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第二十一章:啓示と波紋

夜明け、使者が駆け込んできた。馬は泡を吹き、疲労で足元が震えている。ゴンドは集落の門でその姿を迎えた。これほど馬を酷使する者が、ただ事でない知らせを運ぶのは明らかだった。


「首都から…」男は息を切らし、鞍から転がり落ちるように降りた。「高位神殿が宣言を発しました」


ゴンドは使者の体を支えつつ、旅塵にまみれた法衣が神殿の伝令であることを示しているのに気づく。「どんな宣言だ?」


「あなたのことです」使者の目は驚愕に見開かれ、口がしばし無言で動いたのち、ようやく言葉が出た。「彼らはあなたを、一世紀に一度の偉大な聖人か、分裂戦争以来最も危険な異端者か、どちらかだと宣言しました」


ゴンドの唇が細く引き結ばれる。また血なまぐさい厄介事か。「で、神殿の意見はまとまったのか?」乾いた声で問う。


「両方です。神殿は真っ二つに割れています」


◇  ◇  ◇


一時間も経たぬうちに、評議会の間は集落のあらゆる派閥の代表で埋め尽くされた。使者は熱い食事と強い酒で息を吹き返し、商人が品を並べるように急送の文書を卓上に広げる。


「ウェストポートのアラニィ神殿が、あなたを真の聖騎士と宣言しました」使者は巻物を手に読み上げる。「治癒の奇跡と虐げられた者の解放を、神の恩寵の証としています」


「反対派は?」エレナが問う。


「首都の高位神殿は、あなたを政治的利得のために魔法を盗んだ偽者と呼んでいます。破門状を発し、あなたの信奉者を異端者と断じました」


シムの顔が青ざめ、膝の上の手がかすかに震える。「破門…?でも、それは──」


「意味はない」ソレクが荒々しく遮る。「鉄の盟約は、腐った司祭どもが神の代弁者でないと昔から知っている」


「あなたには簡単なことです」シムはかすれた声で返す。「あなたには独自の権威がある。私はアラニィの司祭で、秩序に従うと誓った身です」


「本当にそうか?」シルヴィアナが静かに問う。「それとも、女神そのものの僕なのか?」


その問いは香のように空気に漂い、大陸全体に広がる宗教的危機の核心を突いていた──神聖な権威は制度を通じて流れるのか、それとも神から選ばれた者に直接宿るのか。


「まだあります」使者が続ける。「囁きの輪が正式な会談を求めています。彼らはあなたの主張を自ら確かめたいと」


ゴンドの胃がきしむ。囁きの輪は人間の王国よりも古い時代を知る、エルフの最高権威。その判断は民族の枠を超えて重い。


「いつだ?」シルヴィアナが尋ねる。


「できるだけ早く、始まりの光の聖林で。ゴンドが彼らの前に立ち、行いを説明するよう求めています」


「もう一つ」使者は別の巻物を探りながら付け加える。「ミルヘイヴンからの代表団が昨日到着し、謁見を求めています。商人組合の代表だと名乗っています」


ゴンドの表情は変わらぬまま、目に新たな警戒が宿る。「ミルヘイヴン?しかも昨日着いたのか」そのタイミングは、控えめに言っても怪しい。「何か気になる点はあったか。何を感じた?」


「はっきり言えることはありませんが、閣下…ただの直感です。彼らは滑らかすぎて、目が妙に速い」


「だが、警戒はしているな」ゴンドは使者の目をまっすぐ見据えて言う。


「私が言うことではないかもしれませんが、彼らはケミスの司祭らしくありません」


シルヴィアナの目が鋭くなる。「ケミスの司祭?ここに?」


「客室で待っています」使者はうなずく。「あなたと話すためなら、いくらでも待つと」


ソレクの手がウォーハンマーに伸びる。「罠かもしれん」


ゴンドは目を細めた。司祭らしくない司祭が、世界が揺らぐこの時に現れる──偶然など、彼の人生にはほとんどなかった。「機会かもしれん」慎重に応じる。「あるいは別の試練か。まずはこの『商人』たちの目的を見極めてから、輪の要求に向き合おう」


