第四章:鎖の亀裂
その朝、塩風が牙を剥き、北の断崖を渡る音すべてを鋭く研ぎ澄ませていた。
「前方の一団だが」とペルが呟いた。「追いついてきてる。あそこの折れた松で最初に足跡を見つけた時は二刻遅れだったが、この糞の新しさからして、今は一刻も離れてねえ」
「この道は狭すぎて迂回できん」とゴンドが低く言う。「平地に出るまで距離を保ち、夜中に追い越して抜けるぞ」
頭上でカモメが騒いでいたが、その馴染みの喧騒も、ゴンドが首筋の毛を逆立てるものを目にした瞬間、遠ざかった。
ペルもそれに気づいた。海に向かって垂れ下がる茨の際で道端にしゃがみ、布切れを拾い上げる。「リボンだ」と呟き、ほつれた紫の布を掲げた。それは風に傷ついた雀のようにひらめいた。
ゴンドはそれを受け取り、粗い織り目を指先で擦った。*子供の色だ。* その思いが海風よりも冷たく胃を締めつける。地面を調べると、小さな足跡が二組、片方は左足を少し引きずっていた。
シムが静かに加わった。手足が長く、影のように。「荷車か?」と尋ねる。
「馬車だ」とペルが答え、砂丘へ南に続く深い轍を指差した。「鉄輪だ。重いな」
ゴンドの額の烙印が焼きたての炭のように熱を持つ。奴隷狩りが近くにいて、子供たちが鎖につながれて歩いている。半年前なら確率を計算して立ち去ったかもしれない。だが今は、背中の船鉤に手を伸ばし、ただ決意だけが残った。
「歩調を上げろ」とゴンドは短く命じた。「平地に出る直前で追いつく」
「計画を変えるのか?」とペルが息を潜める。「数で劣勢、相手は武装。こっちは船鉤と飾り包丁しかねえぞ」
ペルはゴンドの固い顎を見つめ、肩をすくめた。「まあいいさ。知らねえぞ。どうせこの辺りは退屈してた」
◇ ◇ ◇
**罠**
二つの石灰岩の露頭が旅人を岩だらけの隘路へ導く場所で道が狭まっていた。ゴンドは砂に簡単な地図を描く。
「ペル、お前は斜面を滑り降りて大きく回り込め。俺が合図したら馬の手綱を切れ。シム、馬が逃げぬよう抑えろ──静かな手で、穏やかな声で。俺は話しかけて近づき、頭蓋骨を割る」
ペルの笑みが陽光の中の刃のように閃いた。「こういうのが恋しかったぜ」
三人はそれぞれの持ち場についた。ゴンドは道の中央に一人立ち、疲労を装い、ぼろマントで船鉤を杖に見せかけて頭を垂れる。やがて馬車が現れた。二頭の栗毛馬に引かれた頑丈な荷車、後部には塩漬け魚の木箱が積まれている。二人の奴隷商人が御者台に座り、退屈そうな顔で自信に満ちていた。三人目は荷車の脇を歩き、腰に鞭、背に弩を吊るしている。
荷車の後ろでゴンドは見た──*少女、十二歳ほど、汚れた黒い巻き毛。少年、十五歳くらい、足をひきずっている。* 少女は顔を上げ、兄を支えながらも目に反抗の炎を宿していた。二人とも奴隷商人の烙印を負っている。
ゴンドは疲れた手を上げ、少しうなだれた。「おい、友よ!荷車の車輪が壊れた、一里ほど後ろでな」と荒い声で呼びかける。「ブラックウォーターまで乗せてくれないか?」
先頭の御者が身を乗り出し、疑念が遅れて浮かぶ。ゴンドの船鉤が跳ね上がり、崖に響く音とともに男の顎を砕いた。場面は一気に混乱へ。
ペルが草むらから飛び出し、手綱を断ち切って二人目の御者に襲いかかる。馬は驚いて走り出すが、すぐに首を下げて草を食み始め、流血沙汰には無関心だった。
鋼が鳴る。ゴンドは不器用なサーベルの斬撃を受け流し、船鉤の柄で肋骨を叩き折り、回転しざま御者台の衛兵を地に叩き落とす。ペルは男が地面に落ちる前に刃を心臓に突き立てた。ゴンドは三人目の衛兵に向き直る。男は弩をいじっていた。ゴンドが突進すると、衛兵は慌てて撃つ。矢は大きく外れ、ゴンドが射程に入る。彼は衛兵の足を払って倒し、二度の鋭い一撃で息の根を止めた。
静寂が空き地に降りた。戦いと呼ぶには、ゴンドの計算で三十秒もかからなかった。
「馬は連れていくが荷車は置いていく」とゴンドが言う。「馬に積めるだけ積み込め。少年は馬に乗せるしかないな」
子供たちは身を寄せ合い、頭を下げて震えていた。
