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8話

「オメェ…… 初手、あの国はキツ過ぎるじゃろ」

「人生ハードモードなのです」


 ミキトとエーフェナから哀れな視線が律に向けられた。

 律は瞬きをして訊ねる。


「僕はそんなに深刻ですか?」

「違うのです!」

「……異端はあの国側さ」

「私達の顔はディビ国でこそ珍しいのですが、ここより南の方ではむしろ獣人さんの方が珍しいのですよ!」

「なるほど」


 律は納得して頷く。

 虎やカラスなどの被り物をしたような二足歩行の生き物が思い浮かんだ。

 あれが獣人なのか。


「他国からの難民、追放なんでもござれ、寄せ集めで出来た国じゃよ」

『へー! 親切な国ですね!』

「ミシアーナさん、とてもよい感性をしているのです! 国のとってもとっても偉い人は優しい人なのですよ〜」

「悪く言えばザルさ。ワシら含めて、他の国に居場所がないロクでもない連中が多いんじゃ」


 律はミキトの妙な言いようが気になったが触れていい話題に思えなかった。

 あくびをしつつ、耳をほじるミキトをよそに、エーフェナが微笑んで手を叩く。


「ね、律さん! 私からも聞きたいことがあるのです!」

「はい?」

「律さんはなにをしている人なのです?」


 エーフェナの問いに本当のことを答えるべきか律は迷った。

 だが、今は隠す必要などないだろう。

 ちょうど良い。天城に似た人物について訊ねようとしていたからチャンスだ。


「人探しです」

「はぐれちゃったのですか!? 大変なのです!!」


 慌てふためくエーフェナがミキトの肩を掴んで揺らす。

 揺らし方が強すぎてミキトがヘドバン状態だ。


「私達に出来ることなら協力するのです! ね、ミキト?」

「……」


 ヘドバン状態から脱したミキトはそう簡単に頷かなかった。

 ミキトの鋭い視線が律に向けられている。


「イヤじゃ!!!」

「どうしてなのです?」

「甘ぁぁぁい! そんなステータスで人探したぁ! ……随分となめくさった男じゃ!」

「!?」

「オメェ、自分の力量分かってゆうておるんか? ステータス女、コイツに現実を見せてやれ!」

『はい!?』


 ミキトの指示に従い、ミシアーナがタイピングする音。

 律に一つ疑問が湧いた。


「僕のステータスが見えるんですか!?」

「モチノロンじゃよ。ワシの方がオメェより強いからさ」

「どう見えますか!?」


 律は食い気味に身を乗り出す。

 だが、ミキトは興味なさげに荷台の干し草を漁っている。


「弱い。体力値が異常に高い。そんだけじゃ」


 淡々と見向きもせずに答えたミキトは荷台から出したポテチと書かれたお菓子を取り出す。


「空気を読むのです! ミキト!」

「事実じゃろ。ウソは言っとらんさ!」


 ミキトはポテチを頬張った。

 エーフェナは取り返そうとするも、ミキトに頭を抑えられ手が届かない。

 空回りする両腕は風車のように回っている。


「いけないのです! それは売り物なのですー!」

「最近耳が遠くてのー。もういっぺん言ってくれんかの?」

「ミキト、嘘もいけないのです! プーーー!!」


 ミキトとエーフェナが喧嘩をしている最中に、ミシアーナの準備が終わったようだ。


『律さんのステータス能力値出しまーす!

[レベル 1]

[魔力 1]

[体力 1,000]

[敏捷・器用 3+8]

[精神力 1]

[知性 9-5]

[外見 5+7]っと!』

「これは一体……どう見ればいいですか?」


 律は好奇心が抑えきれず、すぐさまミシアーナに訊ねる。


『まずは魔力について! 魔術を使うためのMPで〜必ず最低1はあります。0になると気絶してしまうので注意でーす!』

「分かりました。気をつけます」

「一般常識で魔力が3以下は魔術師適性なしと判断されるんじゃ。1はほぼ無と言われる、使い物にならなんさ」

「ミキトの言うことは気にしなくていいのです! 将来魔力値が伸びなくとも外的保有魔力量、精霊などによってプラマイ出来るって聞いたのですよ!」


 余計な一言を挟むミキトを抑え込み、エーフェナがタメになることを教えてくれた。


「なるほど!」


 律は未知の数字にワクワクが止まらない。ミキトの若干のトゲにも気づかないほどに。


『でもでも! 体力値が1,000なんて初見でーす!』

「異常値じゃ……それこそカミ様の仕業かの?」

『え、ええっ! 気のせーいじゃなーいです? 私ではないですからーー!!!』

「なんでオメェが動揺しとんのじゃ???」


 ミシアーナはこれ以上の追及から逃れるために話題を逸らす。


『続いては敏捷・器用についてですねー! 相手より数字が高ければ早く攻撃できたり、器用なことが得意ということですよ! ±(プラマイ)数字は筋力・耐久を表します! つまりマッチョかどうかです!』

「マッチョ???」

『精神力は下がると発狂しちゃうので、精神異常である-狂気値が上がらないように注意してくださいね!』

『知性は頭の良さ。±(プラマイ)幸運・直感になります! 外見±性格ですねー? 10点満点で平均5点! 生まれ持ったものなのであんまり変化はないですよ! ざっとこんな感じでーす!』