◇  ◇  ◇


ミルヘイヴンの代表団は、かつて避難者を収容していた質素な客室で待っていた。今は外交の場となったその建物に、ゴンドはソレク、エレナ、シルヴィアナを従えて向かう。戸口から中を覗くと、二人の男が静かに座っている。使者の不安が伝染していた。


彼らはケミスの司祭の法衣──天秤と硬貨を金糸で織り込んだ青い布──をまとっていたが、その静止は司祭というより獲物を狙う獣のものだった。近づく音に反応して向けられた視線は、平坦で、値踏みするような冷たさを帯びている。ゴンドは刺繍の下に、熱気の揺らめきのような、別の不穏な印のきらめきを垣間見た。


「ご挨拶を」一行が入ると、年長の男が立ち上がる。細身の体を覆い隠すような滑らかな動き。微笑みは作り物めいていた。「アルドウィン修道士、こちらはカシウス修道士。我々はミルヘイヴン商人組合の代表です」


「遠路ご苦労だ」ゴンドは中立的な声で席に着く。仲間たちに目配せしつつ、「ミルヘイヴンの組合が、我々のような集落に関心を持つとは珍しい。どんな『機会』が、今ここへ?」


「貿易の機会です」アルドウィンが滑らかに応じる。「あなた方の…解放活動が物流網を混乱させました。我々は全員に利益となる新たな取り決めを話し合いたい」


部屋の空気が重くなり、焦げ草のような刺激臭が漂う。ゴンドの胸で神聖な力がざわめき、警鐘のように警告を発する。この男たちには根本的に何かが違う──聖騎士の本能が拒絶していた。


「どんな取り決めだ?」エレナが問う。


「実利的なものです」カシウスが初めて口を開く。声は奇妙な響きを帯びていた。「奴隷貿易は経済の要です。完全に潰すのではなく…改革する道を探せるかもしれません」


「奴隷制を改革だと?」ソレクの手がウォーハンマーに伸びる。「殺人を改革するのと同じだな」


「まあまあ」アルドウィンが宥めるように手を上げる。「道徳的懸念は理解しています。しかし、急な解放は混乱や失業、社会の激変を招く。段階的な移行の方が人道的では?」


その間も、ゴンドは外から押し寄せる邪悪な気配を感じていた。自然な恐怖ではなく、見えない手が思考を押しつぶすような、外部からの圧力。


「あなた方はケミスの司祭ではない」シルヴィアナが突然断言した。エルフの感覚が、同じ違和感を捉えていた。


二人の仮面がわずかにひび割れる。アルドウィンの微笑みは獣めき、カシウスの目に人外の光が宿る。


「鋭いですね」アルドウィンが応じる。「だが、聖騎士の顧問なら当然か」


闇の波動が部屋を満たす。エレナの手が剣に伸びかけて凍りつき、瞳孔が開き、顔から血の気が引く。ソレクは動かず、風化した顔が青ざめ、呼吸が浅い。シルヴィアナも呪文の掌握に囚われ、杖を握る手が震えていた。


だが、ゴンドの内なる神聖な力が立ち上がり、霧を裂く陽光のように恐怖を焼き払う。それ以上に──目の前の男たちの本性が見えた。商人でも司祭でもない、遥かに暗い何か。


「ゴルラッチ」ゴンドは宣言した。その名が確信と共に口を突いて出る。


二人がシューッと音を立て、人間の仮面がさらに剥がれる。「禁じられた神には多くの僕がいる」カシウスが唸る。「お前の知る以上にな。我々は何世紀もかけて、お前が壊そうとするものを築いてきた」