シムが穏やかな声で近づく。ペルの脇を通る時、ペルは笑みを浮かべて鍵の束を渡した。シムはすぐに子供たちを解放し、怪我を調べ、事情を聞き出していた。
子供たちから断片的な話を引き出し、二人が兄妹であることを知った。兄のダックスは十五歳、妹のアリアは十二歳だった。家族は捕らえられた時の襲撃で皆殺しにされていた。
その間、ペルとゴンドは回収した武器を並べていた。
一人の奴隷商人は鞭、弩、短剣で武装していたが、他の二人は安物の傭兵剣を持っていた。手入れは良いが、男たちがより良いものを買えぬ時に持つ種類の剣だ。一本はほとんど黒く、鋼というより鉄に近い。
ゴンドは革巻きの柄を握った。バランスは悪く、重さも偏っているが、なぜか惹かれるものがあった。持ち上げて親指で刃を試す。粗雑な見た目に反して、十分に鋭い。
「そんなの、ただの鉄くずだ」とペルが言い、もう一本の剣を振る。「こっちにしろよ、バランスがいい。俺は弩と短剣でいい」
ゴンドは首を振り、黒い刃を腰に差した。「これで十分だ」
ペルは肩をすくめ、弩を背負った。「知らねえぞ」
シムは補給品の中から人参を二本見つけ、馬を回収しに出ていった。
ゴンドがため息をついた、その時──弩の弦が鳴った。
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**砂丘の混乱**
痛みがゴンドの上腕を貫いた。深紅が袖を染める。四人目の奴隷商人──数え損ねていた──が必死にクランクを回し、次の矢をつがえていた。
ゴンドが追うより早く、少女が外れた鎖の錠前を投げつけた。それは衛兵の耳をかすめて岩に当たり、男を外したが驚かせて矢を落とさせた。彼女の行動が貴重な一瞬を稼いだ。ゴンドはそれを逃さなかった。
「兄のそばにいろ!動くな!」と怒鳴り、すでに体は動き出していた。奴隷商人を追って疾走し、肘から血が滴る。砂が足音を吸い込み、荒い呼吸だけが追跡の証だった。すぐにペルの規則的な息遣いが背後に迫るが、振り返る余裕はない。
最初の砂丘の中腹で奴隷商人は矢をつがえ、振り返って再び撃った。矢はゴンドの頬をかすめて唸り、その風を感じるほど近い。アドレナリンが痛みを押し流し、さらに速度を上げた。手に入れたばかりの黒い刃が鞘から抜け、粗い鉄が鈍く光る。
風に削られた尾根の頂でぶつかり合う。奴隷商人は必死に戦い、混乱の中で動きが乱れる。血まみれの剣の柄を握り直し、受け流し、反撃し、残忍な捻りで武装解除した。だが、とどめを刺そうと剣を振り上げた時、少女の声が風を切った。
「*殺さないで!*」
アリアが砂丘の麓に立ち、小さな手を握りしめ、顎を上げていた。後ろでダックスが流木の杖にもたれ、急いで巻いた足首から血を滲ませている。
ゴンドの刃が宙に止まる。断続的な静寂の中、自分の呼吸と、その奥で鍛冶の槌音──去った人生、奪った命の響きが聞こえた。少女の声が心の奥で何かを解きほぐし、胸の奥で古い鎖がひとつ、静かに砕けるのを感じた。剣を下ろす。
「俺の視界から消えろ」とゴンドは刃を下ろしながら唸る。「そして二度と顔を見せたら…」脅しは宙に残された。男は弩を落とし、這うように逃げて塩の霧に消えた。
空気が静まる。ゴンドは腕から新しい血が滲む中、片膝をついた。
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**宿駅の夜**
黄昏までに彼らは放棄された宿駅に着いた。苔むした石壁が落日の残光に緑の輝きを返す。忘れられた神々の壊れた像が中庭に並び、顔は風化して空白──正義も呪いも裁かぬまま。
シムは馬を崩れかけた厩舎へ導く。ペルは没収した木箱を炉端に積み、ポケットのコインの音を聞こえぬふりでやり過ごす。ゴンドが子供たちを両脇に従えて入ると、ペルは顔を上げた。
警備室でシムがゴンドの傷を清め、包帯を巻き直す。アリアが付き添い、新しく煮沸した布を手渡す。ダックスは火を起こし、足を引きずりながらも、一日馬に乗った後で少しは回復したようだった。
「ああ、忘れるところだった」とゴンドが言う。「アリア──このリボンはお前のだろう」
少女は無言でリボンを受け取り、しっかりと握りしめた。
