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第六章:聖域への道

ゴンドは城壁の最後の数尺を駆け上がり、筋肉が悲鳴を上げる中、胸壁を乗り越えて身を引き上げた。下では、星明かりに浮かぶ彼の影を見つけた衛兵が叫ぶ。


「いたぞ!城壁の上だ!」


他の声も続く。松明が集まり始める。ゴンドは外壁を這い下りる。手がかりはほとんどない。絶望だけが背中を押した。地面が迫る。


最後の数メートルを落下。激しく地面に叩きつけられ、転がって衝撃を逃す。足首に鋭い痛み。無理やり立ち上がる。背後で胸壁に弩の矢が火花を散らして当たった。


ゴンドは走る。負傷した足首をかばいながらも速く動く。前方に小川が風景を切り裂き、その岸は茂みに覆われていた。二十ヤード駆ける。膝までの冷たい水に飛び込む。冷たさが一瞬、痛みを忘れさせた。


街から離れる方向に小川を辿るのではなく、彼は引き返し、水が鉄格子を通ってブラックウォーターに流れ込む場所へ下流に進んだ。流れがブーツを引っ張る中、格子の上の石のアーチに身を寄せ、影に隠れる。


城壁から叫び声。「小川の方に行ったぞ!」


「こっちだ、水を追え!」


松明の光が小川の岸に踊り、追手たちは偽の痕跡を辿って上流へ、街から離れる方向に向かった。ゴンドは彼らの声を数えた──少なくとも六人、おそらくもっと多い。彼らは獲物の匂いを追う猟犬のように茂みを突き破り、ブラックウォーターから離れる道を進んだ。


ゴンドは冷たい石に身を押し付け、声が遠ざかるのを待った。それからようやく格子から離れ、闇の中を回り込んで、聖域を約束する丘へと歩き出した。


ブラックウォーターの鐘の音が背後で遠ざかる中、ゴンドは闇の中を北へ足を引きずった。一歩ごとに捻挫した足首に火が走るが、歩みを止めない。警報は一時間もすれば騎馬の巡回隊を呼ぶだろう。距離を稼ぐしかなかった。


道は彼の前に虚ろに伸び、星明かりの下で細い帯となっていた。馬なしでは、宿駅への帰路は夜のほとんどを要する。ゴンドはマントを強く引き寄せ、強行軍のリズムに身を委ねた──十数回の戦役を生き延びた歩みだった。


すべての影が待ち伏せを隠しているかもしれない。すべての音が追跡の前触れかもしれない。闇の中でフクロウが鳴くと、手が剣の柄に伸びた。風が道端の草を揺らすと、音が過ぎるまで身を固める。倍になった懸賞金は五十マイル以内の傭兵や賞金稼ぎを引き寄せる。五百ロイヤルは男に農場を、女に自由を買わせる額だ。


旅路に一時間ほど入った頃、南から蹄の音が響いた。ゴンドは道端の溝に飛び込み、三人の騎手が雷のように駆け抜ける間、泥だらけの土手に身を伏せた。松明の光が彼らの顔を照らす──街の衛兵たちが激しく駆けていく。彼らは速度を落とさなかった。


蹄の音が消えるまで待ち、道に戻る。服は溝の水でずぶ濡れ、泥がブーツにこびりつく。寒さが骨まで染みた。


道は海岸平野を離れるにつれて登り始める。岩の露頭が隠れ場所を与え、ゴンドはそれを利用して、各見晴らしの良い地点から後方を確認した。まだ追跡はなかったが、夜明けとともに状況は変わるだろう。いずれ脱出ルートが割れ、本当の狩りが始まる。


ようやく朝霧の中、宿駅の壊れた壁が見えたとき、夜明けが訪れていた。


「本当に捕まるかと思った」ペルが肩を叩き、息をついた。「あの鐘、何時間も鳴りっぱなしだったぞ」


ダックスとアリアが避難所から顔を出し、ゴンドの姿にほっとしたように微笑む。


「心配した」ダックスが素直に言う。「あまりにも戻りが遅かったから」アリアは兄の背後で小さくうなずいた。


「ブラックウォーターは死の街だ」ゴンドは短く言い、重く腰を下ろす。足首がじんじんと痛み、疲労が鉛のように肩にのしかかる。「懸賞金が倍になった。衛兵は建物を片っ端から捜索し、商人にも聞き込みをしている。しかも馬まで奪われた」