「奴隷貿易…」ゴンドは呟く。「利益のためだけじゃなかった。腐敗と、アラニィの影響を削ぐためだったのか」


「やっと気づいたか」アルドウィンが笑う。鉄の拳でガラスを引きずるような音。「鍛えられた鎖も、祝福された競売も、慈悲から商業へ転じた神殿も──すべて偉大な業の一部。光の衰えと、利を貪る闇の勝利だ」


「仲間たちは手出しできん」カシウスが笑う。目は漆黒に染まる。「主の呪縛に囚われ、身動き一つ取れぬ。聖騎士とて、ゴルラッチの高位司祭二人には敵わぬ!」


闇の圧が脈打つが、ゴンドは剣を抜く。銀の刃が青白く燃え、仲間たちも動きを取り戻す。エレナの剣が抜かれ、ソレクが戦鎚を振り上げ、シルヴィアナが保護の呪文を紡ぎ始めた。


「あり得ぬ…」カシウスが光る刃を見て息を呑む。「人間の武器が我々を傷つけるはずが…」


「幸い、これは人のものじゃない」ゴンドは前進しながら応じる。


偽りの司祭たちの皮膚が裂け、下から影と悪意で編まれた冒涜的な姿が現れる。闇より黒い爪が空を裂き、喉からは人知を超えた呪詛が響く。


だが、ゴンドの聖剣は天の炎をまとい、蒼銀の光が闇を切り裂く。刃の一閃ごとに勇気が仲間たちの魂に火を灯し、恐怖の呪縛は朝露のように消える。エレナの剣は稲妻のごとく闇を裂き、ソレクの戦鎚は雷鳴とともに影を粉砕。シルヴィアナの呪文は光の鎖となり、闇の獣を縛る。


刹那、太古の影は千の黒き硝子となって砕け、虚無の深淵へと消え去る。闇の呪縛は断末魔の叫びを上げ、存在そのものが解きほぐされていく。ゴルラッチの僕の最期の呪詛が、復讐の約束とともに空気に残った。


「…まあ」ペルが戸口から呟く。戦いの終わりに間に合ったようだ。「教育的だったな」


ゴンドは剣を鞘に収め、神聖な光が薄れつつも消えぬのを感じる。「これで本当の敵が見えた。奴隷制の奥に巣食う腐敗──偽司祭と腐った制度を通じて働くゴルラッチの影響だ」


「すべてが繋がった」シルヴィアナが静かに言う。「奴隷貿易の拡大、宗教秩序の腐敗、商業が慈悲より神聖になった経緯…すべてが」


「ならば、やるべきことは決まった」ソレクが厳しく宣言する。「どこで見つけても腐敗を根絶する。もう手加減はしない」


客室を出るとき、啓示の重みが静かにゴンドの肩にのしかかった。敵は想像以上に大きく、陰険だった。しかし、彼の神聖な力は古き悪さえも断ち切れると証明された。


後の調査で、代表団の残りは何も知らぬ普通の商人だったと判明する。ゴンドは彼らを平和に送り出し、ゴルラッチの影響が終わりつつあると伝えるよう命じた。


◇  ◇  ◇


翌日の午後、評議会は再びエルフからの要請を議題に集まった。


「要請、ね」評議会の間に戻ると、ペルが鼻で笑った。「囁きの輪の招集は、ほとんど召喚状みたいなもんだ」


「両方の意味を持ちます」シルヴィアナが慎重に応じる。「輪は命令はしませんが、彼らの招待を断る者はほとんどいません」


ソレクは編み込んだ髭を撫でた。「なぜ今さらエルフが関わる?何世紀も人間の揉め事から距離を置いてきたはずだ」


「もはや人間だけの問題ではありません」シルヴィアナが答える。「ゴンドの行動は全種族の力の均衡に影響します。もし彼が本当にアラニィに選ばれたなら、世界が変わる」


「もし違ったら?」マエラが問いかけた。


「その時は、我々全員が勝ち目のない戦争で、ただカリスマ性のある狂人に従っていることになるでしょう」


その率直な言葉が部屋に冷たい空気をもたらした。どれほど勝利を重ね、成長を遂げても、彼らの築いたすべては「ゴンドがアラニィに祝福された聖騎士である」という前提の上に成り立っていた。


