第4話 買い物
「エデン。この財布に今日の買い物に必要な金銭が入っていますから。くれぐれも、無くしたり無駄遣いしないように。旦那様のお金です。大事に使ってください」
「はい。わかりました」
メイド室長に呼ばれたわたしは、今二階のメイド長室の前にいま
相変わらずの不機嫌そうな顔に、メガネ越しにでもわかる冷徹な視線が背筋を凍らせます。
「そしてこれが買い物袋で、リストはこれです」
動物の皮で作られた高そうな財布と頑丈な布で縫われた袋、そしてリストが書かれた紙がわたされました。
キャベツ二玉に霜降り牛肉一キロ、トマト五つにお米二キロ………
「あの、多すぎませんか? わたしひとりじゃとても運ぶには……」
「つべこべ言わない。あなたはメイドなんですから、それくらいできないでどうするのです? それとも、自分が小さいからって理由で仕事しないのですか?」
「そういうわけでは………」
「なにか文句でもありますか?」
圧に押され声が喉元で詰まります。けれどこの量はとてもわたしには、全部を持ちきれません。あともう一人、手伝ってくれる方がいれば……と、思ったその時。
「すみませんメイド長」
「どうしたのですかリン。衣服の洗濯は終わったのですか?」
「はい。仕事は滞りなく進んでいます。あの、その買い物私にも手伝わせていただけないでしょうか」
「他の仕事はどうしたのです?」
「まだ完全には終えていませんが、残りは大広間の掃除だけです。ですから、手伝わせていただけないでしょうか。それに、最近市街地では強盗や盗りが横行しているよ
うですし。彼女一人では危険だと思いまして」
「……………………わかりました。今回は特別ですよ。けれどこれに甘んじて、手は抜かないように」
それだけを言い残し、メイド長はバタン、とドアを閉じました。
「リーンーー!!」
嬉しさのあまりに抱きつきます。
「よしよし。怖かったねー」
ふわふわのおっぱいに顔を埋めました。フローラルのいい香りが鼻腔に広がります。
「本当に、ありがとうございます! 助かりました!」
「気にしなくていいわよ。はやく行っちゃいましょうか」