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第7話

徹はまだ朝日も昇らないくらいの早朝うちから目を覚ました。年齢が四十六歳を超えてからいつも五時すぎに目を覚ますようになった。リビングの電気をつけて、敷いていた敷布団を片付けた。朝食の準備をするためにやかんを火にかけた。


寝るときにもつけたままにしておいたテレビでは二十年前に施行された外国人受け入れ政策についてテレビキャスターが話していた。テレビキャスターの横には在日外国人の犯罪率が書かれたテロップが表示されている。


「テレビをご覧になっている皆さん、見て下さい。日本人の犯罪率を1とした時、外人は2倍から5倍になっています。2倍から5倍ですよ。この数値を時の政権は無視をして外人を受け入れた。こんなの無茶苦茶じゃないですか。奴らは日本の事なんか考えちゃいない。奴らがいつも考えるのは懐にいくら入ってくるかばかりだ。」


テレビキャスターは大きな身振り手振りで説明しながら、いるはずのテレビをご覧になっている視聴者に語りかけていた。キャスターの顔は紅潮し、目からは涙が流れていた。その姿はまさに半狂乱といった様子だ。外国人受け入れ政策が施行されてから深夜のテレビはこの調子だった。外国人を「外人」と呼んで、いつも悪者にする。いつからか純日本人主義と言われるようになったこの主張は年々支持者を増やし続けていた。


徹はテレビのチャンネルを変えてテレビショッピングに変えた。テレビショッピングでは四十代くらいの女性が無線の掃除機を紹介していた。


「替えのノズルもついてこの値段。19980円。お早めにお電話ください。」

日本は1990年から衰退していた。バブルが崩壊し、東日本大震災、新型コロナウイルスの流行によって日本はデフレから脱却するが出来なかった。それに加えて極度の少子高齢化によって日本は暗礁に乗り上げた。


「この価格でご提供できるのは今だけです。お見逃しなく。」


やかんの笛が鳴り、徹は火を消した。カップにお湯を注ぎ、紅茶のパックを入れた。紅茶のパックはお湯の中で回転しながら紅茶が広がった。透明だったお湯はだんだん深みのある赤色に変わっていく。


日本は行き詰った現状の打開策として外国人を受け入れた。受けいれた外国人というステロイド剤は日本社会を刺激した。GDPは上昇し、出生数は上昇した。しかし外国人とともに入ってきた西洋のグローバリズムは伝染し、全てを拡散した。国民性を薄め、愛国心を薄め、国を薄めた。


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