「俺が行く」ゴンドが静かに宣言した。


「絶対に駄目です」エレナが即座に反論する。「罠かもしれません。輪は中立を装っても、独自の思惑があるはずです」


「他に選択肢があるか?俺が断れば、疑いを深めるだけだ。行って試験に落ちれば…」肩をすくめる。「少なくとも自分たちの立場ははっきりする」


「一人では行かせない」ソレクが断言した。「鉄の盟約にも、見届ける権利がある」


「人間にも同じ権利があります」マエラが続けた。「これは全員に関わる問題です」


シルヴィアナはゆっくりとうなずいた。「輪は小規模な代表団を認めるでしょう。ただし、最終判断は彼らだけのものです」


◇  ◇  ◇


始まりの光の聖林は北へ三日、最初の人間の王国よりも遥か昔から存在する古の森の奥深くに隠されていた。ゴンドたちが聖地に近づくと、空気は時と力の重みで満ちていく。


太古の樫は天を支える柱のようにそびえ、幹は十二人の戦士が手を繋いでも抱えきれぬほど。樹皮には千年の時が刻んだ神秘の紋様が浮かび、黄金の光が天蓋を透かして降り注ぎ、森の床に脈打つ光の池を作っていた。この聖域を包む沈黙は、世界の始まりから続く深さを持ち、葉擦れは精霊の囁き、遠い清流の音は創世の歌のように響く。


「こんな場所、初めてだな」ペルが小声で呟く。


「人間がここを見ることは滅多にありません」シルヴィアナが応じる。「この森は、あなたの祖先が鉄を覚えた時よりも古いのです」


森の中心には立石の輪があり、それぞれに光を受けて揺らめく象徴が刻まれていた。石の間には七つの人影が座り、まるで彫像のように微動だにしない。


囁きの輪。


ゴンドはエルフを想像していたが、目の前の存在はその枠を超えていた。背は高く優雅だが、どこかこの世のものではない気配──この世界と、より深い現実の狭間にいるような。


最年長の者が立ち上がる。星明かりのような白髪と、幾世紀もの深みを湛えた瞳。


「谷のゴンド」その声は千年の風が古木を渡るような響き。「我はアエリンドラ、輪の代弁者。汝、神聖なる権威を標榜せしと聞く。偽りて主張せば、重き報いを受ける。いかに答える?」


「俺は何も主張しない」ゴンドが答える。声は揺るがず、アエリンドラの古の視線を正面から受け止めた。「俺はアラニィか、運命か、あるいは血塗られた頑固さに作られた。ただ、輪がそれを『神聖な権威』と呼ぶなら、それはそちらの言葉だ。俺にとっては重い荷物であり、避けられぬ道だ」


葉擦れのようなざわめきが輪を巡る。アエリンドラの唇がわずかにほころぶ。


「興味深い答えだ」アエリンドラが目を細める。「ここに立つ多くは力を得て使命を誇るが、汝は逃れられぬ責務を背負う者のようだ」


「その通りだ」ゴンドは皮肉な笑みを浮かべる。「俺は望んでこれを選んだわけじゃない。傭兵として金と匿名性に満足していた。この道が俺を選んだ。火と鎖をくぐってな。責任というやつは、しぶとい主だ」


輪の別の者、銀髪で森の池のような深い瞳を持つ男が身を乗り出す。「だが、あなたは神聖な祝福からしか得られぬ力を振るう。我々はここからも感じた──癒しの光、神聖なる怒り、人の理解を超えた何か」


