に向かう選択肢を量る手を見つめた。


ついに、静寂を求めて手を上げた。「行く。明日の夜明け、ソーンフィールド農場へ一団を率いる。何週間も放棄されている──避難者の話では、家族は襲撃時に逃げた。根菜貯蔵庫が無事かもしれない。」


「何人で?」ペルが尋ねる。


「十二人。物資を運ぶのに十分、静かに動くのに十分少なく。」輪を見回す。「志願者のみ。十歳未満の子のいる者、走れない者は除く。」


シムが身を乗り出す。「煙はソーンフィールドからどれくらい?」


「危険なほど近い。だが、まだ間に合う。」ゴンドは立ち上がり、決断した。「夜明け前に出発し、その夜に農場を襲い、見つけたものを積み、翌日の日没前に戻る。二日間で入って出る。」


評議会が遠征の知らせを広めに散ると、ゴンドは南の地平線を見つめていた。どこかで、煙がまだ燃える家から立ち上っている。どこかで、奴隷商人が進路のすべてを破壊していた。


明日、彼はその危険に人々を導く。


皮肉は逃さなかった。一週間前、聖域を約束した。今は生存のための賭けに全てをかけさせている。


「迷いか?」ペルが岩の上で腰を下ろしながら尋ねる。


「三度も四度も」ゴンドは認めた。「だが代わりは、彼らが飢え死にするのを見ることだ。」


「罠に歩いて入るかもしれない。農場はもう襲われているかも。」


「かもしれん。」ゴンドの手は無意識に剣の柄に動く。「だが、見なければ分からん。」


ペルはうなずいた。「なら、何が待っていようと備えておくさ。」


夕闇が谷に降りると、ゴンドは再び人々の前に立った。今度は安全の約束ではなく、厳しい真実を告げた。


「明日、我々の一部が全てを危険にさらし、全員が生き延びるために動く。それが家族というものだ。我々がなったものだ。」


恐怖と決意が混じる顔が彼を見返す。ゴンドはうなずいた。


谷の空気は静かで、夜がすべてを包み込んだ。


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