第十四章:伝説の幕開け
ゴンドは集落の端に立ち、最寄りの農地から立ち上る黒煙をじっと見つめていた。斥候たちは二日前、奴隷商人の接近を示す煙の列を目撃している。隣でペルが朝の光に目を細め、ナイフの柄に手を置いていた。
シルヴィアナが来てから、集落は急速に膨れ上がった。人口は二百人近くに達し、皆「丘の治療師」の噂に引き寄せられた者たちだ。
だが、それこそが問題だった、とゴンドは思う。
「最近、新しい避難者はどれくらい来てる?」と尋ねる。
ペルは樹皮に刻んだ印を確認した──新しい到着者を記録する彼なりの方法だ。「昨日三人。その前は七人。噂の広がりが抑えきれない」
数字が物語るのは、ゴンドが恐れていた現実だ。各治癒、各奇跡が、希望を求める絶望的な人々のつながりを通じて波紋のように広がっていく。避難者が他の避難者に語り、逃亡奴隷がまだ縛られている者に囁き、同情的な村人が誰彼かまわず噂を伝える。
「丘の治療師」は伝説になりつつあった。そして伝説は、ゴンドが知る限り、危険なものだ。
「ゴンド!」シムの声が集落を横切って響く。緊急だが落ち着いた調子。司祭が二つの避難所の間から現れ、年老いた男を支えていた。服装は都市の者──上質な布地だが、今は旅で擦り切れ汚れている。
「また一人か」ペルが呟く。
近づくと、ゴンドは男の状態を見て取った──疲労、脱水、そして何か他のもの。すべてを失い、最後の希望の糸にすがる者の虚ろな表情。
「マルカスです」一行が到着するとシムが言う。「ウェストポートから来ました。三週間歩き通しで」
ウェストポート。ゴンドの顎が引き締まる。南東に百マイル近く──これまでの避難者よりはるかに遠い。含意は重い。
マルカスが顔を上げ、ゴンドは涙が頬の汚れに筋を作っているのを見た。手は震え、即席の杖で何週間も歩いたせいで手のひらには生々しい水ぶくれ。「孫娘が…」彼が囁き、声がかすれる。「消耗病です。ウェストポートの治療師たちは…何もできないと。だが噂を聞いたのです。奇跡を起こす男の。お願いします、金なら──」
「金は要りません」ゴンドが優しく言い、シムと共に老人を支える。「彼女はどこに?」
「連れて来られませんでした。旅には弱すぎて。ウェストポートで娘と一緒に…」マルカスの声が途切れる。「もう長くは持たないでしょう。どうか、もし来ていただけるなら──」
「谷を離れることはできません」ゴンドが答える。言葉が口の中で灰のような味。「攻撃されるかもしれない」
「それなら彼女は死ぬ」マルカスの手がゴンドの腕を掴む力は驚くほど強い。「八歳の子供が、奇跡を起こす者を数日の旅に説得できなかったせいで死ぬのです」
その非難は鋭い刃のように響いた。ゴンドは老人の苦悩に応えて神聖な力が動くのを感じたが、同時に他の何か──不可能な期待の重みも感じた。マルカスのような人がどれだけいる?不可能な希望にすがって絶望的な旅をする者が、どれほどいるのか。
「シム」静かに言う。「マルカスを客用エリアに案内してくれ。食事と水、休息を。旅の疲れが取れたら、また話そう」
司祭が老人を連れていく間、ゴンドは集落の端に立ち続け、遠い煙を見つめていた。選ばれし者の運命が、否応なく背にのしかかっていた。
「全員は救えない」ペルが静かに言う。
「分かってる」ゴンドの声は思ったより鋭く出た。「だが、分かることと受け入れることは別だ」
しばし沈黙し、周囲の集落の営みを見守る。避難所の間で遊ぶ子供たち──ここで生まれた者もいれば、様々な恐怖から逃れてきた者もいる。持てるものを最大限に活かす術を身につけた大人たちが、静かな効率で日々の仕事をこなす。谷の入り口で警備に立つ者たち、武器は手にしているが顔は穏やかだ。