「必要だからやるだけだ。我々にはその力が要る。アラニィの力をありがたく受け取る。それで聖騎士と呼ばれるなら、そうだろう。違うなら…」ゴンドは肩をすくめる。「どちらにせよ、奴隷を解放し、無実の者を守るために使う」


「たとえ魂を呪われるとしても?」三番目の者、冬の風のような鋭い声で問う。


「俺の魂なんて、とっくに裁かれてるさ。傭兵だったのを忘れたか?金のために殺し、一番払う奴に仕えた。そんな男にアラニィが何か役目を見出すなら、俺が口出しできる立場じゃない」


輪の者たちは視線を交わし、言葉を超えた何かが流れる。やがてアエリンドラが再び口を開いた。


「我ら、汝の力を試したい。その源を裁くためではなく、本質を知るために」


「どんな試練だ?」


「癒しの業。我らの中に、影との大戦で負った太古の傷を持つ者がいる。もし汝の力が真に神聖なら、真の必要に応えるはず」


輪の四番目の者が立ち上がる。ゴンドは、なぜこの試練が選ばれたかを悟った。エルフの左腕は萎び、恐ろしい炎に焼かれたように黒ずんでいる。だが、これは普通の傷ではない──その手足は現実から外れかけているような、根本的な歪みを孕んでいた。


「影に侵された傷です」シルヴィアナが囁く。「こうした傷は、どんな治癒も魔法も拒みます」


「汝、その者を救う術を持つか?」アエリンドラが静かに問う。


ゴンドは傷ついたエルフに近づき、損なわれた腕を調べた。そこからは、光そのものを貪るような冷たい闇が滲み出ている。包帯や薬草で癒せる傷ではない。魂の奥、存在の構造そのものに刻まれた裂け目だった。


ゴンドはその根源的な悪を感じ、自分の内から応える力の呼び声を聴いた。


「分からない」正直に答える。「だが、やるしかない」


影に侵された肉のすぐ上、エルフの肩に手を置く。神聖な力が内で動き出すが、いつもより慎重で、まるで危険を察しているかのようだった。


力が腕を伝い、傷ついたエルフへと流れ込む。一瞬、何も起こらない。だが黒ずんだ肉が身悶えし、影の物質が生き物のように神聖な光から退いた。


エルフは息を呑み、痛みと希望に目を見開く。闇は反撃し、冷たい触手をゴンドの腕へ伸ばす。歯を食いしばり、さらに力を注ぐ。神聖な光と原初の影が激突した。


一瞬、均衡が続く。やがて影は千の黒き硝子となって砕け、虚無の深淵へと消えた。天界の黄金が奔流となって傷を満たし、砕けた骨も焼け焦げた肉も、創世の力で再生されていく。神威の光は潮のように引きつつも、残光は魂の奥で消えぬ篝火のように燃え続けた。光が頂点に達した時、シルヴィアナは息を呑み、ゴンドの額に目を凝らす。一瞬、奴隷の烙印に重なるように、まばゆい光の印が浮かび上がった──二つの円が絡み合うアラニィの印章──が燃え、現れたのと同じ速さで消えた。治癒されたエルフは残光に瞬きながら、清められたゴンドの額を畏敬の眼差しで見つめる。輪の他の者たちも、驚きに近い表情でゴンドを見つめていた。


やがて光が薄れ、腕は完全に癒えていた。


輪は沈黙に包まれた。アエリンドラの古の落ち着きさえ崩れ、目を見開き、口をわずかに開き、石の肘掛けを握りしめている。他の者たちも一斉に身を乗り出し、永遠の静寂が破られた。


「三千年の時の中で…」彼女は畏敬に震える声で囁く。「影に蝕まれた傷を癒した力など、いまだかつてなかった。エルフの古き魔法も、ドワーフの聖なるルーンも、太古の神々の高位司祭でさえも、成し得なかった」