ペルの眉が跳ね上がる。「何だって?どうやって?」


「戻る前に囲まれた」ゴンドの顎が固くなる。忠実な馬は危険から救ってくれたのに、結局は罠に導くことになった。「つまり、やつらは俺たちがこの辺りにいると踏んでいる。捜索範囲も広がるだろう」


「見つかるまで、どれくらい猶予がある?」ダックスが無意識に妹のそばへ寄る。


「数日、いやもっと短いかもな──金が絡めば噂はすぐ広まる」ゴンドは皆の顔を見渡す。「消えるぞ。馬でも追えない深い丘へ」


「高地か?」ペルは軽口を装いながらも、目は真剣だ。


「荒野の奥だ」ゴンドはマエラの地図を思い出す。彼女が安全な道と隠れ家を示すために記した印。「奴隷商人には険しすぎる。賞金稼ぎにも遠すぎる。そこで身を潜め、休み、次の策を練る」


シムがうなずき、その穏やかな確信が空気を和らげた。「賢明だ。まずは安全を」彼は髭を撫でて考える。「この丘には、もっと古い聖域がある。ほとんど忘れ去られた場所がな」


「忘れられた廃墟は、忘れられた人間にはぴったりだな」ペルがぼそりと呟く。


ダックスは手を握ったり開いたりして、戻った力を確かめる。「俺…昔、親父の大工の班で働いてた」自分の烙印を指しながら言う。「建て方は知ってる。材料さえあればな。でも道具がいる。木を倒す斧、材を切る鋸」


「順番だ」ゴンドが言う。「まずは生き延びる。それから建てる」


彼は皆の顔を見回す──怯え、希望、信頼が混じる。胸に重みがのしかかる。彼らは自分に頼っている。その責任が肩にずしりと乗った。


「日没まで休んで、力を蓄えろ」声には新たな重みがあった。「馬を連れて、闇に紛れて消える」


ペルの笑みには期待と警戒が同居していた。「見つからないことを祈るさ」


◇  ◇  ◇


彼らは日が沈む前に静かに野営を解いた。音を立てれば死が近づくと知る者たちの、無駄のない動きだった。宿駅を守っていた偶然の隠れ蓑も、執念深い捜索には長くは持たない。神秘的な加護がわずかな猶予をくれたが、ゴンドはそれに頼りきるほど愚かではなかった。


ゴンドは最初に馬に乗り、毛布を敷いた背で足首を休めながらまどろむ。やがてダックスと交代し、彼の足もだいぶ癒えてきたが、まだ油断はできない。


シムが選んだ道はじわじわと丘の奥へ導く。松や苔むした岩の間を縫う古い小道は、現実というより記憶の中の道のようだった。霧雨が景色をぼかし、すべてが灰色の幻に包まれる。


「どうしてこんな道を知ってる?」ゴンドが危うい斜面を進みながら尋ねる。


シムは穏やかに微笑む。「昔から司祭だったわけじゃない。アラニィに呼ばれる前は…いろいろあった。命がけで隠れれば、隠れ道も覚えるものさ」


一行は一列で進み、シムが先頭、ゴンドが殿を務める。ゴンドは時折立ち止まり、高台から後方を見張った。衛兵が宿駅を見つけても、その頃には荷車の一団が追えぬほど奥地にいるはずだ。


そんな見張りのひととき、ペルが岩の上でゴンドに合流し、歩いてきた道を見下ろす。ゴンドは目を細め、湿った土や落ち葉に残る自分たちの痕跡を探った。「妙だな」ペルというより独り言のように呟く。


ペルが視線を追う。「何が?何か見えるのか?」


ゴンドは首を振る。「いや、それが…足跡が薄い。馬もいるのに。まるで雨が早く消してるか、あるいは…」言葉を切る。シムはマエラからもらった銀緑の葉を胸元にしまっている。ゴンドは深く考えたことはなかったが、マエラはそれが追跡を難しくするかもしれないと話していた。


