第五章:進路変更
午後の霧がブラックウォーターの北門に絡みつき、まるで亡霊の指のようだった。ゴンドは遠くから門を見据え、泥を掴んで額に塗りつけ、馬を静かに進めた。
冷たい空気に白い息が立つ。フードを深く被り、逃亡奴隷の烙印を隠す。城壁が薄曇りの空を背に黒くそびえ、喉の奥で鼓動が鳴った。
三人の衛兵が落とし格子のそばに集まり、提灯の明かりでハルバードが鈍く光っていた。ゴンドが近づくと、彼らの目が鋭くなる。最年長の男が前に出て、岩のような傷だらけの顔を向けた。
「止まれ」その声には、些細なことで人を殺してきた者の重みがあった。「名と用件は?」
「ロサン・ヴェール」ゴンドは滑らかに嘘をつき、旅に疲れた男の猫背を装う。「クリフメアから来た馬商だ。嵐で家畜が散り散りになり、回収できたのはこの一頭だけ。鞍もない」荷馬の首を軽く叩いた。
二番目の衛兵がゆっくりと周囲を回り、細部まで目を光らせる。「一頭じゃ商売にならんだろう。書類は?」
ゴンドの腹が重くなる。「嵐で全部失くした。他の物と一緒にな」三枚の銀貨を衛兵の手に滑り込ませた──通行料より多い。「嵐が俺に残したものだ」
銀貨は消えたが、風化した顔には疑いが刻まれたままだ。三番目の衛兵が近づき、ゴンドの顔をじっと見る。顔を逸らす前に、額の泥に気づいた。
「馬商は汚れる仕事か」衛兵の手が剣の柄に伸びる。
「見た目によらず、こいつに振り回された」ゴンドは声を軽くした。「追いかけて泥に顔から突っ込んだ。仲間に知られたら一生笑われる」
衛兵たちは視線を交わす。最年長の男がゆっくりうなずいた。「ああ、誰にでもあることだ」だが目はゴンドから離れない。「ブラックウォーターへようこそ、商人。夜間外出禁止令に気をつけろ──夜明けまで通行証がなけりゃ動くな」
鉄の門をくぐるとき、ゴンドの背筋がこわばった。一歩ごとに警報の叫びを予期したが、それは来なかった。まだ。
城壁の内側は活気に満ちていた。行商人が声を張り上げ、荷車の車輪が石畳を響かせる。パンと馬糞の匂いが空気を満たす。しかしゴンドは、どこにいても視線を感じた──煙のようにまとわりつく囁き、長すぎる好奇の目。
市場広場で、最悪の恐れが現実となる。手配書が木の柱に貼られていた。粗いが間違いようのない素描──彼の顔、烙印、白昼にさらされている。**指名手配・生け捕り──五百ロイヤル**。逃亡奴隷の標準的な懸賞金の倍だ。
五百ロイヤル。冷たいものが胸に広がる。誰かが特別に自分を狙っている。ただの逃亡奴隷ではない、何か他の理由で。
商人が手配書からゴンドの顔へと視線を移す。男の目が見開かれ、息を呑み、叫ぼうと口を開いた。
ゴンドが近づき、刃に手を置く。「よく考えることだな」声を低く落とす。「商売に悪い」
商人の口がぱたんと閉じ、慌ててうなずいて立ち去った。だがゴンドは、男が別の商人に囁き、自分の方を指差すのを見た。
さらに多くの頭が振り返る。囁きが池の波紋のように広がる。衛兵が群衆を押し分けて進み、剣に手をかけていた。ゴンドは路地に身を滑り込ませ、心臓が激しく打つ。
狭い路地はゴミと小便の臭いがこもっている。壁に身を寄せ、石畳を踏む足音に耳を澄ます。衛兵の声がはっきり聞こえた。「……瓜二つだ……五百ロイヤル……宿屋も厩舎も全部捜せ……」
ゴンドは息を殺し、胸の奥で呪いを吐く。街は罠、その輪が急速に狭まっていた。馬のもとへ戻る必要があったが、角を覗くと血が凍った。
四人の衛兵が馬を囲んでいる。一人が手綱を握り、もう一人が背中の袋を調べていた。三人目が手配書を振り、何かと見比べている。
「どこかにいるはずだ!」衛兵が吠える。「散開しろ。建物を一つずつ調べろ!」
ゴンドは路地の奥へ退いた。馬は失った。取り戻す術はない。顎を食いしばる。あの動物は忠実に運んでくれたのに、今や二人とも罠に導かれた。
路地は脇道に続いていた。ゴンドはフードを深く被り、人の流れに紛れる。しかしどこを見ても衛兵が商人に尋ね、手配書と顔を照合している。網が締まりつつあった。