それは、ゴンドが気づいたように、家のように感じ始めていた。そして、それが来るべきことをさらに痛ましくした。
「奴隷商人が谷に来るのは時間の問題だな」
ペルが頷く。「あの燃えてる農場は馬で一時間もかからない距離だ」
「問題は、どれだけ時間があるかだ」
答えは思ったより早く来た。東の見張り台から叫び声が響き、続いて角笛──三度の短い音、接近する見知らぬ者の合図。即座の危険を示す長い警報ではないが、全員を警戒させるには十分だった。
ゴンドとペルは見張り台へ駆け、木立から現れる一団を歩哨が指差すのと同時に到着した。十二人ほど、互いを支え合いながらゆっくり進んでいる。逃げてきた者たちに見えたが、何かが違う。彼らは即座の危険から逃げる者の必死さで動いていた。
「奴隷商人だ」先頭の女が息を切らして言う。服は焦げて破れている。「ミラーズ・クロッシングを焼かれた。捕まった者は全員連れて行かれた。私たちは逃げて…二日間走り続けて…」
「奴隷商人は何人?」ペルが既に戦術を考えながら尋ねる。
「五十人、もしかするともっと。職業的な組織で、普通の略奪者じゃない。名簿を持っていた」女の目がゴンドを見つけ、彼はその中に認識の色を見る。「治療師について尋ねていた。まるで正確にどこに向かうか知っているように、速く動いていた」
言葉が雷のように集落を襲う。会話が止まり、子供たちが親の元へ寄り、手が武器に伸びる。
「知ってる」誰かが囁く。
「罠だ」別の声が加わる。
「静かに」ゴンドが声を張る。「落ち着け。これに備えてきた」
だが言葉を発しながらも、ゴンドは指導者としての重みが肩にのしかかるのを感じていた。子供や老人を含む二百人近い魂が谷にいて、防御は絶望的な状況になる。頼れるのは少数の戦士の勇気と防御陣地の強さだけだ。
「ペル」低く言う。「戦えない者を避難させるのにどれくらいかかる?」
「今すぐ始めれば…最低六時間。全部置いていくなら」
六時間。ゴンドは地平線の煙を見て、距離と移動時間を計算した。多くて二時間しかないと踏んだ。もし奴らが谷のことを事前に知っていたなら──
「正午までには来るだろう」
「もっと早いかもな」ペルが暗い顔で同意する。
群衆が今、彼を見ていた。命令を、安心を、もう一つの奇跡を待っている。だがこれは神聖な力で解決できるものではない。戦術、兵站、そして困難な選択が求められる。
「ペル、戦士たちを持ち場につかせろ。戦えない者は柵の後ろだ」ゴンドは非戦闘員を再び無防備にするつもりはなかった。
集落が制御された混乱の中で動き出し、人々が命令に従って散っていく。だがゴンドはその中心に立ち、周囲の緊急性から奇妙に切り離されたような感覚に包まれていた。これが最初から恐れていた瞬間──自分の存在が守ると誓った人々に危険をもたらす時。
「後悔してるか?」ペルが肘のそばに現れて尋ねる。
「何を?」
「全部さ。治癒も、集落も、谷の迷子の魂すべてに救世主を演じること」盗賊の声は注意深く中立だが、ゴンドはその奥に疑問を感じ取る。
「数ヶ月前なら、ボリンとケールが隠れてる場所に向かって半分の道のりにいただろうと思うか」
「数ヶ月前なら」ペルがゆっくり言う。「お前は自分の追随者が自分のために何ができるかだけを気にする指導者と呼ばれる男たちのために働いてた」
その言葉がゴンドを打つ。最後に元の仲間について考えたのはいつだったか?復讐への執着が、誰か他人の記憶のように遠く感じられるほど薄れていたのはいつからだ?