ゴンドは静かに立ち上がり、わずかによろめく。


癒されたエルフは腕を曲げ伸ばし、涙を流す。「完全な体がどんなものか、忘れていました。この恩は一生忘れません。ただただ感謝を」


アエリンドラが立ち上がり、他の輪の者たちも続く。一斉に、深くはないが確かな敬意を込めて頭を垂れた。


「我ら囁きの輪は、谷のゴンドをアラニィの真なる聖騎士と認める」荘厳な声が響く。「この言葉を聞くすべての者よ、彼が神聖なる権威を帯びて行動することを知れ」


「それは実際、何を意味する?」ソレクが尋ねる。


「エルフの国々が彼の大義を支持するということ。我々とドワーフの古き盟約が共通の目的で新たに結ばれるということ。そして、人間の既存の秩序がもはや神聖な事柄の独占的権威を主張できなくなるということです」


その重みはゴンドを唖然とさせた。単なる宗教的承認ではない──大陸全体の力の均衡を揺るがす地殻変動だった。


「だが、それだけではない」アエリンドラが続ける。「我らは汝に授けよう、聖騎士よ。汝の道を照らす叡智を」


彼女が手をかざすと、石の輪の上の空気がきらめき、光の中に映像が浮かぶ──地図、顔、象徴がゴンドの記憶に焼き付く。


「奴隷都市の隠された資産の在り処。彼らが密かに結んだ同盟者の名。最も価値ある積荷を運ぶ経路」その声は何世紀もの重みを帯びていた。「この叡智を賢く使いなさい」


映像が消えると、ゴンドは今起きたことの重さを全身で感じた。囁きの輪は既存の秩序に戦いを挑み、元奴隷で傭兵の背に古代の権威を託したのだ。


「なぜだ?」彼は問う。「なぜ俺のような者のために、すべてを賭ける?」


アエリンドラの微笑みは、どこか哀しげで美しかった。「汝のような者こそ、新たな時代を呼ぶ鍵。古き道は朽ち果てつつある、聖騎士よ。問いは、より良き何かがその座を占めるかどうかだ」


◇  ◇  ◇


集落への帰路は、語られぬ思いを抱えた沈黙の中を進んだ。誰もが、目撃した出来事の意味を胸に刻んでいた。


最後の丘を越えると、谷が広がり、新たな建物や耕作地が織りなす景色が見えた。ゴンドは胸の奥に、失われた故郷への痛みではなく、共に戦い抜いたこの地への強い守りたい思いを感じる。集落は静かな活気に満ち、輪の決定が外の世界に混乱をもたらそうとしているのとは対照的だった。


「で、どうする?」門に近づいた時、ペルが沈黙を破る。声はいつもの皮肉混じりだが、目には新たな敬意が宿っていた。「玉座でも磨くか?それとも『聖騎士様』で十分か?」


ゴンドは牛乳を腐らせそうな視線を向ける。「『陛下』なんて呼んでみろ。ソレクにお前を的にして鍛えさせるぞ」


ドワーフはハンマーを持ち上げてにやりと笑う。「動く標的で腕を試すのも悪くないな」


「彼はあの船から引きずり出した時と同じ、頑固な雄牛のままよ」エレナが珍しく微笑みながら言う。「神聖な承認を受けても、それは変わらない。ありがたいことだ」


「良いことです」シルヴィアナは、帰還を迎える顔ぶれを見渡しながら言った。「この世には自惚れた神々と、その聖別された者がもう十分います。鞭の痛みと鎖の重さを知る指導者こそ必要なのです」