 ミシアーナが説明を終えると、すかさずミキトが律を指さして指摘する。


「まずオメェは服を着ろ! 恥を知れ! ステータスを隠していない今のオメェは全裸じゃ!」

「えっ!? どういうことですか?」


 律は衝撃的過ぎて、全裸という言葉以外頭から消えてなくなった。


「ミキト……それでは説明不足なのです! もっとよい言い方があるのですよ!」

「なんじゃと?」

「魔術基礎知識でまず最初に習うのはステータスを隠すことなのです。個人情報の保護は一番大切なことなので!」

「なるほど」

「隠し方は意識するだけで簡単に出来るのです!」

「そうなのか、やってみるよ」


 律はエーフェナに言われた通りに意識してみる……すると、エーフェナは拍手して頷いた。


「見えなくなったのです! ただし常に意識し続けることが大切なのですよ!」

「だが、ワシみたいにオメェより格上には隠しようがないんじゃ。諦めろ」

『あとはー。ステータス透視能力がある相手も見れちゃうので注意でーす!』

「他にもスキルと技はないのか?」

『もち! ありまーす!』


 ミシアーナが律のスキルと技を表示すると、ミキトがそれを覗いた。


「どれ、ワシにも見せてみ? ほーん。スキル[感覚天秤]は力と感覚が釣り合った時に1.5倍。[真価]は本人が思う価値に値する。[自傷の泉]は体力を削ることで魔力値が増える、諸刃の剣じゃ。技は……!?」


 ミキトの動きが、言葉が止まった。

 衝撃を受けるほどのなにかがあるなんて、律も気にならないわけがない。

 技を見る。

 パッと見て、[?]という技があるのは気になったがそのくらいだ。

 後は読めない文字ではない……意味は分からないけど。[風雷天災(ふうらいてんさい)][封神鎖(ふうしんじょう)][天上下無(てんじょうかむ)]だ。


「[?]ってなんだろ……?」

「……ワシが、知らぬものなどありはせんと思っていたさ」

「残るの可能性は……おそらく、禁術じゃ」

「まずいのです! 禁術所持者は魔術師協会さんに見つかったら死刑なのです!」

「!?」


 死刑という言葉が律の脳にへばりついて時が止まったみたいだ。

 汗が滲んでくる。寒くもないのに。

 死刑って、殺されるのか?

 天城に会う前に?


『えーへへ、ワタシ知らないデスよー』

「本当に?」

『本当に、ホントですってー! 私はやらかしてないーーーですもん!』


 ミシアーナの動揺が声に表れていて、隠しきれていない。

 ミキトが律の肩にポンと手を乗せこう言った。


「元気出せ。オメェの命日前にとっておきのパレードに連れて行ってやろう」

「パレード……ですか?」


 なぜか律が死ぬ前提になっているがツッコむ気にもなれない。


「アスファー王国で赤眼貴族様の姫さんがおかえりなさったパレードするらしいのじゃ。えらいべっぴんだって噂さ。そいつでも見て元気出せ」

『へへっ……冥土の土産的な???』

「それじゃ!」

「あはは……」


 ミキトなりの気遣いのようだが、単純ではない律には笑うことしかできない。


「律さん、大丈夫なのです。すぐに魔術師協会に見つかるのは稀なのです!」

『確かに! あの人達って大石みたいに動かないですもん! もし会っちゃったら不運(アンラッキー)にも程があっちゃってますよー!』

「……」


 律は言葉を失った。

 人を助ける前に自分が死ぬかもしれないと気が滅入りそうだ。

 その前に天城を見つけられたらいいが間に合うだろうか。


「で……どんなやつじゃ?」

「え?」

「人探ししてんじゃろ?」

「……髪は肩まであってツインテールでピンク色。目は宝石の翡翠みたいな色で天城という子です」

「探しといてやるさ」

『グッ……ズズズッ! ミキトさんはお優しいですね! 感動しちゃいました!!!』

「ひょっとしてパレードにいるかもしれん。人が一番集まるだろうからさ。ぐふふ……ついでにワシら一儲けって寸法じゃよ!」

「……なるほど」


 有名なパレードの噂を耳にして天城が来ているかも知れない。

 ほんの少しの可能性にでも賭けたい。

 今すぐ、早く天城に会いたいんだ。


『律さん、すみませーん! 少し通信を切っても大丈夫ですかー?』

「大丈夫だけど、どうしたんだ?」

『やーっと先輩達が帰ってきたみたいです。禁術のこと心当たりがないか聞きに行ってきますね!』

「ありがとう! ミシアーナさん!」


 ミシアーナの通信が途絶えた。

 ミキトは荷台に飛び乗り、エーフェナが馬車の手綱を握る。


「律さん! 禁術をどうにかする方法を共に探しましょうなのです!」

「いいんですか?」


 エーフェナに差し出された手を律は握った。


「もちろん、頼ってくださいなのです!」

「さっさと行くぞ! アスファー王国へ! ワシの気が変わらんうちにじゃ!」

「はい!」


 律が荷台に乗ると馬は走り出した。

お久しぶりです! 龍昴です。

8話書いている間に色々ありましたので一応報告します。

救急車で身内が入院しました。

本当、焦りましたが今はもう大丈夫です。


さらに以前から予定していた引っ越し準備にも追われて秒で過ぎる1日。

本日ギリギリの投稿でごめんです。

次は来月予定になります。

では!

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