やがて、ぱちぱちと音を立てる火の周りで、ペルは土に粗い地図を描く。「巡回路がここを通る」と短剣で道をなぞりながら言う。「一晩、いや二晩は安全だろう。だがあの野郎の衛兵が騒ぎ出せば、怒った蜂の群れみたいに押し寄せてくる」ゴンドの視線を避けた。
「ペル、最初の見張りを頼む」とゴンドが言う。「真夜中前に火を消せ。この国で薪の煙がどれほど目立つか見ただろう」ペルは無言でうなずいた。
ゴンドは子供たち、膝の脇に置かれた黒い剣、丘の向こうのブラックウォーターの灯りの遠い輝きを思う。「夜明け前に一人でブラックウォーターに向かう。馬を一頭連れていく。翌朝までに戻らなければ、子供たちをマエラのところへ連れていけ。彼女がどこかに隠れ場所を見つけてくれる」
「了解だ、相棒」とペルが応じる。「気をつけろよ」
「お前もな」
アリアがリボンを差し出した。「お守りに」と小さく言う。
「持っていろ」とゴンドは素っ気なく返す。「夜明け前には戻るさ」
◇ ◇ ◇
**計画の転換**
夜明け前の薄明、ゴンドは宿駅の上の断崖で来た道を見下ろしていた。朝霧が谷間にまとわりつき、その中、遠い尾根を慎重に進む一人の騎手の姿が垣間見えた。
ゴンドは身を低くして見守る。斥候は目的を持ち、組織的に風景を探っていた。その進路は宿駅の洞窟から四分の一里も離れていない。不用意な動きや煙があれば、すぐに見つかる距離だ。
だが、奇妙なことが起きた。騎手の視線は洞窟を素通りし、まるで古い壁が見えないかのようだった。朝の光が石壁を照らしているはずなのに、彼は尾根を進み続け、一度も隠れ場所を振り返らなかった。
ゴンドは瞬きをし、目を擦る。再び見た時、斥候はすでに遠い頂を越えて消え、完全に見過ごしていた。
*マエラがこの場所は守られていると言ったが…* ゴンドは頭を振り、不安を覚えた。傭兵としての年月で、何かが不自然な時は分かる。だが守られていようと、永遠に頼れるものではない。
断崖を駆け下りる。
「斥候だ」とゴンドが言う。「捜索隊かもしれん」
ペルが灰に唾を吐く。「宿駅を捜索する決断まで、どれくらいかかる?」
「せいぜい二、三日だろう」ゴンドは子供たちの顔を見やる──リボンを握るアリア、怪我した足首を試すダックス。「この場所を守る何かは確かにある。あの斥候は簡単に俺たちを見つけられたはずだ」
ペルの眉が上がる。「マエラの祝福と呪いの話を信じるのか?」
「俺は自分の目で見たものを信じる」ゴンドの声は渋い。「だが彼女が言った“決意ある追跡”も信じる。俺がいない間は判断を使え。ただし奇跡は当てにするな」
ペルの笑みは刃のように鋭い。「奇跡?奴隷船から逃げた時に使い果たしたさ」
ゴンドの元の計画は単純だった。子供たちをマエラに預け、彼女の網の目で遠い土地への道を探してもらう。だが奴隷狩りがあらゆる道を捜索している今は──
「君たちをマエラのところに連れていくつもりだった」とゴンドはダックスとアリアの目線に膝をついて言う。「彼女には人を安全に送り出す方法がある。だがこれだけ狩人が多ければ…」頭を振る。「彼らは彼女の隠れ家を見張り、近づく者すべてを尋問するだろう」
アリアが兄の手を握る。「それはどういう意味?」
ゴンドは顎を引き、決意を浮かべた。「君たちは俺たちと一緒に来る。マエラが教えてくれた隠れ谷まで、ずっと」
ペルの眉が跳ね上がる。「ゴンド、それは──」
「狂気か?」ゴンドは立ち上がり、背嚢を肩にかける。「おそらくな。だがここに残せば死を意味し、マエラに会いに行けば罠だ」一人一人の顔を順に見た。「隠れていろ。もう火は焚くな。ペル、判断を使え。もし奴らが宿駅に向かい始めたら、出発しろ。道で俺が見つける」
「また拾い物かよ…捨て犬じゃあるまいし」とペルが呟きつつ、すでに武器を確かめていた。「お前の判断だ。だが子供たちを荒野に連れていくなら、速く静かに動けよ」
シムは静かにうなずいた。「谷は私たち全員を匿ってくれるでしょう。そして…」風化した顔にかすかな希望を浮かべて子供たちを見る。「おそらく、それこそがこの旅の意味なのかもしれません」