背後で叫び声。「あそこだ!パン屋の屋台のそば!」
ゴンドは振り返らず、群衆を押し分けて進み、罵声を無視した。足音が追いかけてくる。
別の路地、さらにまた別の路地へ。ブラックウォーターの裏通りの迷路は一時の逃げ場を与えたが、罠は変わらない。衛兵はこの街を知り尽くしている。やがて追い詰められる。
木の扉が半開きになっていた。ゴンドは滑り込み、桶職人の作業場に入る。樽が壁に並び、木屑が床を覆う。職人が驚いて顔を上げた。
「店は閉まってる」男が言う。「また今度──」
「頼む、助けてくれ」ゴンドは両手を広げる。「隠れたい。暗くなるまででいい」
桶職人の目が細くなり、窓を一瞥する。衛兵が命令を叫びながら走り過ぎるのが見えた。男の顔に理解が閃く。「逃亡奴隷か?」
ゴンドはうなずいた。
男はしばらく見つめ、それから隅の大樽を指差した。「あれは空だ。だが、もし奴らがここを捜したら……」革のエプロンで手を拭う。「俺はアルドリックだ。首を賭けるなら、名くらい知っておきたい」
「危険は承知してる」ゴンドは樽に向かう。「俺はゴンドだ。礼を言う、アルドリック」
樽は古いワインの匂いがしたが、体をすっぽり隠してくれた。狭い闇の中、ゴンドは自分の浅い呼吸だけを聞く。アルドリックは命を賭けて守っている。見知らぬ男が、過去の痛みだけで。
木の隙間から、衛兵が近くの建物を捜す音が聞こえる。扉が叩かれる。今度はアルドリックの扉が激しく叩かれ、声が質問を叫ぶ。桶職人は冷静に応じ、何も見ていないと主張した。
時間は鉛のように流れる。ゴンドの脚が狭い空間で痙攣し、背中が痛む。それでも浅く呼吸し、じっと動かずに耐えた。外では捜索が続く。衛兵は作業場を三度通り過ぎたが、誰も中には入らなかった。
午後の影が伸びると、街の活動も徐々に静まった。桶職人が樽を軽く叩く。「東の区画に移った。だが門には見張りがいる」
ゴンドは這い出し、筋肉が悲鳴を上げる。「城壁は?」
「三十フィート。磨かれた石だ。だがアラニィの古い神殿の近くに、漆喰が崩れている場所がある」桶職人は木屑に道順を描く。「完全に暗くなるまで待て。衛兵は真夜中に交代する」
「なぜ助けてくれる?」
桶職人は前髪をかき上げ、色褪せた烙印を見せた。「二十年前、樽の中にいたのは俺だった」
闇がブラックウォーターを覆う。ゴンドは神殿の鐘が真夜中を告げるまで待ち、作業場を抜け出した。街路は松明を持つ巡回衛兵以外、誰もいない。彼は衛兵の経路を避け、影に身を潜める。
古い神殿地区は西の城壁に寄り添っていた。崩れかけた建物が酔いどれの乞食のように互いにもたれ合い、雑草が割れた石畳を突き破る。空気は腐敗と放棄の臭い。
ゴンドは桶職人が言った廃墟の神殿を見つけた。半ば崩れた門の上に、アラニィの絡み合う円がかろうじて残る。古い石は漆喰が剥がれ、隙間を見せていた。手がかり──注意深く、そして絶望的であれば。
最初の石を試す。体重を支えた。二つ目は少し動いたが落ちなかった。一寸ずつ登る。指が漆喰の割れ目を探り、ブーツが石を擦る。夜の静寂の中、すべての音が雷のように響いた。
中程で、足元の石が動く。小石が壁を転がり落ちた。凍りつき、耳を澄ます。足音が近づく──巡回の衛兵だ。松明の光がちらつく。
ゴンドは壁に身を押し付け、闇が味方することを祈る。衛兵は真下で立ち止まり、松明を掲げた。光がゴンドのブーツのすぐ下の石を照らす。
衛兵は呟きながら立ち去った。
足音が消える。ゴンドは筋肉が悲鳴を上げても動かず、静寂が戻るのを待った。汗が鼻先を伝い、闇の底へ滴る。必死に手がかりを探し、登り続ける。腕が震え、指が痙攣する。それでも壁の頂が、絶望的な一歩ごとに近づいた。
頂上まであと数フィートで、ブラックウォーターの鐘が鳴り始める。深い青銅の音が雷のように街を揺らす。警報の鐘だ。捜索が街全体に広がった。
下では松明の光が城壁に戻ってくる。衛兵の声が夜の空気に響く。「影という影を捜せ!どこかにいるはずだ!」
松明の光が一歩ずつ、影の最後の砦を焼き尽くすように迫ってきた。