ペルはかすかな痕跡を見つめ、口元に笑みを浮かべる。「まあ、俺たち全員もう少し太った方がいいのかもな。追っ手に分かりやすい印を残すためにさ」ゴンドの肩を軽く叩く。「お前の仕事も減るな、痕跡隠しが」


ゴンドは小さく唸る。納得はしていない。シムの様子を今まで以上に注意深く観察しようと心に決めた。


午後になると道はさらに険しくなった。緩い石が足元で転がり、狭い谷間を抜ける。一歩ごとに油断が命取りだ。ダックスは馬の手綱を握りしめ、馬も慎重に進む。アリアは何度もつまずきながらも、黙ってついてきた。


ゴンドは再び立ち止まり、今度は傷の手当てと荷物の再配分を指示する。遅れる余裕はない。


「あとどれくらい?」ダックスが妹の疲れを気遣いながら尋ねる。アリアは息を切らしつつも、弱音は吐かない。


シムは太陽の位置を見て、遠くの尾根を指差す。「あの向こうだ。アラニィの古い神殿が森に隠れている。丘に囲まれて守られてる。今夜はそこで休める」


「神殿?」ペルは半信半疑だ。「洞窟か羊飼いの小屋でも探すのかと思ってた」


「もっといい場所さ」シムの目は静かに光る。「誰も近寄らない。呪われてると思われてるからな」皮肉っぽく笑った。


一行は歩みを進める。尾根はなかなか近づかず、霧雨はやがて本降りに変わる。服は濡れ、岩道は滑る。ゴンドは何度も後ろを振り返り、丘の向こうに追手の影が現れないか警戒した。


夕暮れが迫る頃、ついに尾根にたどり着く。ゴンドは思わず息を呑んだ。急な丘に囲まれた森が、薄明かりの中で静かに広がっている。苔に沈む古い石壁が霧の中に浮かび、蔦に抱かれて眠っていた。


「着いた」シムが短く告げる。「聖域だ」


馬が神殿の敷地に足を踏み入れた瞬間、耳を立てて満足げにいななき、ゴンドは立ち止まる。胸の奥に、理由のない温もりが広がった。


足元の芝は、これまでの岩だらけの道とは違い、厚く青々としている。空気も埃っぽい道とは別物で、清々しい香りがした。ダックスの足取りも軽くなり、ペルの張り詰めた肩も少し緩んだようだった。


「お前の女神は変わった趣味だな」ゴンドがぼそりと呟くが、声にいつもの棘はなかった。


シムは風化した石を見つめる。「ここは聖域だった。昔はこういう忘れられた神殿があちこちにあったが、今は崩れて記憶からも消えつつある」


「完璧だ」ペルは周囲を見回し、計算高い目で頷く。「俺たち、廃墟に溶け込むにはうってつけだ」


彼らは手早く動き、崩れかけた神殿の中に野営を設営した。火は一度で点き、ゴンドは仲間たちの顔から緊張が抜けていくのを見た。炎はかつて聖域だった場所で静かに揺れ、削れた柱に影を踊らせる。


ダックスの足はシムが丁寧に手当てし、アリアは食事の準備を手伝う。何日ぶりかで、誰も神経質に地平線を見張らなかった。古い壁はただの避難所以上のものを与えてくれるようだった──そこには安らぎがあった。


やがて空から最後の光が消え、ゴンドは立ち上がって体を伸ばす。足首はまだ疼くが、もう気にならない。周囲では──いつから「自分の人々」と思うようになったのか──皆が夕餉の支度に落ち着いている。かつて守るべきものは自分の命だけだったのに、今は他人の運命が心に根を下ろしていた。


「周囲を見てくる」ゴンドは短く言う。「ここに他に誰もいないか確かめる」


「付き添いは?」ペルが尋ねるが、すでに苔むした石にもたれてくつろいでいた。


「一人の方が早い。火は低くしておけ」


ゴンドは廃墟を抜け、神殿の敷地を巡って追跡の痕跡を探すつもりだった。だが古い石の間を歩くうち、別の何かに呼ばれる感覚があった。胸の温もりが静かに脈打つ。まるで、もう一つの心臓がそこにあるように。


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