ゴンドは馬を降り、数日の疲労が骨に沈むのを感じつつも、視線には新たな決意が宿っていた。マエラが群衆を押し分けて近づいてくる。表情は切迫している。


「朝からずっと報せが届いています」低い声で言う。「領土中から。…混乱しています」


「評議会を集めろ」ゴンドは群衆のざわめきを越えて響く声で命じた。「全員だ。話し合うことは山ほどある、時間は少ない」


◇  ◇  ◇


評議会の間は神経質な熱気に包まれていた。輪から得た知識で新たに注釈された地図が中央の卓に広げられ、マエラの斥候たちが埃まみれの顔で報告の準備をしている。


「北の峠から」一人が口を開く。「アラニィの三つの神殿がゴンド支持を宣言。司祭たちは王党派の巡回隊に追われています。ストーンブリッジのヴァレリウス卿は『秩序回復』を掲げて家臣の護衛を動員」


壁にもたれていたペルが乾いた笑いを漏らす。「首都の『高貴な』知り合いから、パニックの挨拶が届いた。王の評議会は大騒ぎ。半分は軍を送りたがり、半分はゴンドを暗殺したがってる。『異端者』と『聖人』が神学的頭痛を引き起こしてるらしい」


エレナは剣の柄に手を置き、輪の地図の沿岸部を指差す。「奴隷都市は?この情報だと、さらに都市に籠もっている。秘密が漏れたのを察してる」


ソレクが卓に鎧の拳を叩きつける。「なら今すぐ叩き潰そう!鉄の盟約は清算を何世紀も待っていた」


「もはや軍事だけの問題ではありません、ソレク」シルヴィアナが冷静に割り込む。「我々は文明そのものの魂のために戦っている。輪の承認は正統性を与えるが、同時に背中に大きな標的も描く」


ゴンドは黙って聞いていた。報告、恐れ、怒り、決意を吸い取りながら、卓へ歩み出る。その存在が全員の視線を集めた。地図の上に手を広げ、安定と命令の両方を示す。


「輪は俺たちに、どんな剣より鋭い武器──真実──を授けた」冷静だが響く声で、不安を切り裂く。「そして、この谷を超えて広がる責任も」


シルヴィアナに目を向ける。「宣言を起草してくれ。我々の地を毒した腐敗を捨てる者には聖域を、支持する者には迅速な正義を。あらゆる風に乗せて、大陸の隅々まで届けてくれ」


ソレクに向き直る。「お前の戦士たち、そして我々の戦士たちで沈んだ道を確保する。輪の地図によれば、そこが奴らの金と新たな奴隷の動脈だ。それを断てば、奴らは出血する」


エレナとマエラに視線を送る。「襲撃の調整を頼む。この新しい情報を活かしてくれ。奴らが最も安全だと信じる場所、腐敗が最も深い場所を狙い続ける。影がアラニィの光からも、虐げられた者たちの怒りからも逃れられないと示してやる」


部屋には新たな決意が満ち、不安は集中した覚悟へと変わった。


外では、集落の音が続く。ドワーフが設計した槍の穂先を人間の弟子と鍛える鍛冶屋のハンマー。若いエルフも混じる子供たちが新しい灌漑水路のそばで遊ぶ声。シムは今や多くの者の精神的支えとして、大きなオークの木陰で人間、ドワーフ、好奇心旺盛なエルフたちに語りかけている。


かつて打ちひしがれていた避難者たちは、今やエレナの兵士たちの下で決意を持って訓練し、木の練習剣が必死の希望と共に振るわれている。ペルは後に若い斥候たちに複雑なエルフの地図の読み方を教え、皮肉なコメントを交えつつも驚くほど忍耐強く指導していた。


日が地平に沈む頃、シルヴィアナは谷を見下ろす小さな丘の上でゴンドを見つけた。集落の灯りが星のようにきらめいている。


「波紋は波になりました、ゴンド」静かに言いながら隣に立つ。「彼らは我々を溺れさせようとするでしょう」


ゴンドは、夕暮れの中で元奴隷の子がドワーフの鍛冶師に水筒を手渡すのを見ていた。「好きにさせておけ」静かだが揺るがぬ声で答える。「俺たちは、奴らが想像するより深い水で泳ぐ術を覚えた。もう自分たちのためだけに戦っているわけじゃない」


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