「いつだろうな」自分よりもペルに尋ねる。
「何が?」
「復讐を気にしなくなったのは」
ペルはしばし黙り、避難準備を思慮深い目で見ていた。「難しいな。ブラックウォーターを離れてこの谷に導いた時かもしれない。人々を計画するのではなく癒し始めた時かもしれない。あるいは段階的だったのかも──気づかないほどゆっくりと」肩をすくめる。「初めて本当に部下を気にかける誰かに従ってる。違いは大きい」一瞬止まり、静かに加える。「問題は、復讐の代わりに何を望むかだ」
ゴンドが答える前に、集落の端からまた騒ぎが起こる。さらに避難者、前の一団よりもさらに悪い状態。そしてその後ろ、木々の間でかろうじて見える、朝の太陽の中の金属の輝き。
「来たぞ」誰かが叫ぶ。
準備は、かろうじて始まったばかりで、止まった。子供たちが泣き始め、大人たちが恐怖で凍りつき、逃げ場を必死に探す。
だが逃げ場はなかった。谷には二つの出口しかない──奴隷商人が進軍している主要な道と、これほど多くの人が通るには何時間もかかる狭い山道。彼らは罠にかかっていた。
ゴンドは神聖な力が内で動くのを感じ、周囲の恐怖と絶望に応じていた。だがこれは治癒や祝福で解決できる状況ではない。別の介入が必要だった。
「戦士たちは準備できてるか?」
「準備?まあな」ペルが言う。「だが剣のどちらの端を持つか分かるのが三十人、狩猟経験者が二十人。五十人の職業奴隷商人に対して…一時間持つかどうか」
ゴンドは自分に向けられた顔を見回す──安全を、治癒を、希望を求めてここに来た人々。彼らを守ると信じた人々。
その信頼の重みは圧倒的だった。だがその下で、ゴンドは他の何かを感じた──これまでにない明晰さ。これが自分に神聖な力が与えられた理由だ。個々の傷を癒すためだけでなく、無実の者と彼らを害する者の間に立つために。
「これが俺たちの時だ」ゴンドが群衆に呼びかける。「今日、俺たちは立ち上がる」
群衆がざわめく。誰かが叫ぶ。「だが奴らは多すぎる!」
「アラニィを信じろ」ゴンドが言い、声に確信が宿る。「今日、大義が正しい時、五十が常に二百より多いとは限らないと知れ」
彼は彼らの顔に疑いを見る。自分のプライドのために人々が死ぬのではないかという恐れ。だが同時に、希望の火花、反抗、最初に皆をここに導いた精神も見て取れた。
「シルヴィアナ」呼ぶと、エルフがまるで待っていたかのように隣に現れる。「非戦闘員をまとめてくれ。シムと一緒に。柵の中に入れて、できる限り守ってくれ」
周囲で、集落が必死の効率で要塞に変わっていく。戦士たちが持ち場につき、母親たちが子供を柵へ導く。
「お前は?」シルヴィアナが尋ねる。
ゴンドは接近する奴隷商人を見て、そして自分に頼る人々を振り返る。「伝説を狩ることがなぜ危険なのか、思い知らせてやる」
集落が要塞に変わる間、ゴンドはペルの問いについて考えていた。復讐ではないなら、何を望むのか?
答えは、家族が戦いの準備を互いに助け合うのを見て、元奴隷が新しい家を守るために武器を取るのを見て、勇気に応えて内で神聖な光が動くのを感じて、やってきた。
これが望んだものだ。この共同体、この目的、以前よりも良い何かを築く機会。無実の者を守り、傷ついた者を癒し、世界が希望を忘れた世界で希望の灯台となること。
◇ ◇ ◇
奴隷商人たちは職業的な精密さで進軍した。陣形は引き締まり、規律正しく。盾は訓練通りに構えられ、槍は同じ角度で揃い、騎手たちは不均等な地形でも間隔を保って進む。先頭には高価な鎧をまとった男が騎乗し、顔は銀の象嵌の兜に隠れていた。その後ろに歴戦の兵士たちが続く。武器は手入れされ、動きは揃っている。
ゴンドは集落の端に立ち、ペルとリラに挟まれて、接近する軍勢を見据えた。五十三人、全員騎乗、全員が近接武器と弩で武装している。どんな基準でも手強い軍勢だ。
「交渉に来たんじゃないな」ペルが呟く。
