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【なろうラジオ大賞5】

三日月が満ちる時

作者: 桜橋あかね

誰かが、言った伝説がある。


―――『三日月が満ちる時、月の使者がやってくる』と。


その言葉は、かねてより信じられるようになった。

『月の使者』が、誰かも知らないで。


▫▫▫


「ねぇ、ばあちゃん」

モズリが、祖母に話しかける。


「なんだね」


「今日は確か、満月だったよね。今回は月の使者ってくるのかな」


祖母は考える。

「そうじゃなぁ。信じればいずれ来る、とでも言っておこうか」


その言葉に、モズリは頬を膨らます。


「いずれ、いずれって、ちっとも来ないじゃないか」


祖母は黙りこむ。

それを見たモズリは、不貞腐れて小屋の中に入った。


―――その日の夜。


モズリは、眠れずにいた。

どうしても月の使者が、気になったからだ。


小屋の外へ出る。

空のてっぺんに、真ん丸の満月が見える。


「今回も、来ないかな」


そう呟いた時だ。

月から、モズリの所に光が差し込んだ。


「……な、何?」


そう言うのも束の間、何人かの『人』がやってくる。

どこかの絵本で見た、『天女』みたいな格好をしている。


数人が集まったところで、一人が言う。

『わたくし達は、月人(つきびと)。今宵のお客様は、あなた様でございます』


そう言い終えた所で、残りの人達がモズリの腕を掴みかかる。


「ほ、本当に何?お客様って?」


言っている最中(さなか)から、意識が遠退いて―――



「……モズリ、モズリ」


誰かに揺すられている。

眼を覚ますと、側に祖母が座っている。


「うなされておったが、大丈夫かえ?」

「……!」


モズリは飛び起きる。

そして、祖母の服を摘まんで揺する。


「……ぼ、ぼく、月の使者に連れていかれそうになった」


祖母は、頭を優しく撫でる。

「夢じゃよ。大丈夫じゃ、大丈夫じゃ」


それから、祖母は話してくれた。

月の使者は、想像から生まれた『空想の物語』って事を。


「それじゃ、ぼくが見たのは本当に夢だってこと?」


祖母は頷いた。

モズリは、安堵したように再び眠りについた。


▫▫▫


『三日月が満ちる時、月の使者がやってくる』

『その姿を見たものは、月へ連れて行かれて』

『三日三晩、施しを受けるだろう』


『しかし、二度と地上へ戻されない身となるであろう』

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