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8.5話『指定区域外魔物召喚事件 side.Ⅰ②』

 砂の道(サント)

 白いローブの女はアスファー王国の方角に視線を向けていた。

 黒いコートの男はその隙を見逃さなかった。

 粉を雪玉のように丸めて女めがけて投げる。髪に当たった。


「へっ! スキやりー! ざーこ!」


 粉まみれで台無しになった黒髪。

 女は鬼の形相で男に殺気を向ける。


「シ……ネッッ!!!」

「やれるもんならやってみろ! 死を呼ぶ妖精(キレフィー)と呼ばれた()悪魔狩り(デットール)!」

「あぁ……この惨状はなんなの? 怒られるのはボクなんだからさぁ……勘弁してくれってー!」


 殺し合いかけていた男女は動きを止めた。

 空から降りてきたジャケットを肩に担いだスーツ姿の白髪の少年。

 若そうな見た目に反して不相応な哀愁が漂う。

 男女二人は少年に頭を下げた。


「カミさま。だって……こいつが! 先に!」

「キレフィーは協力を覚えること、ヴィンレは煽り返さない。約束を忘れたとは言わせないねぇ?」

「……」

「ボクはそろそろ限界……」


 白髪の少年こと、カミさまは俯いた。

 空気が一段と重くなる。


「同じことばっかり言いたくない! ボクを老人にしないで()()()()()()!!!」


 キレフィーとヴィンレはカミさまのお言葉(だじゃれ)に沈黙した。


「ほら。親父ギャグで滑り倒した後、熱燗呑んで、ギャンブル爆死で、慰めに深夜ラジオばっかり聞いてるボクは老人ストレートフラッシュですよ!!! なにが悲しくて夜更かししてやがんだ()()()()()()()!」

「は? 酒臭っ!!!」

「私……帰る」

「置いてくな! クソ女!」

「お前の役目でしょ」


 酔っ払いのダル絡みから逃げようとするキレフィー。

 それを阻止するためにしがみつくヴィンレ。

 嫌がる二人をにカミさまは弱々しく笑った。


「ハ・ハ・ha……どうせボクはお荷物(老害)ですわ。いつも言うことを聞いてくれない部下ばっかりで、テンション爆下げのガン萎えなんだけどーー!!! どうして()()()()

 もーいや! ボク、カミさま辞め()()()()! 客の来ない夜鳴きラーメンでも初めて、悠々自適キャバ通いのギャンブル三昧してやるわ! ……ははっ……だれか止めてくれよ。ボクなんかいらないんだろ、知ってた」


 カミさまのネガティブに困り果てたヴィンレはキレフィーを見る。


「お、女! なんか言ってやれ!」

「……ゴミね。それ以上でも以下でもない」

「実家に帰らせていただきます……サヨウナラ」

「女ーー!!! トドメを刺すな!!!」


 カミさまは心臓を押さえながら千鳥足で転んだ。


「いててて……腰が……!?」


 カミさまはミイラになった巨大魚と切り株を見る。

 微かに残る魔力、恋しさに似た懐かしさに酔いが覚めた。


「アハハハハ!!! これは面白い!」

「なにがだ???」

「……?」

「”鳥籠の魔女”が目覚める。これからもっと楽しくなるよ!」


 カミさまは無邪気に笑った。

 年相応の子供のようにはしゃぐ。


「さ、帰ろうか!」



 天界の片隅。人類ステータス課。

 オフィスのように机とパソコンが並んでいる。

 パソコンはデスクトップ型。

 ロック画面には大きく三月一日十二時と表示されている。

 銀髪ロングの若そうな女が三人組に気づくと笑顔で手を振った。


「おかえりでーーー? あっれ? 先輩方なにがあったんです???」

「最低最悪クソゴミクズに反吐」

「……もう! お嫁にいけないわーー!」

「女がやったんだろ!」

「自爆」


 三人が口々に話すのを首をかしげて聞いていた若い銀髪の女。

 机にはミシアーナという白いネームプレートが置いてある。

 プレートには付箋がついていて『今日も元気に行こう!』『新人でーす!!!』などと書いてあった。


「……なーにがあったのかさっぱり? あ! そんなところで先輩方!」

「どんなところでだ……空気読め新人!」

「聞きたいことがあります!」

「こっちも聞け!」


 黒コートの男、ヴィンレは話の通じない後輩ミシアーナにツッコむも意味をなさない。華麗にスルーされていく。

 鋼のメンタルのミシアーナは話を続ける。


「先輩方に大字律という人間を知っている方いません?」

「知るか!」

「知らない」

「……ない」


 誰一人としていい返事をする者はいない。

 だが、ここで諦めないミシアーナは質問を変えてみる。


「えー? じゃーあ! 新規ステータスに『(禁術)』が表示されてしまうバグを知っている方は?」

「んなバグあったら、そいつ無双じゃねぇか!」

「禁術を与えたら極刑」

「……あ、それ! ボクだね!」

「は???」


 カミさまは平然と名乗り出る。

 キレフィーとヴィンレはことの重大さに驚きを隠せない。


「たしか千人記念用で昔プログラムしといたヤツだ。いやーアレから数千年たってすっかり忘れて()()()()()

「それって~? 本当はダメなことなんですよね~?」

「うん! 面白そうだからいいじゃん?」


 カミさまは無邪気に答えた。


「もし上にバレたら殺されちゃうかもしれないんですよね~怖くないんです?」

「ボクは退屈なことの方が死よりもつらいから、楽しい世界(エンターテインメント)になるなら極刑もまた良し。長いこと生きてるとデカい刺激がほしくなってストロング缶ばっかりのんじまうアレと同じよ」


 カミさまはガハハとおじさんくさく豪快に笑った。

 ミシアーナにひとつ疑問が浮かんだ。


「……もしかして禁術って消すことができない仕様です?」

「残念だけど、一度書き加えられた情報は初期化しても戻らないのが常識もんよ」

「律さんの極刑も確定しちゃったり? します?」

「あぁ、それもスリルとして楽しめる要素だろう?」


 カミさまの考えに同意したのか否か……キレフィーとヴィンレはその場から立ち去ってしまった。

 一人残されたミシアーナは頭を抱える。


「私、律さんに悲しいお知らせしかあげられないんですか!? ど、どどど、どうしましょう!?」


 頼りにならない上司ばかりでミシアーナ一人のキャパを超えていた。

 明らかに新人ができるようなことではない。

 むしろこの場合……敵はカミさままである状況だ。

 ネガティブになりかけている心を『私がなんとかしなければ!!!』と奮起させた。

こんばんは!

本作初、約五千文字番外編をひっさげて来た作者です。

(長すぎて2つにわけました)

主人公達のバトルシーンがもう少し先なので天界お役所組の話を書きました。

どこに差し込むか迷ったのですが……ここいらでぶちかましておきます。

ではまた!


ps.

異世界書くのが苦手で、この作品はものすごく体力を消費します。

それが最近顕著に現れてきてデザートに番外編をちょこちょこ書いてました。

他にもずっと書きたかった作品が煮詰まり過ぎて吹きこぼれそうなので4月連載したい気持ちもある。

(頭の中でとある男が大暴れしていて、賑やかなのでこの感覚のまま書きたいのが本音)


異世界の本作を書く前に賞用の小説を書いていたが、直しが多すぎてまだ投稿できそうにない。

さらに、本作の登場人物の名前と似通った名前の人物が出てくる。

それもそのはず、賞用感覚を引きずったまま本作を書いたのが原因だろう。

などの理由から……別作書いた方がいいと思った次第です。

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