「ああ」ゴンドが頷く。「賞金を回収しに来た」
先頭の騎手が手を上げ、陣形が弩の射程外で止まる。兜を外すと、傷だらけの顔と冷たい目が現れた。
「俺はクリムゾン・カンパニーのヴォス隊長だ」声が谷に響く。「治療師と呼ばれる者を探している。そいつを引き渡せば、残りは自由に去っていい」
守備側にざわめきが走る。何人かがゴンドを希望に満ちて見た。だがゴンドは、そんな約束がどう終わるかを知っている。
「拒否したら?」と呼び返す。
ヴォスが冷たく笑う。「ならばお前を連れて行き、残りの連中を売って経費を賄う。選べ、治療師。英雄として死ぬか、民にプライドの代償を払わせるか」
巧妙な戦術だ──指導者を孤立させ、責任を押し付ける。ゴンドも傭兵時代に使った手だが、受ける側は初めてだった。
「対案だ」ゴンドが声に重みを込める。「引き返せ。もっと楽な獲物を探せ。ここを攻撃すれば、後悔するぞ」
ヴォスが嘲笑う。「成り上がりの薮医者の脅し?面白いな」再び手を上げると、弩が一斉に構えられる。「最後のチャンスだ、治療師。大人しく来るか、民が死ぬのを見るか」
胸骨の下で馴染みの温もりが燃え上がり、血管を駆け巡る。だが今回は、より鋭く、より集中し、蜂蜜ではなく溶けた鋼のようだ。筋肉が力で満たされ、心拍が何か巨大なものと同期する。壊れた骨を癒す力は、限界を超えて強化することもできる。傷を治す力は、最初から傷を防ぐこともできる。
「ペル」低く言う。「俺が合図したら、全員突撃だ」
「突撃?」ペルの声がわずかに揺れる。「ゴンド、奴らは弩を持ってる。半分も行かずに撃たれる──」
「任せろ」
ゴンドが前に出て、奴隷商人と自分の民の間に立つ。二百の魂の視線が自分に集まる──救いを、奇跡を求めて。おそらく、それがまさに彼らが得るものだった。
「ヴォス隊長」呼びかける。「伝説を狩りに来たのか。見つける覚悟はあるか?」
剣を掲げると、神々しい金光が波のように広がり、谷全体を包む。守備側に触れた光は彼らを強く、速く、回復力あるものに変え、奴隷商人に触れた光は太陽を直視するように目を焼き、肌に裁きの電気が走る。馬が後脚で立ち上がり、騎手たちは恐怖に駆られた馬を制御できずにいる。
一瞬、戦場は馬のいななきと男たちの祈り以外、静寂に包まれた。奴隷商人たちは身を引きつつも前に出ようとし、顔は驚愕と恐怖の間で凍りついている。ヴォスが弩を上げ、顔が恐怖と怒りで歪む。
「全員殺せ!」叫びが響く。
弩の矢が飛ぶ。ゴンドの光が眩しく閃き、盾となる。ほとんどの矢は狙いを外れ、光に目を細めた奴隷商人たちは狙いを定められない。いくつかの矢が当たるが、肉ではなく盾や鎧に弾かれ、血は流れない。まるで見えない手が逸らしたかのようだ。
馬が悲鳴を上げ、目を剥き、数人の騎手が馬の恐怖に振り落とされる。呪いながら立ち上がると、残りの奴隷商人たちは馬に拍車をかけて突進した。鋼と革の波。
新兵たちは顔を青ざめさせながらも顎を固く結び、不揃いな列で槍を構える。恐怖は腹の奥で冷たい塊となり、槍の柄が震える。だが彼らは持ちこたえた。突撃は槍の壁に阻まれ、馬は先端を避け、騎手は突き刺される危険を冒すか引き返すしかない。
その時、黄金の光に包まれたゴンドが前に立つ。「谷のために!アラニィのために!」神聖な力で増幅された声が戦場を切り裂く。ペルは脇で影のように動き、短剣で鎧の隙間を突く。リラは集中した顔で矢を次々と射る。経験ある守備側がゴンドとペルと共に突撃し、絶望的な勇気が炎となって三人分の力で戦う。奴隷商人たちは鞍から引きずり下ろされ、防御を圧倒する打撃の嵐に叫び声を上げる。
ゴンド自身は遍在する力のようだった。ある瞬間、剣が隊長の突きを受け流し、次の瞬間には新兵の盾となり、光が閃いて致命的な一撃を逸らす。彼は一人の男ではなく、谷の生存意志そのものとして混乱の中を動き、存在は結集点、光は迫る闇への灯台だった。




